「かんたん書例づくり教室」(楷書編)を活用した授業の展開について
鈴木 政利(千葉県立松戸国際高等学校)
1 はじめに
 平成11年3月に新学習指導要領が告示され、いよいよ平成15年度より高等学校において実施されることになった。
 芸術科書道においては「書を愛好する心情の育成」が重点項目としてとりあげられ、従来の<教師主導による古典の臨書中心の授業>から<生徒が主体的に創造する授業>への転換が求められている。このことは<創作><生涯学習の基礎としての鑑賞力の育成>に従来よりも力点を置いて授業を展開しなければいけない。旧態依然とした技術主義から表現主義への転換が必要であり、指導者の意識の改革が急務となってきた。
 さらに、各科目における内容の取り扱いについて、学習指導要領では次の事項に配慮することとされている。
  1. 各科目の特質を踏まえ、学校の実態に応じて学校図書館を活用するとともに、コンピュータや情報通 信ネットワークなどを指導に生かすこと。

  2. 各科目の特質を踏まえ、地域や学校の実態に応じて地域の文化財、文化施設、教育施設等の活用を図ったり、地域の人材を求めたりすること。
 書道においても「情報化」「開かれた学校」という現代的な課題への対応が必要となってきている。昨年の春、教育図書より書道教育ソフト「かんたん書例づくり教室」が発売された。幸いなことに本年度、勤務校において教科「情報」にむけて最新鋭のコンピュータが設置された。その際に全教科にソフトの予算がついたので、このソフトを40本購入することができた。私の授業実践を踏まえて、授業展開例を紹介させていただく。
2 「かんたん書例づくり教室」をどのように指導計画に組み込んでいくのか
科目 単元及び指導内容 ソフトの内容
書道 l <導入>における書の基本知識、楷書入門 「書へのいざない」 「基本点画」
<漢字の書・楷書における古典を基本とした創作> 「書例づくり教室」で手本を作成して創作をする。
書道 ll <漢字の書・創作> <漢字の書・鑑賞> 「書例づくり教室」を参考に主観的表現・鑑賞の学習
書道 lll <漢字の書・創作> <漢字の書・鑑賞> 「書例づくり教室」の主に古典別 漢字字典を用いた創作イメージづくり・鑑賞指導

3 パソコンの操作は簡単
 「かんたん書例づくり教室」は誰にでも容易に操作できるように作られている。パソコンのスイッチを入れると、自動的に基本ソフトが立ち上がる。CD-ROMに本ソフトを入れるだけである。あとは、マウスを説明書に従って、クリックするだけである。最近の生徒は、小中学校やテレビゲームで慣れているので説明書も不要な者も多い。このようなことから、コンピュータ操作についての心配はいらない。「自分がコンピュータを苦手としているのにソフトを使って授業なんてとんでもない」と言われる先生がおられるが、大丈夫なので、本ソフトをぜひ授業に活用していただきたいと思う。
4 「かんたん書例づくり教室」を活用した年間指導計画の立案例
<A案>は楷書の古典を広く学び、多様な表現から生徒の好む書風で創作するスタイルである。<B案>は古典を精選して、二学期以降に他の書体の作品を制作する時間を確保する方法である。

時数 A 案 B 案
4 2
2
○授業について
・書道入門
・書道入門
・楷書の基本
○授業について
・書道入門
・本ソフト「書へのいざない」
5 2

2
・本ソフト「書へのいざない」
○楷書の学習
・孔子廟堂碑の鑑賞と臨書
○楷書の学習
・九成宮醴泉銘の鑑賞と臨書
・九成宮醴泉銘の鑑賞と臨書
6 2
2
2
2
・九成宮醴泉銘の鑑賞と臨書
・雁塔聖教序の鑑賞と臨書
・顔氏家廟碑の鑑賞と臨書
・龍門造像記の鑑賞と臨書
・顔氏家廟碑の鑑賞と臨書
・龍門造像記の鑑賞と臨書
・楷書の創作カード・撰文
・「かんたん書例づくり教室」を使用して古典を応用した手本作り
7 2 ・楷書の創作カード・撰文 ・手本を参考に作品の制作
9 2

2
2
・「かんたん書例づくり教室」を使用して古典を応用した手本作り
・手本を参考に作品の制作
・作品の自己評価及び合評会
○行書の学習
・行書について、行書の基本用筆
・蘭亭序の鑑賞と臨書(半紙)
・蘭亭序の臨書(半紙)
10
2
2
2
○行書の学習
・行書について、行書の基本用筆
・蘭亭序の鑑賞と臨書
・蘭亭序の臨書
(1案)蘭亭序を半切に全臨
(2案)半切1/2に蘭亭序の前半を臨書
(3案)蘭亭序から集字して語句を作って倣書的な創作
(以下省略) (以下省略)

5 <「かんたん書例づくり教室」を活用した楷書の創作>指導の展開例
1 単元名  楷書の創作
1 単元の目標

  1. 書道 l における古典(楷書)の臨書学習の成果を生かし、古典を応用した創作の方法を理解させる。
  2. 作品の構想から完成に至るまでの一連の制作過程において、自ら考え自ら学ぶ態度を身に付けさせる。
  3. 情報機器を活用する能力を養う。
2 対象学年 高等学校第1学年
3 指導時期 7月_9月
4 指導計画と時間配当
  配当時間…計6時間
  ・第1時…創作の流れについて、撰文、創作カードの記入
  ・第2時…古典の臨書、コンピュータの操作について説明をする。
  ・第3時…コンピュータ室にてソフトを活用して草稿作りをする。
  ・第4時・第5時…草稿を参考にして創作作品の制作。
  ・第6時…自己評価カードの記入。合評会を開催する。

 

<第1時>
指導展開例 指導上の留意点
  1. 創作の方法、流れについて説明する

  2. 撰文をする(あらかじめ課題にしておく)

  3. 創作計画カードに記入する。(資料1)
  1. コンピュータソフトを活用し、古典を応用した創作を行うことを中心に説明。
  2. 前時に2〜4字の成句が多数載ったプリントを配布しておく。
  3. 生徒が自ら考え自ら学べるようなカードを作成するようにする。

<第2時>
指導展開例 指導上の留意点
  1. 生徒が選択した古典の用筆法を復習して、随意の古典の箇所を臨書する。

  2. ソフトに添付してある操作マニュアルを抜粋してコピーし、コンピュータの操作について説明する。
  1. 古典の基本線の説明プリント(資料3)を配布して生徒が自主的に取り組めるようにする。
  2. コンピュータ室、機器の使用方法などの諸注意についても徹底するようにする。

<第3時>
指導展開例 指導上の留意点
(コンピュータ教室にて授業)
  1. 書例づくり
  • 説明にしたがい操作マニュアルや創作カードで確認しながら操作していく。
  • 部首順、50音順、検索機能を使って古典から文字を検索していく。
  • 拡大・縮小、左回転・右回転機能を使って全体構成をする。
  • 印刷(作業が早い生徒はもう一つ作成)
  • 朝のSHRにて連絡
  • 質問は様子をみてから挙手するように
  • もう一度教室や機器の使用の仕方を確認する。
  • 時間があれば第2候補の成句の文字も検索する。
  • 文字の大小や空間のとり方などを工夫させる。
  • プリンターの台数により時間を要する場合があるので注意。

<第4時・第5時>
指導展開例 指導上の留意点
  1. 前時に作成した書例を参考にして、創作計画カードの構想にしたがって作品の制作をする。用具・用材についても工夫する。
  2. 机間巡視や加朱添削により個別の指導をする。
  3. その際には、墨の潤渇、字形のデフォルメ等についても指導するようにして、より個性的な作品を制作できるように援助する。 作品の完成。作品の選別。
  1. 用具・用材については個性的な表現ができるように、平素、生徒が使用しているもの以外に多様なものを教室に用意する。

    ・ 画仙紙と半紙(それぞれ2種類)
    ・色紙 ・青墨や茶墨 ・純羊毫筆
    ・1〜3号程度の大筆 ・剛毫筆等

<第6時>
指導展開例 指導上の留意点
  1. 作品評価カードに記入する
  2. 2〜3点の作品について指導者の講評ならびに生徒の自解。他の生徒の感想も求める。
  1. 作品評価カードを作成しておく。(資料2)
  2. 生徒が発表しやすいようにリラックスした雰囲気にする。
「かんたん書例づくり教室」を活用した楷書の創作・生徒作品
A 九成宮醴泉銘を基調とした創作(半紙)
生徒作品 ソフトで作成した書例
B 顔氏家廟碑を基調とした創作(半切1/2横)
生徒作品
ソフトで作成した書例
C 龍門造像記を基調とした表現
生徒作品 ソフトで作成した書例
6 おわりに
 「漢字仮名交じりの書の必修とクローズアップ化」「情報化」「総合的な学習の時間の新設」、「縮減により必履修は書道 l のみ」と書道教育において時代の波が押し寄せている。
 このような中で、いかに書道を時代の波に乗せていくかが我々の課題であると思う。このままの書道教育では選択者の減少や、他教科の教員の無理解をまねく恐れが今後予想される。コンピュータの活用等より指導の工夫が必要である。しかし、コンピュータはあくまでも手段であり、書の伝統を生かした指導が本道であることも忘れてはならないことである。





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