【オーストラリア書道交流】
シドニーガールズハイスクールでの書道の授業とシドニーでの書道展

三原 和子(神奈川県立逗葉高等学校講師 上郷高等学校講師)

 昨年、オーストラりアでのジャパンフェスティバルに参加しませんかとのお誘いを受け、軽い気持ちで、二月にシドニーへ下見に行き、そこで、シドニー市の職員の方に、日本語コースのある学校で教えてみませんかとのお誘いを受けました。帰国後、神奈川県書道部会の先生方に呼びかけ、8月に、6人の先生と3人のスタッフで、公立高校のシドニーガールズハイスクールに行くことになりました。当初、市の職員の方の話では、受講生はせいぜい30〜40人位 だろうとのことでしたが、出発直前、90人になるとの連絡に驚き、用意が大変でした。もちろん硯、墨、墨汁、半紙等すべて持参でしたので。昨年は、書道とはどんなものか、興味を持ってもらいたいという目的で、6人の先生方にそれぞれ御自分の専門分野で、漢字、かな、少字数に分かれて授業をしていただきました。一つの教室で45人の生徒を6つに分けての授業が果 たして行えるのか、日本ではとても考えられないことで心配でしたが、生徒達にものすごい集中力があり、授業が成り立ったのには本当に驚かされました。初日の授業を見て、感動してくれたクリスという先生が、テスト中だった最上級生にも授業をしてほしいとの申し出に予定外の授業も致しました。後で聞いた話ですが、ここはセレクティブハイスクールで、レベルの高い学校だとのことでした。
 今年は、十二日間の予定で、4人の先生と3人のスタッフで同じ学校に参りましたが、今年はなんと、昨年の倍以上の百九十七人という受講希望数でした。クラスに、初めての生徒と二度目の生徒が混ざっていて、しかも授業時間数の関係で、日本で予定をしていた3日間のトータル的授業ができませんでしたが、『基本線から古典の指導へ』と、今後につなげられるように、基本をしっかりやって、記念作品作りへ、一つのクラスを「かな」と「漢字」に分けて指導致しました。短い期間で基本から古典の入り口までの指導ができたことは、やはりものすごく集中力のある生徒達のお陰と、今年も感心させられました。
 又今回は、シドニー日本文化センターギャラリーで、五日間の書道展も致しました。神奈川県の高校の先生方に呼びかけ、十七人の協力を得、約七十点の作品を展示致しました。海外での書道展は初めての経験でした。出品目録の釈文は、日本語・ローマ字・英語と三通 りつけました。中でも短歌や俳句の英訳は難しく、英語の先生に添削していただいて助けて頂きました。海外でというと、運ぶのに条幅が一番楽ですが、条幅ばかりではつまらないと思い、全紙額を運ぶのにいくら位 かかるか見積もりを出してもらったところ、なんと一枚三十二万円との事!

シドニーガールズハイスクールでの授業風景

額装は無理とがっかり致しましたが、何とか額装のようにできないものかと主人にも協力してもらって、試行錯誤を繰り返し、木枠を組み立てれば、額装のようになるように作ることができました。 ところが、ようやく苦心して作った木枠は、オーストうりアには持ち込めないでしょうとの業者の話。植物に関しては割り箸だってうるさいのだとか。せっかく苦労して作ったのだからと、何とか業者の人に頼み、運ぶ工夫をしてもらって無事私達がシドニー入りする前日に、作品は税関を出て到着してくれていました。
 しかしそれからが大変でした。ギャラリ一の中は、私達の荷物以外の物でごった返していたのです。改装工事をしているとは聞かされていましたが、まだ工事がおわっていなかったのです。日本では考えられないことですが、のんびりしているのです。荷物をどけて自分達の作業場所を確保して組み立て始めました。六尺の作品は、やはり長すぎてゆがむので、ベニヤ板を買って補強したりもしました。ベニヤ板は日本の物とは全然違っていて合板ですごく重く、苦労させられました。三日間準備に費やし、ようやくオープニングにこぎ着けました。初日の午前中、デモンストレーションをし、全紙や半切に漢字やかなの作品を書いて見せたり、御客様の名前を聞いて、当て字や変体仮名で名前を書いて見せたり致しましたが、結構喜んでもらえたようです。午後からは、一般 募集をして頂いた二十人のオーストラリア人の受講生に書道を教えました。受講生の中には、プロの版画家の人や学者、オーストラリア人で和紙の製作家もいて、『楮』を使っての和紙などすばらしい出来映えで驚かされました。講習は四日間、同じ方に俳句をかなで書いて、継ぎ紙で色紙仕立てにするということを指導致しました。会場の作品を見て、どうしても漢字をやりたいといった数人の方には、墨流しをして色紙に仕立てて頂きました。受講してくれた方々は皆、ものすごく集中力のある方達でした。私は『外国人は日本人ほど器用ではないだろうから、継ぎ紙も、ある程度仕上がれば、後は私達が修正して』とスタッフにも手伝いを頼んでいました。ところが、どの方もすごく一生懸命やって下さって、一ミリの狂いも気にして何度もやり直しをする方が何人もいらっしゃって、仕上がった時はお互いに感動し、共に見事な出来映えに喜び合いました。
 外国でのものの考え方、動作など、実際に現地で触れ合うと、日本で想像していたことと全く違っていることが多く、得られるものが非常にたくさんあります。なるべく若い時に、単なる観光だけでなく、このような機会に、世界のいろんな方々と触れ合うチャンスを持つと良い勉強になると思います。今後もこの交流を続けていきたいと思っています。もし、参加してみたいと思われる方はお問い合わせください。

版画家ウォルフ・ガングさんと作品交換

シドニ一ガールズハイスクールの生徒終了作品

(「芸術科書道情報 No.28」H11.1.11掲載)



(c) 2003 Kyoiku-tosho,Co.,Ltd All right reserved


|戻る|