超進学校の調理実習体験記! ~育むのは「創造力」~
高校家庭

今回の記事のテーマは「調理実習」
2学期の学習分野、夏休みの家庭学習として取り組む学校も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
生徒さんの生活力・学習状況・学校の教育目標などによって、どんな内容にするかは様々です。この度、教育図書では「レシピのない」調理実習を取材しました。
先生のご厚意とご協力により叶った”うわさの調理実習”の取材。営業部員による「学習体験記」としてお届けいたします。
「レシピのない調理実習」in 聖光学院(神奈川県)
今回取材に伺ったのは、神奈川県中区にある聖光学院中学校高等学校。
中高一貫教育の私立男子校で、東京大学への合格者が学年の3割を超える超名門・進学校です。中には海外の大学を志望する生徒もおり、日々ハイレベルな授業が行われています。
そんな超進学校の家庭科はどのような内容なのか、中学3年生の調理実習の様子を取材しました。
・実施校:聖光学院中学校高等学校
・対象:中学3年生 5クラス
・実施時間:250分(調理実習)
・実施場所:多目的室
“うわさの調理実習” 導入に至るまでのストーリー
●なぜ、「クックパッドの家庭科」導入にいたったのか?
うわさになっているレシピのない調理実習「クックパッドの家庭科」を実施し始めて、今年で5年目を迎える聖光学院。どのような経緯で実施に至ったのでしょうか。導入までのストーリーを校長の工藤先生、家庭科ご担当の佐々木先生に伺いました。
●工藤先生
「聖光学院は歴史ある男子校であり、授業のレベルも自信があります。しかしながら、家庭科の学びに目を向けたところ、調理実習室が無い・専任の佐々木先生おひとりでの家庭科授業の運営など、問題が多くありました。生徒の力を伸ばせる授業について模索していた時、クックパッドの小竹さんと出会い、出張調理実習の話を聞きました。そのコンセプトに惹かれ『全国初の取り組みとなる出張調理実習を、ぜひ本校で実施してもらいたい!』とお伝えしたところから、クックパッドの家庭科が始まりました」
●佐々木先生
「もともとは、校長先生からの提案で始まりました。以前から家庭科の調理実習はしっかり取り組んでいたのですが、設備・人的資源の問題もあり『聖光学院らしさ』のある授業を実施することができず悩んでいました。そんな中、工藤校長から、クックパッドの取り組みを教えていただき早速お願いすることになりました。今年で5年目の開催となりますが、このように形になるまで大変なことも多くありました。本校の食堂や聖光学院サポーターとして保護者の皆さんにご協力いただいて実施できていることに感謝しています」。
力を合わせた1日がけの調理実習
中学3年生で行う調理実習は、学校内の一大イベントの一つとなっています。当日のプログラム・目標は以下のように設定されています。


●事前の準備
生徒の集合時間よりも前に、多目的室では事前の準備が行われていました。この日は台風が接近しており、実習の中止も危ぶまれましたが、何とか開催が決定!
佐々木先生、クックパッド小竹さんとスタッフ1名、サポーターの保護者様6名で準備がすすめられていました。
机の上には調理用具一式と、冊子、教卓には2人分の食材がグループの数ごとに用意されています。



[ 9:00 ]生徒集合・説明

多目的室に集合し、指定された座席に座り、2人組のペアになります。
佐々木先生より一日のスケジュールについての説明がありました。
[ 9:10 ]クックパッド株式会社 小竹貴子さんによる講義

小竹さんご自身の自己紹介と、クックパッド株式会社の企業理念のご説明がありました。
今回つくる料理は、「自分好みのスパイスカレー」です。

”『調理実習=ただ料理をつくって終わり』ではなく、目的意識を持って取り組んでもらいたい”
調理を「自分事」と捉えるための仕掛けとなる時間。調理実習に「付加価値」をつけるための講義が行われました。生徒の皆さんは講義の内容に釘付けでした。
講義内容は開催する学校様・生徒様ごとに異なり、伝えたいメッセージは小竹さんご自身で考えられているそうです。
配布された冊子を元に、自分自身の生活を振り返りながら、今日の調理実習の目的を再確認します。

[ 9:40 ]料理の「設計図」の作成
自分の食べたいカレーをイメージしてテーマを設定し、設計図を作ります。理想の味に近づけるため、「創造力」を発揮してスパイスを調合します。




[ 10:00 ]調理実習開始
作成したカレーの設計図・調合したスパイスを元に、いよいよ調理開始です。



使う食材、切り方、隠し味も自由。炒める時間も、強火も弱火も人それぞれ。すべて自分で考えて調理していきます。


実習中には、クックパッドスタッフによるキャベツの千切りレッスンが行われました。包丁の持ち方、切るときのポイントをおさらいします。

サラダのドレッシングも自分で調合します。

ひとり一人のオリジナルのカレー・サラダが出来上がりました。盛り付けにも「創造力」が発揮されています。


[ 12:00 ] 写真撮影・実食・片付け
盛り付けまで完成したペアから写真撮影をします。写真は後日、課題としてタブレットを通じて先生に提出します。
カレー・サラダは2人で半分に分けて食べ、自分が作ったものとペアの人がつくったものとの違いを味わいます。分け合うことで気づきがうまれ、楽しみも増えます。



取材班の記念写真も撮っていただきました!




左側、営業部員Mのカレーは夏野菜をたくさん入れた具沢山カレー。ボリュームがありながらも、素材の味が活きたさっぱりした味わいでした。
一方で、営業部員Sのカレーは、合い挽き肉・トマト・玉ねぎを炒めたシンプルなカレー。隠し味のチーズとはちみつの風味が効いた、コクのあるカレーでした。
それぞれがどんな料理にするか創造力を働かせた結果、十人十色のカレーが完成しました。
多目的室には水道が完備されています。(書道の授業でも使われており、筆や硯を洗います)自分で使った食器や調理道具は自分で洗います。

[ 13:15 ] 【後半の講義】 調理の振り返り
片付けが終わった後は午後の講義のスタート。
料理と科学のつながりの講義では、生徒の皆さんの目が釘付けでした。調理実習の振り返りをしながら、応用の課題に取り組みます。
[ 13:30 ] 応用編:食に関する社会問題について考える


全世界で事業を展開するクックパッド株式会社だからこそ知りえる情報・データをもとに、「食」の現状・将来について考えました。
クックパッド様オリジナルの教材「カーボンカード」を使って、楽しく理解を深めます。
[ 14:00 ] 「あなたにとっての料理とは?」
実習のスタート時の問い「あなたにとっての料理とは?」について再度考えます。
「家族のだんらんの場」「コミュニケーションの時間」「生きるために必要なもの」という考えに加えて、「食事をする楽しさを教えてくれるもの」「食事までの道のりとありがたみが分かるもの」など、始める前とは違う意見も聞こえてきました。
クックパッド株式会社 小竹さんより
最後に、聖光学院での調理実習をご担当の、クックパッド株式会社小竹さんに調理実習への想い・本日を振り返ってのご感想を伺いました。
●小竹さん
私たちクックパッド株式会社の理念は「毎日の料理を楽しみにする」ということ。そのための取り組みとして、「クックパッドの家庭科」をスタートさせ、今年で5年目となります。その中で多くの生徒様の変化を目にしてきました。実は本日の調理実習で、以前もサポーターとして携わっていただいた保護者様より、
「2年上の兄弟が家庭科の実習をきっかけに自宅で料理をするようになった」とのお声をいただきました。
こうしたエピソードにふれて、好奇心あふれる聖光生にとって“レシピがない”という切り口の体験は、非常に意義深いものだと再認識しております。
このような、生徒様の日常でのより良い変化のためには、何よりも成功体験が大切だと実感しています。そのためには「失敗をさせない工夫」が必要で、講義の構成や生徒との受け答えの一工夫で、成功の数は増えると感じています。授業をするようになってから、生徒が失敗・成功どちらに捉えるかどうかは大人の手腕にかかっており、そこに責任を持つべきだと考えるようになりました。
・編集後記
この度は、取材だけでなく、一緒にカレー作りに挑戦し、貴重な経験をさせていただきました。
取材班もスパイスからカレーを作ったことは初めてでした。大人になってからというもの料理をする習慣は付いていますが、だからこそ、これまでの料理経験に頼ってしまう部分が多々ありました。生徒さんの独自性・アイデア・創造力に感心・感動しました。
ひとり一人の工夫の詰まった料理に「考える力」を見て取れたように感じています。より多くの学校様、生徒様に知ってもらいたい取り組みです。
佐々木先生、小竹さん、この度は誠にありがとうございました。
【 取材協力 】

佐々木 美樹 先生
聖光学院中学校高等学校
家庭科専任教諭
聖光学院中学校・高等学校
神奈川県横浜市にある私立の中高一貫男子校。カトリックのミッションスクールとして「紳士たれ」を校訓に掲げ、人格教育に力を入れている。進学実績も高く、2024年には東京大学合格者が100名を超えた。
公式HP>>

クックパッドの家庭科
クックパッド株式会社が実施する、料理を中心にした教育プログラム。レシピのない中で創造力を活かして作る調理実習「自分好みのトマトパスタを作ろう」や、料理から環境問題を考える「カーボンカードブラックジャック」など、生徒ひとり一人が考え、楽しく学ぶことができる内容が特徴です。現在は主に中学校と高校を中心に出張授業にて提供しています。
公式HP>>




