教科横断的学びの実践① 家庭科×数学科

高校家庭

現在学校現場では、教科横断的な学びの重要性が高まっています。多角的な視点を持つことによって実社会、実生活の課題解決に取り組むことができます。

学習指導要領の改訂に伴い、高等学校家庭科の消費生活、経済計画の授業では「投資」の内容について指導することが導入されました。しかし、投資経験や専門的な経済知識を持たない先生が、どのようにして生徒に投資を伝えるべきか苦慮している現状があります。

今回、栃木県立小山高等学校の家庭科の授業では、投資に深い知見を持っている数学の先生とのコラボ授業を行いました。

コラボ授業の狙い

栃木県立小山高等学校では、学校指標である「聡・直・剛」に基づき、自ら考え、行動し、新しい時代を切り拓くリーダーの育成を掲げています。この目標を具現化するため、家庭科の板橋 寛子先生の経済計画の「投資」の授業で、投資理論やデータ分析に精通した数学科の和久井 明先生が手を取り合い、専門性を融合させた先進的なコラボレーション授業を企画・実施しました。

板橋先生は、家庭科が担う生活設計やリスク管理という実生活に即した視点に、数学的な論理的根拠を掛け合わせることで、投資の本質を構造的に理解させることを狙いとして、それぞれの教科の特性を合わせることにより、普段以上に生徒にとって内容の濃い授業を提供することができるのではないかと思い授業を実現しました。

単元の目標

単元:経済計画「いろいろな金融商品について知る」

目標

  • 知識・技能:金融商品とその特徴について理解している。
  • 思考・判断:さまざまな金融商品のメリットとデメリットについて具体的に調べ,発表することができる。
  • 主体的態度:家計の構造,家計における収支バランスや計画性にとどまらず,将来にわたるリスクを想定して,不測の事態に備えた貯蓄や金融商品の活用などの資金計画について関心をもっている。

単なる「お金の増やし方」「金融商品」を教えるのではなく、投資の本質を構造的に理解させることで、生徒が「なぜ投資が必要なのか」「リスクとリターンはどう計算されるのか」を自分自身の問題として捉えることを目指しました。

授業の流れ実社会の株価データを用いた模擬投資を通じ、論理的思考と生活設計力を養う

「お金をためる」をテーマにまずは資産形成として貯蓄と投資の2パターンの説明をし、いろいろな金融商品を紹介しました。ここで最初に和久井先生が生徒に強く伝えていたことは「投資は自己責任」であるということ、「リスクを正しく理解する」ことが必要と語っていました。

そこから株式投資を中心に数学の先生ならではの「確率、統計、複利計算」といった論理的根拠をもとに実際の資料を参考にした授業となります。資料の数字から配当利回りの計算をさせていました。

今回の授業のハイライトは、実際の企業の株価指数を用いた模擬株式投資シミュレーションです。

数学科の視点から、過去の株価データの推移をグラフ化し、平均値や変動率(リスク)を算出しました。生徒たちは「なぜこの企業の株価が動いたのか」を、数学的な論理的根拠に基づいて分析する手法を学び、実際の企業の10年後のシミュレーションをしました。教科書上の理論を学ぶだけでなく、現実の市場の動きを「数字」として捉える授業でした。

実践から得られた成果

投資(株式)に関する授業を構成するにあたり、専門的な知識不足から「いかに生徒へ分かりやすく、かつ正確に伝えるか」が課題となっていました。しかし、今回の数学科とのコラボ授業によって、その課題を解消することができました。

数学的な根拠(データの読み方やシミュレーション等)を背景に持つ数学担当教諭の視点が加わったことで、抽象的になりがちな投資の話をより具体的かつ論理的に展開することが可能となりました。また、実際の企業の数字を扱うことで、生徒の集中力は高まりました。数学で学んだ関数や確率が、将来の資産形成という「生活の実情」に直結していることを実感させ、結果として、生徒にとって理解しやすく、実感を伴った学びを提供できたことは大きな成果でした。

生徒の感想

  • 金利の低い今は、貯金よりも投資の方がお金が増えることが分かった。しかしリスクもあるのでそのことも覚えておかなくてはならない。
  • 株価について全く知らなかったが、スマホで簡単にみることができることが知れたので、何かの機会に活用したい。
  • 投資については全く考えてなかったが、この機会に知れてよかった。

課題と今後の改善

一方で、初めての試みゆえに、教科間の役割分担において改善すべき点も見受けられました。

まず、株式に関する専門的な内容については、よくわからなかった部分もあり、数学の先生にまかせっきりになる状態がありました。 家庭科としての「生活設計」の視点と、数学の「論理的分析」をより密接にリンクさせる必要があります。

また今後は、計画段階から両教科の担当者が緊密に相談し、双方向的な授業準備、カリキュラムを共同で構築することで、より効果の高い「教科横断的な学び」を目指すべきであると考えています。

板橋先生から

他教科の視点を取り入れることは、生徒だけでなく、自身の学びを深化させる貴重な機会となりました。数学的アプローチによって投資の構造が可視化されたことで、私自身も「生活設計」をより多角的に捉え直すことができました。今後は「まかせっきり」にするのではなく、互いの専門性をぶつけ合いながら、相乗効果を生み出せるようなカリキュラム開発に注力して来年以降も続けていきたいと思います。

改めて、教科横断的な授業は別の視点、多角的な視点で学べるだけでなく、効率的よく、実感を伴った学びが実現し、さらには指導者自身が学べることがわかりました。

板橋先生、和久井先生ありがとうございました。

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