こども食堂がつなぐもの

高校家庭

こちらの記事はてくテクVol.16号より加筆、修正を加えたものです。

すべての子どもが歩いていけるところに安心・安全なこども食堂がある社会の実現を目指して活動を続ける、認定 NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下むすびえ)。こども食堂の課題や家庭科とのつながりについて、「こども食堂・学校架け橋プロジェクト」担当の宮 由衣さんにお話を伺いました。

むすびえの活動

「むすびえ」さんの活動について教えてください。

私たちは「誰も取りこぼされない社会をつくりたい」という思いで、
①各地でこども食堂を支える地域ネットワーク団体の支援
②社会に貢献したいと考えている企業・団体と協働としてのこども食堂支援
③こども食堂に関する調査・研究と啓発
の3つの柱で活動しています。


こども食堂について学ぶ意味

中学校家庭分野の学習で、こども食堂についても扱われているのですが、中学生がこども食堂について学ぶことにどのような意味があると思いますか?

現在、私たち認定 NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえに、学校の先生方や生徒さんから講演や授業実施といったご相談やお問い合わせをいただくことが増えており、こども食堂が身近な地域貢献の形として、広く認識されていることを感じています。
むすびえでは、2024年度から地域のこども食堂と学校との協働を促す「こども食堂・学校架け橋プロジェクト」を始動させ、全国6地域でこども食堂を支える地域ネットワーク団体やこども食堂の運営者の 皆さんと共に、様々な形での実践に取り組んでいます。


具体的な活動について教えてください。

活動の中で、信州こども食堂ネットワーク(長野県)と実施している事業では、信州大学教育学部附属松本中学校の 2 年生と協働し、中学校内でこども食堂を実施しました。
同中学校では、探究的な活動を通して、学生のみなさんが自ら企画し、こども食堂運営者さんからアド
バイスをいただきながら、メニューや当日運営内容を考え、地域の方々への告知・集客、当日運営まで
を担いました。当日は「一緒に食べる」活動にとどまらず、探究的な学習の中で扱っている「防災」「動
物愛護」といった様々なテーマとも結びつけながら、地域の皆さんに楽しんでもらう工夫がみられました。
生徒さんからは、
・とっても楽しかった。よかったことも、もっとこうしたいと思ったこともたくさんありました。またやりたい!
・豚汁を食べて、おいしいと私に向かって笑顔で言ってくれた小さい男の子がいて、すごく嬉しかった。
・お手伝いしてくださった保護者の方々や運営者さんが本当にありがたく、自分が席を外している間にもいろんなことが進んでいて、改めてたくさんの人の協力のおかげでこんなに大きなイベントができたんだなと感じました。

といった声が振り返りで挙がりました。 
こども食堂には、運営者や調理や配膳を行うボランティアだけではなく、小さな子どもたちのお兄さん・お姉さん的存在である中学生、校生、大学生に加え、食材を提供する地元農家や企業など、地域づくりに想いをもって携わる多くの人々がいます。中学生がそのような大人たちと出会うことで、地域活動や社会貢献活動について自らの体験をもって学べることが、こども食堂について学ぶ大きな意義と言えるのではいないでしょうか。

信州大学教育学部付属松本中学校の 2 年生が作成した「A ぇ!こども食堂」のマップ。様々な探究テーマと結びつけ、中学生が中心となり企画

「Aぇ!こども食堂」当日の参加者から寄せられた感想。


家庭科の思い出

家庭科の思い出はありますか

家庭科の授業と言えば、まず思い出すのはやっぱり調理実習です。私はあまり調理に慣れていなかったので、味噌汁やカレーなど簡単な料理でも、自分で作ってみんなで食べる、という経験がよい思い出として残っています。あとは裁縫の授業で、自分で布を選んで浴衣を仕立てたことも思い出深いですね。その時の浴衣は今でも持っていて、中学生の自分に合わせて仕立てたので、もう小さくなってしまったのですが、大切にしています。家庭科は身の回りの小さなことからでも「自分でやってみる」ことを学ぶことができ、主体性をはぐくむことのできる教科だなと感じます。


中学生に伝えたいこと

授業で中学生に伝えて欲しいことはありますか?

こども食堂の 7 割は経済状況や年齢等に関係なく、誰もが参加できる形で運営されています。しかし、むすびえが実施した調査によると、「こども食堂は食べられない子が行くところ」という誤解を持たれている方も少なくない現状があります。「困っている子はおいで」と言われると、そこは行きにくい場所になってしまいますが、「誰でもどうぞ」と扉を開いておくことで、困りごとを抱えた子どもや大人、赤ちゃんも高齢者も、地域の誰もが気軽に立ち寄ってつながりを持つことができるのです。
子どもたちにはぜひ近くのこども食堂に気軽に足を運んでみて、同じ地域に住むいろいろな世代の参加者やこども食堂の運営者、ボランティア等と交流することで、視野を広げる機会にしてほしいと思います。そのうえで、こども食堂を地域との関わりしろのひとつとして捉え、主体的に地域と関わるきっかけにしていただけると嬉しいです。
学校の授業では、多くのこども食堂は誰もが気軽に立ち寄りあたたかいご飯を囲んで交流できる「地域の多世代交流拠点」なんだということを、伝えていただけたらと思います。


私たちにもできること

先生や中学生を含めて、私たちに何かできることはありますか?

こども食堂では、小さな子どもたちでも食事の準備や片付けなどのお手伝いをしたり、子どもたちのアイデアからイベントなどの企画が生まれたりと、「支援する側・される側」のような垣根の無い場づくりの事例が多く生まれています。中学生がこども食堂の運営にボランティアとして関わったり、チャリティイベントで寄付を集めたりするなど、中学生発のアイデアを提案し、自分たちでこども食堂を企画するといった活動を通して、地域の課題に気づいたり、地域貢献のきっかけをつかんだりできるのではないでしょうか。
先生方にも是非、地域のこども食堂に足を運んでみていただけたらと思います。むすびえが 2024 年
度に実施した調査によると、全国にこども食堂は10,867 箇所ありますが、民間発の自発的な活動であ
るこども食堂は、運営の仕方もそこに込められた想いもそれぞれ異なります。どのような人がどのような想いでその食堂を運営しているのかを知っていただくことで、授業で取り入れる際の参考になるのではないかと思います。


これからのこども食堂について

今後の展望などがあれば、教えてください。

最初のこども食堂が開かれたとされる 2012 年から今年で 13 年目になり、全国に広がったこども食堂の数は 1 万箇所をこえました。これは全国の中学校数よりも多い数ですが、約 2 万ある小学校の数にはまだ届いていません。私たちむすびえとしては、「小学生の子どもでも歩いて訪れることができるように」と、全小学校区にこども食堂がある社会の実現を目標に掲げています。こども家庭庁も「こども
まんなか」の地域づくりの後押しをしており、今後もこども食堂などの地域の居場所は、孤独・孤立
対策や様々な課題の予防・解決に結びつく活動として広がっていくことと思います。
また、文部科学省は答申のなかで「教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、
その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること」をうたっており、教育課程において地
域が果たす役割の可能性が示唆されています。全国に広がるこども食堂と、地域に開かれた学びの実
現を目指す学校とがつながり合い、子どもたちの学びや社会貢献意識の醸成、「こどもをまんなかに置
いた地域づくり」が実現されるよう、私たちむすびえとしても尽力していきます。

▼こども食堂・学校架け橋プロジェクト 
https://musubie.org/news/10699/

宮 由衣(みや ゆい)さん
認定 NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂・学校架け橋プロジェクト」担当

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