仮名を伝統工芸に生かす試み
三重県立久居高等学校教諭 阪江 薫
一、はじめに
 本校は、県庁所在地津市に隣接する久居市郊外に位置し、今年度創立二十周年を迎える学校である。「意欲・誠実・創造をモットーに調和のとれた人間性豊かな人を育成する」ことを教育方針に、平成九年度から、県内初、全日制普通科単位制高校となった。普通コース七クラス、国際コース、スポーツ科学コース各一クラスの各学年からなる、全校生徒約一〇〇〇名の学校である。
 芸術教科は、音楽、美術、書道三科目とも、氈Eを各ニ単位ずつ、一、二学年で、計四単位を選択必修科目とし、三学年で、。をニ単位選択することができる。学校設定科目五十九科目のうち、芸術科目は十二科目あり、コースの枠を越えて選択することができる。芸術講座の編成は、入学時に実施する選択希望調査に従い、音楽、美術、書道をそれぞれ履修し、二クラス三分割を基本としている。各講座はすべて、二時間連続授業である。
二、伊勢型紙について
 三重の伝統産業のひとつに「伊勢型紙」がある。
 「伊勢型紙」とは、友禅、ゆかた、小紋などの柄や文様を着物の生地に染めるのに用いられる染型紙である。この伊勢型紙は全国の九十九%が三重県鈴鹿市で生産されており、千有余年の歴史を誇るものである。型紙を彫刻する紙を型地紙というがこれは、三枚の美濃和紙を縦、横、縦と柿渋でベニヤ状に貼り合わせた、薄いが非常に強靱で伸縮しない性質を持つ。
 その型地紙に独特の鋭い彫刻刀で千差万別の図柄を丹念に彫り抜いていく。極めて高度な技術と忍耐を必要とする作業で、一センチ幅に最高で十一本もの縞を彫ったり、一平方センチに一〇〇個ほどの孔を彫ったりもする。
 (鈴鹿市産業振興部商工観光課発行のパンフレット等参照)
三、具体的実践について
 最初、実用書道の講座で伊勢型紙を使ったしおり作りを試みた。市販されているものの絵柄を利用し、そこに自分で書いた名前や語句を切り抜くという簡単なものであった。どれくらいの興味を持つものか手さぐりの状態ではあったが、やってみると生徒達は喜んで取り組んだ。そこで次年度には、書道。の中でより本格的に扱えないかと考えたのである。書道。では、一、二年次に培った基本的な技術や表現方法を基礎として、書を特別なものではなく、身近なものとしてとらえること、さらに作品制作を通して集中力を養い、作りあげた時の満足感を得ることを目的としている。年間に漢字、仮名、漢字仮名交じりの書、各分野で一作ずつ作品を仕上げている。仮名については、一年次の二学期から、毎時間十五分程の時間をとり、単体、連綿、臨書練習を続け、二年次の三学期にまとめとして短冊に臨書作品を作ることにしている。さらに三年次では、俳句や短歌の創作作品を作っているが、これを伊勢型紙を使ってのものに仕上げようというわけである。先の項で紹介したように、伊勢型紙の強靱で伸縮しない紙質は仮名の細い線を表現するのに適しているだろうという点に着目しての取り組みである。
 以下にこの単元の指導計画を示したい。
四、おわりに
 自分自身で体験することにより、地元の伝統産業に興味、関心を持ってほしい、又、生活の中に芸術を取り入れる心の余裕を持ち、その楽しさを知ってほしいという気持ちから始めた試みではあったが、「玄関に飾ったよ」「おばあちゃんが喜んでくれた」という生徒の声を聞き、ある程度の成果は得られたと嬉しく思った。
 なお、この試みは、平成十三年度全国高等学校書道教育研究会三重大会において、公開授業として発表させていただいた。その機会に全国の多くの先生方から、ご助言を頂戴し、今後の参考とさせていただくこたができた。この場をお借りし、改めて感謝の気持ちを表したい。



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