「書道史年表」の活用について ―折帖に臨書しながら書道史を作る―
生駒 光識(神奈川県立久里浜高等学校教諭)
一 はじめに
 一般的に書道の基本は、楷書から導入される場合が多い。つまり書道史上から見れば唐時代の楷書ということになる。西暦六〇〇年代の唐の三大家のどれかであろう。その後は指導者によってもかなり異なるであろうが、北魏に戻ったり、あるいは王羲之の行書にいきなり入ったりするようである。振り返ってみるに私の高校時代、また私の現在の授業も各時代の古典を臨書してきてはいるが、間に色々なコンクールや生活の書が入り、系統だった学習という点で曖昧なままで終わってきた。
 そこで今回取り上げる指導法は教育図書の「書道史年表」を見ながら折帖に臨書し、それに生徒自身の手で解説を加えたオリジナル年表の制作に取り組んだ。



二 書道史年表の活用方法

 この学習は一年生や二年生の学年頭初ではやや無理があると思われたので、三年生の自由選択生を対象に二学期の8時間を費やして制作した。折帖にした理由は、ノートのように左右の見開きができる点と、どの時代でもすぐに開けられるという利点で選んだ。見開きの左側に二字〜三字を臨書し右に教科書を見ながら解説を加える。(図1)折帖には紙面 の制約があるので年表に載っている写真の中から24種の古典をあらかじめ生徒に選び出させ、書体・時代の片寄りがないか確認をとっておいた。年表は広げると横二八五・ニセンチにもなり、カラー図版である上に、見易いところばかりを採っているので生徒も親しめたようである。教科書に全く解説がない場合は「書道全集」か「書道基本用語詞集」等、図書館で調べ補わせた。

図1
図2


図3


三 おわりに
 中国四千年の書道史をたった8時間、24種の古典でまとめるのは無理な面 もあると思うが、高校三年間の総決算として実技と理論の学習に絶大な効果 があった。
 色々な古典を臨書し、古典名と作者名は覚えているが、どの時代でその前後にどんな書風があったのか、書道史の中でどのように位 置付けられているのか、それらを認識しているか否かは大変重要である。ただ見て通 るだけではなく、一度は書いてその古典との接触を持ち、歴史の流れの中で生まれて来たことを少しでも肌で感じてもらえたならば、この教材の設定した意義があったと思うのである。また筆を持つことの楽しさと、書表現の可能性が無限にあることも同時に学習できたのではないかと思っている。
(「芸術科書道情報No.20」H.7.5.10掲載)




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