蒔絵技法を取り入れた書作品の制作

小林 千禮(東京都立 保谷高等学校講師  
石神井高等学校講師 
東村山高等学校講師)

はじめに
 教壇.に立ち、三十年近くになります。この間、さまざまな教材を取り入れ、授業をしてきました。生徒の書いた作品を、何らかの形に残すため、表装機械を導入し、軸装をはじめ、額装・パネル装・折り帖・巻子・色紙・カレンダーに仕立てたり、陶板・篆刻・刻字・料紙加工にも取り組んできました。
 先般、たまたま会津を旅行した折に、体験学沓で蒔絵に出会いました。その時は「絵」を描いたのですが、これを授業に取り入れることはできないかと思い、会津漆器協同組合に問い合わせ、なんとか用具や材料を集めることができました。素材はいろいろ考えられますが、茶托やお盆などは、生活の中に書を取り入れた作品となり、生徒が自宅に待ち帰ると好評のようです。

〈用意するもの〉

  • カシュー
    本来は漆を使用するのですが、代用としてカシューを用意します。色は白や黄色。
  • うすめ液
    カシューをうすめたり、使用後の筆を洗います。
  • 絵皿(とき皿)
    カシューは少量で十分なので、ごく小さな皿でかまいません。
  • 小筆
    文字を書く筆と、蒔絵粉をつける筆の2種類。蒔絵粉用の筆は、各色一本ずつの計五本。
    市販で蒔絵用の面相筆がありますが、高価で扱いが難しいので、水彩 画用の極小筆や、中国製の面相筆を用意します。
  • 蒔絵・金箔・銀箔
    金属粉(LG粉)・・・ 金、青、赤、緑、紫
  • 雑巾
〈授業の展開〉
  1. まず参考作品を提示し、これからどんな作業をするのかを理解させます。

  2. 文字の選択と練習
     古典の中から、文字を選んだり、自分の書きたい文字を決めます。茶托やお盆など、素材の型を半紙にとり、書く文字を練習させます。

  3. 文字を書く
     絵皿にカシューを入れ、うすめ液で濃度を加減します。濃すぎると、ねばって筆がうまく動きませんし、うすめすぎると粉がよくつきません。また、筆で混ぜると泡立ちますから、ガラス棒を使います。
    文字を書き損じた時は、うすめ液で手早く拭き取ります。

  4. 乾燥
    書いた文字の、表面の艶がなくなってきたら、指先でそっと触れてみます。べたつきを感じても、指にはつかなくなるくらいまで乾燥させます。

  5. 箔置き
    小さくちぎった箔を、ピンセットでつまみ、文字の上にのせます。

  6. 蒔き粉
    筆に粉をとり、文字の上にのせます。

  7. 擦り込み
    色が混ざらないようにして、粉を指先で擦り込みます。ステンシル用のスポンジブラシ等の使用も可能です。

  8. 拭き取り
    余分な粉は、濡れた雑巾で拭き取るか、水で流します。

  9. 片付け
    筆や絵皿に残ったカシューは、かための紙とうすめ液で完全に拭き取ります。

※留意点
 一クラス二十〜三十人の場合、書き筆・絵皿は個人でなく、五ケ所くらいに用意し、交代で書きます。蒔き粉は二ケ所用意し、乾き具合を見ながらこれも交代で行います。
 個人で使用させると、指導の目が行き届かない場合があるので、グループごとに交代で使用させるのがよいと思います。

おわりに
 英語のCHINAは「陶・磁器」、JAPANは「うるし」・「漆器」の意味を持つことからも、漆工芸は、海外に誇る日本の伝統工芸と言ってもよいと思います。
 わたしたちの生活の中には、箸や椀、書道道具にも硯箱や書簡などがあります。簡単な平蒔絵ですが、この教材を通 し、伝統工芸について何かを感じてもらえればと思います。



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(「芸術科書道情報 No.31」掲載)


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