身近な食材でオリジナルハンカチ作り
中学 技術・家庭

上野学園中学校・高等学校 (東京都台東区)では、中学校2年生の技術・家庭(家庭分野)の授業で、実生活にある素材を使ってその性質を体験的に理解することを目的に、綿素材のガーゼハンカチを使ったブルーベリー染めを行いました。今回は、その様子をご紹介します。
授業の背景とねらい
染色の工程には理科の知識が活かされており、教科横断的な学びを通して「生活の中の科学」に気づくことをねらいとしています。
・実施校:上野学園中学校・高等学校
・学年:中学2年生
・実施時間:45分×2コマ
・実施場所:理科室
授業の流れと活動内容
◆授業の流れ
① 導入・プリント学習
生徒はプリントを使って、天然繊維(綿)の特徴や染色の仕組みについて学習。綿は植物の「ワタ」から採取され、吸水性が高く、肌触りが良いが、しわになりやすく乾きにくいなどの性質があることを確認しました。

② 染色体験
配布したガーゼハンカチを、焼きミョウバンを溶かした媒染液に15分漬けた後、ブルーベリー液に15分間浸ける。アントシアニンによる青紫色の発色を観察しながら、繊維と染料の結合について理解を深める。
③ 仕上げ作業
染めたハンカチを水洗いし、アイロンがけをして完成。生徒は自分の作品をiPadで撮影し、ロイロノートに提出。
◆ブルーベリー染めの工程
配布した綿素材のガーゼハンカチを使って、ブルーベリーを染め行います。
1,もよう(しぼり)を入れる
生徒にガーゼと割りばし・輪ゴムを配布。
例を参考にしながら、自由にもようを入れていきます。

どんな模様になるか、予想したものをプリントにも書き込みました。
2. 媒染液に15分間浸す
焼きミョウバンを溶かした媒染液にハンカチを浸けておきます。

アルミニウムイオンの働きで染料と繊維の結合を助けます。
3. 加熱したブルーベリー染液に15分間浸す
アントシアニンによる青紫色の発色を促進。繊維との結合が強まります。理科で学ぶ「分子の結合」「媒染」「アントシアニンの性質」などと密接に関係しており、家庭科と理科の教科横断的な学びが自然に展開されました。

浸す様子

取り出したものがこちら。熱々です!
・(染色の待ち時間に実施)制服のタグを読み取る活動
染色液に浸している間の待ち時間を活用し、生徒たちは自分の制服のタグを読み取り、教科書を用いて素材の種類とその特徴(長所・短所)を調べました。
– Yシャツ:ポリエステル65%(乾きやすい)、綿35%(肌ざわりはよい・吸水性がよい)
– ベスト:アクリル70%、毛30%(保温性・軽さ)
– ジャケット:毛100%(高級感・保温性)
「混用」「混紡」といった言葉の意味も、実際の衣服を確認することで理解が深まりました。
教科書に載っている知識が“自分の身の回り”とつながることで、生徒の興味関心が高まっていきます。
4. 仕上げとICT活用で作品を記録・共有
染色後は、水洗いとアイロンがけを行い、完成したハンカチをiPadで撮影。写真はロイロノートを使って提出され、作品の記録と共有がスムーズに行われました。

アイロンがけの様子(プライバシー保護のため、画像の一部を加工しています)

完成です!
家庭科 黒沼 佐江子先生より
私は生徒たちと授業を展開するときに大切にしていることが2つあります。
1つ目は「楽しくてためになる」、2つ目は「温故知新」です。
まず1つ目の「楽しくてためになる」についてです。どうしても子どもたちは受験に関わる教科に重点を置きがちですが、家庭科は生活に直結した科目です。だからこそ、授業を通して「ためになる」「なるほど」と感じてもらえるような題材を選び、子どもたちが関心を持って楽しく学べるよう心がけています。
2つ目の「温故知新」については、言葉の通り、古い知識や技法を新しい知識や展開に発展させ、生活のウェルビーイングにつなげてほしいと考えています。最近の実習では、できるだけ昔の技法も取り入れるように工夫しています。
今回の実習では、作業工程の手間や学年主任の先生の実家のブルーベリであることも相まって、生徒たちは満足そうに完成品を持ち帰りました。模様づくりの面白さや色の変化の違いに興味を持った生徒も多く、来年度の文化祭の出し物として発展させたいという前向きな声もありました。これが今回の実習の大きな収穫です。
まとめ
この授業では、単なる知識の習得にとどまらず、実体験を通して、家庭科の授業が生活と科学をつなぐ“架け橋”となることを実感できる時間でした。同じ授業を見学した編集部員による”としょぞうブログ”もありますので、良ければそちらもご覧ください。
この度は貴重な機会をありがとうございました!
【文:教育図書 営業部】




