早実セミナー「子育てラボ 乳幼児親子とのふれあい交流会」

高校家庭

高校家庭科の保育において、現行の学習指導要領解説では、「地域の乳幼児や保護者とのかかわりの乳幼児と適切に関わるための基礎的な技能については,乳幼児との触れ合いや交流,親や保育者が乳幼児と関わる姿の観察など,実践的・体験的な学習活動を通して身に付けることができるようにする。」と記載されています。

ただ、実際に地域の乳幼児や保護者と交流できる機会は限られており、実践するにはハードルが高い…という声も多いです。

早稲田実業学校の家庭科ご担当、友田薫先生は、2025年度より「総合的な探究の時間」の一環として「子育てラボ」を開講し、「子どもと子育てのリアルを知り、自身のライフキャリアを考える」をテーマに授業を展開。その中で、高等部2年生を対象として、地域の乳幼児を育てる家庭を学校に招待し、「乳幼児親子とのふれあい交流会」を実施されています。

今回、11月17日の交流会(3回目)の様子を取材させていただきました。

ふれあい交流会に向けて

ふれあい交流会の実行のために、友田先生は市の子育て支援課に相談し、地域の子育て支援施設に、近隣の子育て家庭に向けたチラシを配布し、参加者を募集しました(チラシづくりにはCanvaがやはり便利!)。
ふれあい交流会は年間3回実施しています。
その理由として、「交流行事は1回きりの単発の開催になりがちですが、子育てラボでは年間を通してふれあい交流会を実施していくことで、地域の方と乳幼児親子と高校生がともに育ち会う様子を共有できる会にしていきたいです。」と友田先生。
3回目の交流会には、リピーターの方を含め、18組もの子育て家庭から参加応募がありました!

授業実践の様子

交流会のタイムスケジュールは以下の通りです。

当日は、地域の子育てサポーターの方々が運営サポーターとして活動を支援されました。まずは、赤ちゃんと保護者の方々が次々にご来場!
授業が始まるまでの間、親子は待機スペースで過ごします。
おむつ替えや授乳用のスペースなど、先生による事前準備のおかげで、保護者の方も安心です。
来場された保護者どうしの交流も盛んで、楽しい雰囲気になってきました。

家庭科編集者界隈では有名な、「飛行機ブーン」。🏎️
大変芸術的な姿勢だったのですが、前から撮れなかったのが残念…!


そしていよいよ、高校生の皆さんとご対面です!
最初に、保護者の方々が、赤ちゃんのお名前・月齢、アピールポイント・最近できるようになったことなど、自己紹介をしました。

そして、高校生たちのグループに入り、抱っこ体験が始まりました。

乳児を優しく抱っこする高校生たち。とても慣れた様子で、上手です!
液体ミルクでの授乳にも挑戦しています。赤ちゃんたちも安心した表情でごくごく飲んでいます。

次に、高校生からの質問タイムが始まりました。赤ちゃんたちを抱っこしたり、一緒に遊んだりしながら、保護者の方のお話に耳を傾けます。


最後に、高校生によるまとめの発表が行われ、ふれあい交流会が終了しました。

お別れ前に交流を楽しむ高校生の皆さんと赤ちゃんたち

交流会終了後、保護者の方々は高校生からのアンケートに回答し、帰路に着きました。

交流会終了後、ゆっくり休みながら楽しい思い出を振り返る親子の様子

高校生の感想

交流会に来場した保護者の感想

実践者 友田薫先生より

①実施に至るまでの不安や、苦労されたこと、工夫されたこと など

実施するにあたり、東京都世田谷区、八王子市の各中学校で実施されているふれあい交流会と大阪府立千里青雲高等学校で実施されている「ペアレンティング」という授業の視察に行きました。さらに、茨城県のNPO法人ままとーんの皆様にはプレ授業をしていただきました。各団体の乳幼児親子やボランティアの募集方法、当日の運営の仕方や授業の流れなどを教えていただき、一年間かけて勤務校ならどうできるかを構想しました。
 特に工夫したところは、単発ではなく、年間を通して継続的に実施した点です。また、事前・事後学習で毎度目標と振り返りを行うことで、最初はおどおどしていた生徒たちも最後には自信をもって赤ちゃんとふれあい、生徒や参加者アンケートにあるように、単に知識ではなく、実体験から得られる深い学びを得ることができました。
一番不安だったことは、「乳幼児親子とボランティア(運営サポーター)が集まるか」というものでした。しかし、勤務校の近くにある子育て支援施設にチラシをもって授業の紹介と親子募集のお願いに伺ったところ、スタッフの皆様がこの授業の目的に共感してくださって、ボランティアとして参加してくださることになりました。さらには施設の利用者の親子にもお声がけいただいたことで、たくさんの親子にも来ていただくことができました。改めて、子育てにおける地域の力、役割の大きさを感じました。

②実施されてよかったこと、今後の希望など
実施してよかったことはたくさんあります。まず、生徒が赤ちゃんのかわいさとパワーを体感できたことはもちろんですが、赤ちゃんは泣くのが仕事ということを身に染みて感じたことで、親御さんの大変さも実感できました。また、生徒たちの表情を見ていると、お世話ができたという達成感が自己肯定感の向上にもつながっているように感じました。将来、子育てが大変だと感じることがあっても、目の前の子どもと向き合うことができる大人になってくれるのではないかと思います。

また、参加者の満足度が非常に高かったことも特徴的でした。「高校生に子育ての喜びも知ってもらいたい。」、「自分の赤ちゃんにたくさんかわいいと言ってくれて嬉しかった!」、「地域の子育てネットワークが広がった。」、「自分の子育てを振り返ることができた。」「また参加したい!」など前向きなお言葉をたくさんいただきました。

子育ての今と未来が輝く。ふれあい交流会にはそんな役割があると改めて感じました。参加者のアンケートにもありましたが、このふれあい交流会が全国の学校で必須になることで、全国各地で子育てのポジティブな連鎖が生まれるのではないかと期待しています。

③家庭科の先生へのメッセージなど
私が家庭科の教員を志したきっかけは、高校生の時に児童虐待問題を知り、虐待の背景にある母親に偏る家事育児負担を軽減することが、夫婦、親子のハッピーにつながり、結果として虐待の減少につながるのではないかと思ったことでした。それから20年。私の想いとは裏腹に子育てに悩むパパママが答えのない育児に正解を求めてさまよっています。さらにSNSには子育てに関する情報が溢れ、どれを信じたらよいか分からなくなるほどです。ネガティブな情報や偏った情報を受け取った次の世代が未来の子育てをポジティブに描けるわけがありません。

制度を整えることや経済的な支援も必要だと思います。しかし、もっと大切なことは、これから親になる世代に、「育っていく子どもの視点」と「育てる親の視点」にたって子育てを考える機会を提供することではないでしょうか。そのためにはまず、子どもを知ること、子育てを知ることが必要です。なぜなら、知らないものは描けないから。だからこそ、未来の親世代になる高校生に、乳幼児と関わる機会とリアルな子育ての声を届ける必要があると思います。

 当然、学校にはさまざまな状況、悩みを抱えている生徒がおり配慮も必要です。ですが、今どんな状況におかれている生徒たちであっても、未来の自分の人生、未来の家族は創れるという事実を伝えることができるのは生徒にとって身近な大人である教員だと思います。

自分の家族しか知らない。自分の親の働き方しか知らない。しかもそれが正解、あるいは仕方のないことだと思い込んでいる。そんな生徒の価値観を広げていくことができるのが家庭科ではないでしょうか。少しでも未来をポジティブに想像し創造できる授業をつくりたいですし、そんな社会であってほしいと切に願います。

 最後になりましたが、家庭科の先生方の多くが一校一名配置で、しかも多忙でなかなか相談したり、新たなことにチャレンジしにくい環境にいらっしゃるのではないでしょうか。また、自分なりに一生懸命考えた授業でも、これでいいのかな~と思うことも多々あると思います。私もそのうちの一人です。

オンラインでのコミュニケーションができる今、全国の家庭科の先生方と繋がり、先生方の知恵を出し合うことで、少しでも生徒たちの未来に還元していければいいなと思っています。(その時間をとることすら大変ではありますが・・・)

そこで、アウトプットしていくことで多くの方とつながり、誰かの役にも立てればと思い、noteを始めることにしました。お気軽に率直な感想などメッセージをいただければ幸いです。また、皆様からも多くのことを受け取り学んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

友田薫先生によるnoteはこちら

編集部より

今回の授業を取材させていただいて、特に印象的だったのは、「質問タイム」における保護者の方々と高校生の皆さんの交流の様子でした。

仕事での働き方、夫婦での家事・育児協力、子どもとのかかわり方など、「人生の先輩」として、また子育ての喜びや苦労を経験する「親一年生」として、保護者の方々から熱いメッセージが寄せられました。

それを真剣に受け止め、将来の生活について考える高校生の皆さんの様子がとても頼もしかったです。

社会では少子化が進んでいますが、こうして子どもや子育てについて前向きに捉えてくれる若い世代の方が増えていくことで、この社会で生きる子ども・子育て家庭にとってのウェルビーイングにつながると思います。

またぜひ参加させていただきたいです。

なお、2026年3月7日(土)に、早稲田実業学校にて、子育てラボの探究活動発表会が行われる予定です。ご興味のある方はぜひ、以下のチラシの二次元コードもしくはこちらよりお申し込みください。

お申し込みはこちら

早実セミナーHP「子育てラボ 乳幼児親子とのふれあい交流会」の記事はこちら

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