柴田佳奈さん ロングバージョンインタビュー

食品メーカー 乳幼児用食品研究開発者
柴田佳奈さん
1995 年生まれ。大学の医療系学部で高齢者の療養施設での研究中に、健康における食の重要性に気づき、食品業界を志す。現在の食品メーカーに就職して4年、液体ミルクや乳児用粉ミルクの商品開発に携わる。
親子が笑顔になってくれるような商品を作りたい
Q1この職業に就いた経緯やきっかけを教えてください
私は、高校生の頃は、将来とくに何かをやりたいというものはなかったのですが、あるとき、地域の催しで、臨床検査技師のお仕事体験会に参加する機会がありました。
心電図の機械を触ったり、臨床検査技師の方のお話をうかがったりする中で、医療関係の仕事に興味がわき、それがきっかけで医療系の大学へ進みました。
大学では、療養施設に入院されている高齢者の方々の皮膚などについて研究をしていました。
寝たきりの方も多い中で、すごく元気なおばあちゃんがいらっしゃったんです。
そのおばあちゃんが、ご飯をたくさん食べて、たくさんお話をされる方だったことから、食事と会話の大切さを実感し、「私は食べ物から、皆さんの健康な人生に貢献したいな」と思うようになりました。
それが、食品業界で働くことを志したきっかけです。
Q2仕事の内容を教えてください
0〜3歳の乳幼児向けの粉ミルクの商品開発に携わっています。「赤ちゃんのすこやかな成長をサポートするミルクを開発したい」「子育ての困りごとを解決したい」というコンセプトを形にしていくために、乳幼児の栄養摂取状況を調べたり、育児にかかわる方に現場の声をヒアリングしたりするなどの活動を行っています。
また、理想のミルクに近づけるために、いろいろな原料の組み合わせを試して、試作をして、実際に自分たちでミルクを飲んで評価して…という試行錯誤を日々繰り返しています。
Q3仕事でのやりがいはなんですか?
今、苦労しているのは、海外向けの粉ミルクの開発です。
国によって食べ物や子どもの栄養摂取状況、味の好みなども違うので、難しいところが多いです。
海外支社のメンバーに、試作品を飲んで評価してもらうなど、トライ&エラーをくり返しています。
一方で、うれしいのは、姉の子どもが、自分が開発に携わった液体ミルクや粉ミルクを飲んでくれる姿を目の当たりにしたときです。
グビグビ飲んで笑顔になった姿を見ると、言葉にできないうれしさを感じます。
また、子どもとふれ合い、サポートする中で、私たちおとなも、幸福感や、「明日も頑張ろう!」というパワーをもらえるのが、子どもや保育にかかわる仕事の一番の魅力だと思います。

Q4この職業に必要なスキルや資質は何だと思いますか?
技術的には、やはり「栄養に関する知識」が最も求められるように思います。
たとえば、「赤ちゃんの発育によいミルク」など、つくりたい商品のコンセプトはさまざまですが、それを実現するためにはどんな栄養素が必要なのか、どれくらい摂取しても安全なのか、などといった知識が必要になります。
ただ、これは、日々の勉強で培える力だと思います。
一方で、資質としては、「オープンマインドな姿勢」が大切だと思います。
商品の対象者が乳幼児で、私自身が出産を経験していないことから、「この商品をお父さんやお母さんたちはどう使うのだろう?」「どんな困りごとがあるのだろう?」とわからないことがたくさんあります。
そこで、社外の人にインタビューさせてもらったり、社内の人に実際に商品を使ってもらって感想を聞いたりします。
ほかの人の意見には、自分では気づけないポイントがあるので、偏見なく、いろいろなものを吸収する姿勢がとても大切だと感じています。
Q5お客さんの声から感じる、日本の子育て家庭への思いは?
私自身、乳幼児用の食品などについて、SNSやインターネットショップでの口コミなどをよくチェックしているのですが、そこに投稿している人のほとんどが女性で、仕事・子育てを忙しい中で両立されている方がたくさんいることに気づき、女性の負担がすごく大きいということを日々実感しています。
また、私が大学時代に、バリバリ仕事をされている女性から「キャリアが閉ざされるのが怖くて、子どもを産めない」と聞いたことがあり、なかなか自由な働き方や子育てができないのが現状なのかなと感じています。
私たちがつくっている粉ミルクや液体ミルクなどは、母親だけでなく、父親や祖父母も授乳できるので子育てにかかわるハードルが下がります。
こういうものがもっと広がって、自由な選択肢が生まれていってくれればうれしいです。
そのためにも、頑張って粉ミルクや液体ミルクを普及させたいと思います。
また、自分自身がキャリアを積み上げていって、将来、若い女性がキャリア形成を考えるうえでの希望になれたら、と考えています。
Q6柴田さんにとって「ウェルビーイング」とは?
仕事では、人に喜んでもらえることが一番の幸せです。
自分が開発した液体ミルクを姉や友人が外出先で使って「助かった、ありがとう!」と言ってくれたときは、とてもうれしかったです。
プライベートでは、新しいことに挑戦することに喜びを感じます。
最近は、夫といっしょにアジのサビキ釣りを楽しんでいます。

Q7今後の商品開発の目標は?
子育ての話を聞いていると、赤ちゃんはよく熱が出たり、風邪を引いたりして大変だなと感じます。
赤ちゃんの強い体づくりのために、免疫にはたらきかけられるような、また、アレルギーを抑えられるようなミルクの開発をめざしていきたいです。
Q8小学・中学・高校での家庭科の思い出は?
高校時代は家庭科の授業があまりなかったのですが、生きていくのに大切な食事について学んだことが印象に残っています。
授業の中では、調理実習でカレーライスやみそ汁をつくって食べたのが一番楽しかったです。

Q9高校生の皆さんへメッセージをお願いします!
私は、「食べるのが好きだな」「健康でいたいな」という何気ない思いから、「食品からまわりの人を元気にしたい」と考えるようになり、好きな仕事に就くことができました。
高校生のみなさんには、自分の感じた「好き」や「楽しい」という気持ちを、否定せずに、大切にしていってほしいです。
▼柴田さんが仕事に関連して取得した資格
・食品表示検定 中級
・知的財産管理技能検定 3級
・健康マスター検定 エキスパート
・ビジネスキャリア検定 3級マーケティング
▼柴田さんのある日のおもなスケジュール

*1 製品がもつ味や香りなどの特性について、人の感覚器官(目、耳、鼻、口、皮膚など)によって分析し、評価すること。 *2 製品の物性(例:硬さや弾力などの食感)について、機器などによって分析し、数値化すること。