「50分で調理・片付け・振り返りまで」コロナ禍の家庭科調理実習

コロナ禍で調理実習ができない、これは家庭科の先生にとって切実な問題です。最大の課題は、感染症予防のため複数人での共同作業ができないことにあります。通常はグループ単位で2時限をかけて実施するところを、1時限ごとに分けできるだけ小人数で調理実習をこなさなければなりません。こ万全の感染症対策を施し、こうした困難を乗り越え、調理実習を実施している先生をご紹介します。

前回のレポート「コロナ禍のなかで家庭科の実習授業をどう実践するか?」に引き続き、京都府立洛北高等学校の竝川幸子先生の時短調理実習オペーレーションの模様をお送りします。50分のうち調理時間は35分、余裕をもって振り返りまで行う授業工程は、家庭科の先生必読です。

 はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響は、家庭科教育にも大きな影を落としました。しかし、調理実習や被服製作は、生徒の興味・関心を高める上で必要不可欠なもの。何としても実施したいという思いから、まずは、文部科学省等から示された新型コロナウイルス感染症対策について留意、様々な配慮や工夫をして調理実習「ひとりクッキング」を実施しました。(コロナ禍のなかで家庭科の実習授業をどう実践するか?で掲載)
これまでの実習と大きく異なるところは次の点です。

①  対面にならないよう、調理台に生徒が並行して実習し、調理から後片付けまで自分ひとりで完結する。→「ひとりクッキング」

②  教師から実習内容について授業開始後20分程度で全体説明。その後、1クラス 40 人を2分割し、調理を行うグループと課題に取り組むグループに分け、交代で実施する。

③  試食は自分だけのものとする。

これらを踏まえて行った高等学校「家庭基礎」中高一貫クラスにおける授業実践を報告をします。

高校1年生:ひとりクッキング「親子どんぶり」

実施日/11月2日(月)3・4限及び5・6限 2時間連続授業 2クラス 計80名

中学生時から継続して受け持っていますが、高校入学後は初めての調理実習となります。そのため、調理室の使い方や後片付け、調理内容等、基礎的・基本的なことを改めておさえるようにしました。

調理のねらい:「だしと親子どんぶり」について

短時間で簡単に調理ができること。そして、食文化の伝承の視点を含め、1回目の調理実習は゛親子どんぶり”にしました。だしは、昆布とかつおの混合だしを用いますが、だしのとり方等については、中学生の時に学習済みです。

また、新型コロナウイルス感染症の影響による休校中(6月から授業再開)の時には「お弁当実習」を課題のひとつとし、その中には‟だし巻き卵や浸し”など、「だし」を活用した調理内 容も含めています。

7月の授業ではその課題の復習として「お弁当実習デモンストレーション」を行いました。これを受けて夏休みの課題「ホームプロジェクト」の中で「だし」を使った調理に挑戦した生徒も少なくありません。このように、だしを意識して授業を進めてきていることも踏まえ、献立は手軽にできる和食‟親子どんぶり” としました。(教科書に掲載されています)

また、使用する鍋の特徴についても学ぶようにしました。親子鍋と行平鍋を用意し、種類や表面に凹凸があり、熱伝導率がよいことなどを説明しました。

授業・調理実習の進め方について

コロナ禍の中、思いついたのが個々人で調理を完結させる「ひとりクッキング」です。2時間連続授業の中で1クラス 40 人全員の調理実習を目指し、全体説明→調理20人(課題20人)→調 理20人(課題20人)という流れで進めます。

当日は、家庭経営室(廊下を挟んで調理室の隣にある)で40人全員に作り方を説明。その後クラスを2分割し(奇数列・偶数列)、一方はその場で課題に取り組み、もう一方は調理室で親子どんぶりをひとりで作り、試食・後片付けを行いました。休み時間にグループが入れ替わり、同様にそれぞれの取り組みを進めました。

以下、当日の写真で手順と段取りをご紹介します。

全体説明
食材の切り方や鍋の種類、調理方法に加え、食中毒菌や鶏肉やまな板等の扱いについても説明。

調理開始
隣の人と距離を保ちつつ調理を行う。 調理用具等は、各自それぞれが使用し、共有を避けることなどの意識化を徹底。各調理台に行平鍋と親子鍋を置く。生徒は相談し、それぞれ使いやすい鍋を選択。こちらは親子鍋。

つるっとご飯に移すことができるか・・卵の状態を見極めるのがなかなか難しい。

親子どんぶり完成
箸は各自持参。リバーシブルランチョンマットは中学1生の時の作品。

失敗なく全員予定時間内に完成し、試食。密にならないよう席の配置に注意。予め椅子を配置し、そこに着席するよう指示。

授業の残り時間 10 分。調理実習の振り返り等を実施。生徒は滞りなく実習を終え、ホッと一息。

2クラスともほとんどの生徒が予習をしており、手際よく調理・試食・後片付けまで行い、終業時間まで15分を残して完了しました。教室移動等の時間を確保し、残り10分間は調理実習の振り返りや次時間の授業予告等を行いました。

調理の準備について

35分で実習完結を目指すため、教師が1人分ずつ食材を切り分け、だしやご飯も準備しました。試食に使う器は80℃以上の熱水に10分さらし消毒をしましたが、事前に生徒にそのことを説明すると共に、容器の持参も認めました。(実際には、全員学校の器を使いました。)

前半グループが調理を行っている間に後半グループの食材を用意します。そして、生徒が教室を移動交代する休み時間に食材等を調理台に置いていきます。

以下では私が行った準備について詳しく説明していきます。

鍋の洗浄と自然乾燥
2種の鍋を10個ずつ、コロナ感染防止対応の洗剤で洗浄後、自然乾燥。

器の消毒
熱水温度を温度計で確認。80℃以上の熱水に10分さらし消毒を。

器の自然乾燥
消毒後、40人分の器を自然乾燥。5・6 限目のクラス分は昼休みに消毒を実施。

ご飯を盛る
生徒の調理進行を見つつ、ご飯を器へ。コロナ禍を踏まえ、蓋は使用しない。

食材の準備
玉ねぎ、三つ葉、鶏肉をひとり分ずつ準備。鶏肉が他の食材とくっつかないよう注意。
調理の準備完了
親子どんぶりの調理に必要な物が揃う。だしは計量カップに。

 

ワークシートと生徒の感想について

ワークシートには、実習のねらいや調理方法、調理のポイントと考察の欄を設けていますが、それに加え、もう一品‟豆腐とみつばのすまし汁”の作り方を載せています。これは、だしの活用や豆腐を手のひらにのせて切る技術を知って欲しいためです。食への関心を高めるとともに調理機能を定着させるなどの理由から予習を推奨しています。

次に挙げるのは代表的な生徒の感想です。

・これまでから比べ、より速く作れるようになったと思う。周りの人との役割分担がない分、緊張したが、上手く作れことができて、後片付けもよくできたと思う。日常生活で、工夫して作っていけるようにしたいと思う。

・今回、すべて1人で調理することが初めてだったが、しっかり予習してきたので注意する点や手際よくできるように意識できた。

まとめと課題 ー次回の調理実習に繋げるためにー

11月2日 80 人の調理実習は、新型コロナウイルス感染症対策を講じながら、時間内に終えることができました。生徒にとって、今回が初めてのひとりクッキングでしたが、短時間で、かつ、美味しくできたことで自信がついたようです。 16日には、講師を迎え同じようにひとりクッキングを行います。(今回と同じくレポートにする予定です)

コロナ禍の中、これまでの実習とは異なり、特に準備には時間がかかります。でも、実習中の生徒の姿を見ると、また頑張ろうという思いがこみ上げます。なお、こうして滞りなく時間内に完結できるのは、家庭科係やボランティア(1名)の協力が大きいことを付記します。

 

竝川幸子(なみかわさちこ)
長年に渡る生徒指導部長や指導主事の経験を生かし、「生きた家庭科教育」を目指す。
平成22 年から京都府立洛北高等学校に勤務。中学生・高校生と日々向き合う。