生徒自ら主体的に取り組む仮名の書の創作授業

高校書道

11月29日(土)に東京学芸大学附属高等学校で第24回公開教育研究大会が開催されました。
研究主題である「生徒エージェンシーを育むカリキュラム・マネジメント」を実践した公開授業です。生徒エージェンシーとは、「生徒が自ら目標を設定し振り返りながら責任を持って変革を起こす為の行動をとる能力」を指します。

今回は松原直也先生の書道の授業を見学しました。「仮名の書の創作授業」になります。伝統的な文字文化である散らし書きについて、多角的な視点から捉え、相互鑑賞、意見交換、それらを踏まえ、自らの構想・工夫を見直し、試行錯誤しながら作品を作り上げていく過程の中で「生徒エージェンシー」を育むことにも繋がる授業、学習です。
この公開授業には多くの他校の先生方、書道教育関係者が参観しており、授業後の研究協議会では活発な意見交換が取り交わされておりました。

単元の目標

単元
俳句を用いた仮名の書の創作(9時間)

※今回の公開授業は7/9、8/9時間目の2時間の授業になります。

単元の目標(3観点に沿って)
①知識・技能

  • 線質や書風と用筆・運筆、用具・用材の特徴と表現効果との関わりについて理解する。
  • 質、字形、構成等の要素と表現効果や風趣との関わり、日本の文字と書の伝統と文化について理解する。
  • 古典に基づく基本的な用筆・運筆による技能や連綿と単体、線質や字形を生かした表現をの技能を身に付ける。

②思考・判断・表現

  • 古典の書風に即した用筆・運筆、字形、全体の構成について構想し工夫する。
  • 創造された作品の価値とその根拠について考え、書のよさや美しさについて味わって捉える。

③学びに向かう力、人間性など

  • 自身の表現の意図に基づく表現、仮名の書の特質に基づく幅広い表現の学習活動に主体的に取り組み、書に対する感性を豊かにし、書を愛好する心情を養う。
  • 書のよさや美しさを感受し、作品や書の意味や価値について考えながら、幅広い鑑賞の学習活動に主体的に取り組み、書に対する感性を豊かにし、書を愛好する心情を養う。

授業に至るまでの経緯(単元設定の理由)

生徒はこれまで、仮名の書の基本(単体や連綿)を学習した後、「蓬莱切」や「三色紙」の臨書・鑑賞を行ってきました。漢字の書と比較して小筆での表現に難しさを感じている生徒もおり、自らの意図を実現しようと粘り強く試行錯誤を続けています。

そこで、本単元に至るまでの準備として、生徒は俳句を自ら選定し、これまでの学習を踏まえて段階的に草稿を制作しました。また、他の生徒がどうしてこの俳句を選定したのか、どう書いたのかを知りたいという声もあり、今回スプレッドシートを活用したワークシートで共有したことにより、他者との相互鑑賞や意見交換を通じて、1人では考えていたのでは得られなかった点などを取り入れながら、自らの構想や工夫を見直す主体的な授業を目指しました。
また、散らし書きについて構成の面から捉えるだけでなく、当時の人々の散らし書きに対する捉え方、墨の潤滑や線の太細の変化など多角的な視点を提示しながら生徒に深い理解を促した学習を進めます。

スプレッドシートの内容(イメージ)

スプレッドシートを活用したワークシートの記入内容
①表現の意図、作品の構想
②表現の工夫
③作品制作(画像)
④自己評価
⑤他者からの意見
⑥構想・工夫の見直し
⑦構想・工夫



授業の流れ

1.挨拶、用具・用材の準備(5分間)

2.観点の確認(10分間)

電子黒板で「三色紙」など古筆の作品をいくつか紹介し、鑑賞及び『源氏物語』の中の記述を確認し、制作しようとする作品について考え、構想・工夫に繋げます。

3.構想・工夫(10分間)

制作する作品について、表現の意図、構想・工夫した点を踏まえ、清書に向け、本時は作品制作と意見交換を行うことを確認し、ワークシートの「①表現の意図,作品の構想」と「②表現の工夫」の欄に記入します。

4.作品制作(25分間)

ワークシート①、②の意図に基づく構想と、表現の工夫の計画に基づき、練習用紙に具体的に作品を書いていきます。

5.自己評価(5分間)
表現の意図、構想・工夫した点に基づき、その成果が最もよく表れた作品を1点選定し、自身の制作と構想・工夫の過程を振り返り,ワークシート③「作品制作」に撮影した作品を貼ります。作品の変化や表現の工夫の経緯、身に付けた知識と技能を改めて確認し、見方・考え方を働かせて、作品とその制作過程について自己評価を行い、ワークシート④の「自己評価」の欄に記入していきます。

6.相互鑑賞・意見交換(15分間)

相互鑑賞・意見交換を行うため、3人1グループとなって作品を相互に交換する。
見方・考え方を働かせて、実際の作品を鑑賞することを通して、他者と作品の共有・相互鑑賞を行い、それぞれの表現の意図、意図に基づく構想、その実現のための表現の工夫等について、意見交換をし、ワークシート⑤の「他者からの意見」の欄に記入する。最後に生徒全員で各生徒の作品を鑑賞します。

7.構想・工夫の見直し(5分間)
相互鑑賞・意見交換を通して広げた見方・考え方を働かせ、表現の意図、意図に基づく構想、その実現のための表現の工夫を見直し、必要な修正及び新たな課題などを確認し、ワークシートの「⑥構想・工夫の見直し」の欄に記入します。

8.構想・工夫(5分間)
他者との作品の相互鑑賞・意見交換及びそこでの見方・考え方の交流を生かして、自身の表現の意図、構想、表現の工夫について改めて考え、再構築、適切に言語化し、ワークシートの「⑦構想・工夫」の欄に記入します。

9.作品制作(清書 15分)

意図に基づく構想と、表現の工夫の計画に基づき、各生徒が希望の料紙に具体的に作品を書いて表現します。

10.片付け・挨拶(5分間)

参観者からの感想

  • スプレッドシートを活用することで一連の流れが一目で分かり評価しやすい。他の生徒の意見や工夫を見ることができ、参考にできるので積極的に活用したい。
  • 自分の意見をなかなか書けない生徒がいる中でスプレッドシートで共有することによって、他の生徒の意見・工夫を参考に、自分の言葉で書くことができるので是非今後の授業で活かしたい。
  • 生徒自ら選んだ俳句で創作するのが良かった。
  • 相互鑑賞もグループで終わらせるのではなく、全員の作品を鑑賞する時間を設けたのが良かった。
  • 休憩時間も主体的に練習に取り組んでいる生徒がいた。
  • 自己評価→他者の意見、相互鑑賞→作品創作の流れがスムーズに進行していた。



先生の感想

今回の公開教育研究会では、「生徒エージェンシー」をキーワードにしながら、発表させていただきました。
散らし書きというある意味において、定まった形の無いものに対して生徒が学習したことを活用しながら、自ら考え取り組むことは、生徒エージェンシーを育む上においても大切なことの一つではないかと考えました。

今回、授業の中で ICT、特にスプレッドシートを活用しました。比較的少人数ではありますが、共に学ぶ他者の考えや意見に触れながら刺激を受け、より一層自身の考えを深めながら学んで欲しいという願いがありました。1 人でワークシートに記入していたのではなかなか言語化が難しい生徒も、少しは抵抗感を感じることなく取り組めたと思います。一方、直接対話したり意見を交わしたりする中で気付いたり伝えたりできることもあると思います。したがって、両方のバランスを考えながら授業を組み立ていくことが必要であると考えます。

多くの方々にお越しいただき、貴重なご意見やご感想を賜りました。今年度着任したばかりで、まだまだ不慣れなところも多々ありますが、今回の発表を通じて得られた課題点を踏まえつつ日々の授業へと繋げていきたいと思います。

松原先生、そして東京学芸大学附属高等学校の生徒の皆さん、ありがとうございました。

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