独自の工夫による額・軸作り-指導実践例-

名護 幸江 (東京都立 三鷹高等学校講師 調布北高等学校講師)

一、はじめに
 「生活の中の書」という分野が設けられているが、あえてその為の授業をする、という意識はない。各単元の中で、私達の周囲にある書に目を向かせたり、生徒自身が、書の歴史を学ぶ中で、文字文化は、それぞれの時代に生きた産物であることに気付いたりする。しかしながら、ワープロやパソコンの普及による活字文化のとりまく現代に生きる生徒達にとって、どうしても"書"は「特殊な世界」という認識をもつようである。
 その為、授業では、"書"は、より効果的に自己の内面や個性を表出できる芸術であることを強調し、各単元のしめくくりには必ず、創作をし、今を生きる生徒達の「自己表現」の機会を多くとり入れるよう努めている。
 今回は、その「自己表現」の発表の場となった文化祭に展示した作品をいくつか紹介してみる。
二、額・軸作り
 二年生の一学期に仮名の授業を行っている。仮名の歴史から入り、いろは・連綿・臨書と進み、散らし書きによる空間美を学び、変体仮名使用によって、俳句や和歌が様々に表現できることを学ぶ。今年は、国語の授業で俳句作りをしていることを知り、創作に間に合ったクラスだけは、自詠の俳句で創作を試みた。自らの俳句だけに、創作には力が入っていた(作品紹介には載せられなかったが)。出来あいの俳句を選んだ生徒も、散らし方や、変体仮名の使用の違いによって、仕上がった作品は違って見えることに驚いている。色紙練習帳の為、アイロンを使って台紙に貼り、色紙作品の完成である。せっかくの作品なので二学期の文化祭に展示することを告げる。その為に、完成した色紙を「見せる」「飾る」ことを目的に、額・軸を作ることを夏休みの宿題にする。いくつかの作例(過去の生徒作品)を見せながら、作り方を説明する。特に、軸は生徒にあまり馴染みがない為、ひととおり説明をしておく。額にしても、軸にしても、作品を生かすことを一番の目的とすること、身近な材料を使い工夫すること、どこにもない、自分だけの額・軸を作ってくることを注意点として伝える。
 夏休みが明け、二学期の最初の授業、毎年のことながら、宿題を持ってきた生徒は少ない。しかし、持ってきた生徒の額・軸は、じっくり時間をかけただけに、皆があっと驚く程すばらしいものが多い。それを授業中紹介すると、実はまだ作っていない多くの生徒の創作意欲をかきたてるようで、次の週には、それぞれ個性ある「作品」がぞくぞくと集まってくる。文化祭までの期間に、色紙に押す印を仕上げ、押印して展示へとなる。いくつか作品を紹介する。






生徒作品
三、おわりに
 作品の衣装でもある額・軸は、展示された時、それをも含めて「自己表現」となる。ふたつとして同じものはない額・軸には生徒それぞれの工夫が感じられる。ダンボールを積み重ねて立体感を出したり、色紙を固定する為にカラーワイヤーやカラーゴムを使用したり、気が遠くなる程の数の楊枝の向きを変えながら貼ることで模様を作り出したり、金網の切り口を指を痛めながら折り曲げたり、子どもの頃遊んだレゴブロックを使ったり、手の汗のこびりついた剣道の竹刀を壊して作ったり、中には、額の裏に細工をして電気がつくようにしたりという凝ったものまであった。
 出来あいの額・軸には、決してない生徒の個性がそこには溢れている。俳句の創作から額・軸まで、最大限の「自己表現」が出来た喜びを、生徒自身が感じていることを、それぞれの感想から窺うことができる。そして、私にとっては、生徒の豊かな創造力に出会えることが、毎回楽しみになってきている。今後もこうした機会を持ち続けていきたいと思っている。

生徒作品
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(「芸術科書道情報 No.30」H12.1.10掲載)



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