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小川寛貴さん ロングバージョンインタビュー

おはぎ専門店店主
小川寛貴さん

1980年生まれ。サッカー選手に憧れていたが、けがに悩まされ飲食業の道へ進み、現在はおはぎの専門店を経営している。家庭科の授業で好きだったのは料理と裁縫。

「やりたいこと」が恩返しになっていることが幸せ

Q1仕事の内容を教えてください

おはぎ専門店の店主として、商品の企画、製造、販売を一手に引き受けています。
とくに、季節ごとの新しいおはぎのレシピ開発に力を入れており、常にお客様に新しい味を提供することを心がけています。
祖母の味をそのまま再現したシンプルなあんこのおはぎだけでなく、素材や味からデザインまで凝ったおはぎも販売しています。

Q2この仕事を選んだ経緯やきっかけを教えてください

本当はサッカー選手になりたかったんです。
中学校を卒業する前には、プロの育成チームのテストも受けましたが、大怪我を負い引退することになってしまいました。

その後は、映画で観たバーテンダーの仕事に憧れて外食産業の道へ進み、さまざまな飲食店で経験を積みました。
海外で出会った「デリカテッセン」という食料品店の、総菜(惣菜)選びを楽しんだり店内でワインといっしょに総菜(惣菜)を味わったりする文化が好きだったので、30歳で独立したときはデリカテッセンのお店を始めました。

話は変わりますが、子どものころ、あんこの甘味が苦手だったんです。
しかし、祖母のタケノばあちゃんがつくったおはぎだけは、甘さが控えめでおいしく食べることができました。
僕がおとなになってからも、祖母はおはぎをつくっていました。
母は祖母といっしょにおはぎをつくったことがなく、あるとき、僕が母に「ばあちゃんがおはぎをつくれなくなったらどうするの?」とたずねたことをきっかけに、祖母と母と僕の3人でおはぎをつくったんです。
本当にいい時間でした。
「もう、ばあちゃんがおはぎをつくれなくなってしまっても、この味はなくならないんだ」と、うれしくなりましたね。
ちなみに、祖母のおはぎの甘さが控えめだったのは、戦後間もなく砂糖が貴重だったころに、少量の砂糖でつくるように教わった名残のようでした。

独立してから6年後、祖母の名前をつけたおはぎ専門店を開くことに決めました。
祖母に喜んでほしい、祖母のおはぎの味を残していきたい、日本の昔ながらの味を広めていきたいという想いで始めました。

Q3仕事ではどのような工夫をしていますか

僕たちのお店では毎日メニューが変わります。
SNSでメニューと写真を配信しているため、それをきっかけに海外からお客様がいらっしゃることもあります。
「毎日メニューを考えるのは大変では?」と思われるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。
たとえば「サツマイモのおはぎをつくろう」と決めるとします。
するとそこから、サツマイモとかぼちゃ、サツマイモとココナッツ、サツマイモとごま、サツマイモとフルーツなど、一つの食材から無数の組み合わせを生み出すことができます。
僕たちのお店では、白いんげん豆を使った白こしあんを使っています。
白いんげん豆は、ヨーロッパでは肉や野菜などさまざまな食材と組み合わせて、サラダやスープ、煮込み料理などに使われています。
この食材を組み合わせるテクニックは、これまでのデリカテッセンでの経験から生まれました。

趣味やセンスが異なるスタッフたちから新しいアイデアを提案してもらうときは、「こんな考え方があったのか!」とうれしくなります。
また、旬の野菜や花、スーパーで売っているものから旅行先の名産品まで、いろいろなものからインスピレーションを得ています。

Q4小川さんにとって「ウェルビーイング」とは?

自分がやりたいことが誰かへの恩返しになっている、これが私にとってのウェルビーイングです。

おはぎ専門店を開いたのも、店名に祖母の名前をつけたのも、祖母によろこんでほしかったからです。
新しいメニューを考えるときも、「自分が作りたいか」より「誰に食べてもらいたいか」というストーリーを大切にしています。
新型コロナウイルス感染症が流行して一時休業したときは不安でした。
しかし、もう一度お店を開けて、スタッフといっしょにテーブルを囲んでおはぎをつくれるようになったときは本当にうれしかったです。
スタッフみんなと、おばあちゃん、おじいちゃんになるまで、おはぎをつくり続けていきたいです。

Q5高校生の皆さんへメッセージをお願いします!

白いんげん豆をベースにいくつものおはぎの種類を考えていますが、これはデリカテッセンのお店で白いんげん豆と他の食材を組み合わせていろいろなメニューづくりを経験したからです。
また、チームメンバーとよりよいものをつくっていくことは、学生時代に打ち込んだサッカーで鍛えた団結力とも似ています。
今、頑張っていることが将来どこかで役立つはずです。

背伸びはしなくていいから、今できること、目の前のことをコツコツやることをおすすめします。
そして、人を大切にしたいと思う気持ちや、人とのつながりを大切にしていってください。

小川さんのある日のおもなスケジュール