授業再開における Q&A

2020年6月5日
福岡教育大学特命教授 古川稔先生 監修

安全管理・消毒について

Q1. 道具(のこぎり、ミシン、作業台等)を共有しますが、どのような対応が考えられますか。
金属製の工具や工作機械等をアルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒することは問題ないと思います。ただし、柄のついた金工やすりのようなものは、柄の部分のみを消毒すればよいでしょう。
文部科学省の教育活動の再開等に関するQ&A(5月13日時点)の問11の回答に、「消毒液については、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムを例示していましたが、学校における施設の消毒にあたっては、次亜塩素酸ナトリウムを積極的に利用いただきたいと考えており、御協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。」と記されています。
次亜塩素酸ナトリウム液の作り方については、厚生労働省及び経済産業省が以下の URL でリーフレットを紹介しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000614437.pdf

使用上の注意点は以下の通りです。
  • 塩素系漂白剤を薄めて0.05%次亜塩素酸ナトリウムを作るときや使用する際には、十分に換気を行い、家庭用手袋をする。酸性溶液と混ぜると、塩素ガスが発生して危険であるので、絶対に混ぜない。
  • 使用時にも家庭用手袋を着用し、蒸気を吸ったり、目に入ったりしないようにする。
  • 消毒後は水拭きする。
  • 使用後の液は冷暗所に保管し、数日間で使い、残ったら捨てる。

炭素含有量の多い鋼でできているやすり本体のような工具を、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒し放置しておけば、時間が経つと錆びが進行します。とくに、次亜塩素酸ナトリウムで消毒した後は錆びの進行が速いようです。消毒後、長時間保管(放置)する場合には、うすく油を塗って錆びを防止することが必要です。
Q2. 学校に次亜塩素酸水が配された場合、これで消毒してもよいでしょうか。
次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムとは別の物質であり、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性であるのに対し、次亜塩素酸水は弱酸性です。政府は2020年4月10日の閣議で、品薄となっているアルコール消毒液の代わりに使われることのある次亜塩素酸水について、現時点では手指の消毒に活用することについての有効性が確認されていない」とする答弁書を決定しました。手洗いには、「石鹸やハンドソープを使った手洗い」を推奨しています。
その後、経済産業省は4月15日付で、「独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、新型コロナウイルスに有効な可能性がある消毒方法として、界面活性剤(台所用洗剤等)、次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)、及び第4級アンモニウム塩を選定しました。今後、これらの消毒方法について有効性の評価を実施します。」と発表しました。したがって、NITEによる調査が進めば、次亜塩素酸水の有効性が確認される可能性はありますが、現時点では有効性は不明です。
Q3. タブレットやパソコンの消毒は、どのようにすればよいでしょうか。
タブレットやパソコンの消毒にも、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効ですが、次亜塩素酸ナトリウムで消毒した場合には、消毒後よく絞った布で十分に水拭きすることが必要です。
※消毒の方法はメーカー毎に対応が異なります。各機器メーカーのWebを参照してください。また,教育委員会等から指示がある場合があります。
Q4. 消毒は、1時間の授業ごとに実施するべきでしょうか、また消毒してはいけないものはありますか。
多くの生徒が共用する工具類の持ち手や工作機械のハンドル部は、1時間の授業ごとに消毒することが適当であると思います。さらに、生徒には授業の前後に手洗いをさせることが必要でしょう。
消毒用アルコールはエチルアルコールであり、人体に害はないとされていますが、皮脂を除去する作用がありますので、アルコール消毒剤を頻繁に使っていると、手が荒れてしまうことがあります。また、次亜塩素酸ナトリウム液は食品の洗浄には使えません。食器類を消毒した後には、十分に水拭きすることが必要です。
Q5. 授業の片づけ時に、生徒に消毒させる等の工夫は考えられますか。
安全・衛生に対する生徒の意識を向上させる上でも、生徒自身に消毒をさせることは教育効果が大きいものと考えます。

実習について

Q6. 実習室の作業台を使う場合、「3密」にならない使い方はどのようにすればよいでしょうか。
以下のことが挙げられます。
 ・クラスを少人数のグループに分けて、1台の工作台を使用する人数を減らす。
 ・クラスを少人数のグループに分けて、使用していない教室を活用する。
 ・天候にもよるが、工作台を屋外に持ち出して作業する。
 ・工作台の間隔を空ける。
 ・工作台を使用する際に、相対して座らせない。
 ・共同の作業を避ける。
 ・実習室の両サイドの窓を同時に開ける。
 ・換気扇を回す(エアコン作動時にも換気扇を回す)。
Q7. ソーシャル・ディスタンスの観点から、工作機械(卓上ボール盤等)の配置や、共用する道具等の配置について、どのような工夫が考えられますか。
工作機械等の移動が可能で工作室のスペースに余裕があれば、できるだけ教室の隅ではなく、風通しの良い窓側に、間隔を空けて配置することが適当でしょう。パソコンの配置も間隔を空けることが必要でしょう。
共用する道具を生徒が取りに行く際、生徒同士が接する機会を少なくするように、あらかじめ作業台の上に置いておくことが考えられます。また、共用の道具でも、1つの道具をできる限り少人数で使うようにした方が良いと思います。
Q8. 家庭分野の場合、調理以外の実習で、留意すべきことはありますか。
通常の授業や実習と同様、以下のことに留意すべきです。
 ・3密を避ける。
 ・道具等を毎時間消毒する。
 ・道具の共用を可能な限り避ける。
 ・授業の前後に手洗いをする。

授業展開の工夫・評価について

Q9. 実習を伴う内容の場合、少人数で進める工夫はどのようにすればよいでしょうか。
クラスを少人数グループに分けて実習を行うことは、感染防止と教育効果の向上に有効であることは明らかですが、少人数グループに分ければ教師の時間的な負担が増します。他教科の協力を得て、時間割編成を見直すとともに、人的な援助を求めることも考えられますが、実現の可能性は高くないと思います。
教師の負担をそれほど増さずに、少人数グループでの実習を実現するためには、実習項目を精選することが最も現実的な方法であると思います。この機会に、効果的な実習についてお考え下さい。 文部科学省は、「最終学年以外では、学習内容の一部を次年度以降に繰り越すことを特例で認める方針」を決め、5月15日に全国の教育委員会に通知しました。原則は、年度内で必要な指導を終えるように最大の努力をするべきでしょうが、この選択肢も視野に入れて、少人数グループでの実習を優先することも考えられます。
Q10. 自宅学習で、予習や宿題として取り組む「実習」はどのようにすればよいでしょうか。
加工学習等の場合は、工具や工作機械を必要としますし、安全の確保もありますので、機械や工具を使ったものづくりを自宅で行うのは難しいと思います。しかし、加工実習では、身の回りから問題を見いだし、解決するための課題を考え、材料の選択や加工方法を考え、設計・計画し、厚紙などで試作するといったものづくりの前段階までは自宅学習でも可能だと思います。また、生物育成においても、簡単な植物の栽培は自宅でもできますし、育成や生長の観察や記録を取ることも考えられるでしょう。
Q11. 教材等の購入について、考慮すべきことはありますか。
自宅で個別に取り組むことができる実習教材の購入が考えられます。生徒が単独で作業するものとしては、例えば、Q9の回答に挙げた製図に用いる用具や植物を育成するためのポットや種の購入が考えられます。また、遠隔授業が行えるのであれば、機械の分解キットや電気回路の組み立てキットなどを購入して、示範することが考えられます。
Q12. 調理実習などの指導順序の入れかえについて、(特に中学3年生で)考慮すべき事や、注意点はありますか。
文部科学省の教育活動の再開等に関するQ&A(5月13日時点)の問35の回答に、「感染症対策を講じてもなお感染の可能性が高い学習活動については、当分の間、これを行わないようにしてください。」とされている中に、「家庭科、技術・家庭科における調理等の実習」が挙げられています。
中学3年生以外では、次年度に実施することも可能ですが、3年生については、指導順序を入れ替えて、コロナウイルスによる感染が落ち着いてから行うことが必要です。
調理実習のように厳密な衛生管理が求められるものは、他に優先して少人数グループで実施することが考えられますし、自宅学習も有効な方法であると思われます。
Q13. 自宅学習で取り組んだこと(特に実習に関すること)を、どのように評価に結びつけることが考えられますか。
文部科学省の教育活動の再開等に関するQ&A(5月13日時点)の家庭学習の内容の評価に関する問67の回答に、「各学校が休業期間中に課す家庭学習については、登校再開後の授業への円滑な接続を見据え、主たる教材である教科書を中心に、教科書と併用できる教材等を適切に組み合わせたものとして課し、学校の指導計画の下で、その学習状況や成果を把握し指導や学習の改善に努めることが重要と考えています。」と述べられています。
しかし、実習が大きな部分を占める技術・家庭科では、自宅学習でも実習の一部に取り組ませ、それを評価する必要があります。Q10の回答で、自宅で行うことのできる「材料と加工」と「生物育成」の実習の例を挙げました。これらの内容について、レポートを書かせたり、登校日における学習状況確認のための小テストを実施したりすることで、評価を行うことが考えられます。
Q14. そのほか、評価について考慮すべきことはあるでしょうか。
自宅学習において、「主体的に学習に取り組む態度」の「粘り強く学習に取り組む態度」と「自らの学習を調整しようとする態度」の2つの側面を評価するためには、生徒たちの学習の過程や自己評価を参考にすることになると思います。自宅学習時には、生徒たちにこれらの記録させておく必要があります。
「思いやりなど」の評価は、グループで活動を行わせることによって可能であると思います。一刻も早く全面的な対面授業の戻ることを期待致します。
Q15. 現場の先生方へのアドバイスをお願いします。
文部科学省が示した例示は、そのほとんどが全教科に共通することですので、実習を多く含む技術・家庭科に関しては十分とはいえません。日頃、授業や学級運営、生徒指導を担当されておられる先生方が、学校の物理的条件(配置や大きさ)や人的条件を考慮して、対策を講じられることが肝要であると思います。
コロナウイルス感染が拡大し、収束していく状況の中で、最近「感染を防ぐか、経済を回すか」という言葉をよく耳にします。このことを教育に置き替えれば、「感染を防ぐか、教育を進めるか」ということになります。しかし、感染防止優先か、教育優先かの二者択一ではなく、感染を最大限防ぎながら、質の高い教育を実行するための新たな方法を模索し、ルールを作ることが今の時期に最も重要であると思います。