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現在、多くのクレジットカード会社では「高校生を除く18歳以上」を申し込みの対象としています。
電子マネーや二次元コードでの支払いに紐づけたり、簡単にネット通販の決済ができたり、デジタル化された社会において、クレジットカードは生活必需品です。
高校生のみなさんも「卒業したらクレジットカードがほしい!」と考えているはずです。
一方で、お金の使いすぎや悪質商法に巻き込まれるなど、クレジットカードの所持にはリスクも伴います。
クレジットカードを持つ前に、家庭科の「消費生活」の授業で、慎重な意思決定や、利用に当たっての留意事項を指導しておけると安心ですね。
今回は、人気の家庭科副教材『家庭科55デジタル+』を活用した消費者教育の授業展開例を、神奈川県立秦野総合高等学校の長岡樹先生に教えていただきました。
目次
本校は、自分で科目を選んで履修計画を立てる(単位制総合学科)、部活動で県上位に入賞するなど、進路や目標に向けて努力する生徒が多い、活気あふれる学校です。
ICT環境は整備されており、端末は生徒1人に1台Chromebookを、学習支援ツールはGoogle Classroomを導入し、全教室で校内Wi-Fiに接続が可能です。
本校では2年次と3年次に家庭総合を履修します。
新しい学習指導要領への移行に伴い、「消費生活」で指導する内容が充実しました。
しかし、「消費生活」は年度末に扱うことが多く、授業時間に余裕がありません。
また、生徒の生活状況によって理解度が異なるというのが実際のところです。
そこで、
①短時間で学習内容の復習ができる
②解説が生徒にとってわかりやすい
③授業で説明しきれない知識も取り入れられる
というメリットから、
『家庭科55デジタル+』の
p.102〜103の内容に対応したデジタルコンテンツ「クレジットカードの使える豆知識」と、
p.104~105「消費のトラブルにあわないために!」
を活用した授業を実施しました。
指導計画
単元「消費行動を考える」(5時間) |
消費行動と意思決定(1時間) |
消費生活の現状と課題(2時間) |
消費者の権利と責任(1時間) |
まとめ(1時間)…本時 |
評価基準
知識・理解 |
|
思考・判断 | 自立した消費者として、生活情報を活用し、適切な意思決定に基づいて行動できるよう、根拠に基づいて論理的に物事を捉え、課題を解決する力を身につける。 |
主体的態度 | さまざまな人々と協働し、よりよい社会の構築に向けて、消費行動と意思決定について、課題の解決に主体的に取り組む。 |
本時は、試験前最後の授業でした。
しかし、入試期間中のため短縮授業となり、復習の時間をどのように確保するかが課題でした。
授業の始めに試験範囲を確認し、そのあとに『家庭科55デジタル+』の試験内容に関連するページp.104〜105「消費のトラブルにあわないために!」を生徒に読んでもらいました。
このページは、代表的な悪質商法の例や若者に多い消費トラブルの例などを解説しており、生徒は興味津々で読み込んでいました。
成年になると自由と引き換えに責任も伴うことは授業でくり返し説明していましたので、生徒どうしで“気をつけなきゃね~”と話し合う様子が見られました。
p.105の資料「若者の消費に関する相談件数」を見て、15〜19歳の女性の健康食品に関する相談件数が多い点を疑問に思った生徒もおり、理由や男性との差について考察させました。
ジェンダーバイアスに関する意見も出て、「青年期・家族」と「消費生活」の分野を越えた深い学びにつながったと思います。
その後、20分間の発展として、デジタルWORK「クレジットカードの使える豆知識」を体験してもらいました。
クレジットカードに関する設問の答えを2択から選ぶクイズ形式のデジタルコンテンツです。
クイズの内容
・預金を含めて手持ちのお金が5万円しかないが、8万円のスマホを買いたい。デビットカードとクレジットカード、どちらなら購入できる? ・クレジットカードを紛失してしまった。警察に届ける?カード会社に連絡する? ・分割払いとリボ払い、手数料が安いのはどっち? ・クレジットカードは18歳になれば誰でもつくれる? ・クレジットカードの4桁の暗証番号はどうする? ・PayPayは非接触型IC決済とQRコード決済のどっち? |
生徒が誤りがちな行動や情報が含まれており、簡単には正解にたどりつけないようになっています。
他の人の意見や考えを聞くために、周囲と相談しながら回答するよう指示しつつ、モニターにもデジタルコンテンツの画面を投影して1問ずつ進めました。
一度授業で説明していても、頭から抜け落ちていそうな知識を問う設問もあり、よい復習になったと思います。
回答後に表示される解説には、教科書には掲載していないけれど、何かあったときのために知っておきたい知識が簡潔にまとめられており、限られた時間でも深い学習ができました。
最後に、デジタルコンテンツを体験した感想を入力させ、授業をまとめました。
・自分はカードを使いたいと思うけど、カードで払うのは不安という人もいて、だからいろんな支払い方があるんだなと思った。買うものによって現金にするかカードにするか考えて使いわけれるようになるといいなと思った。
・分割払いやリボ払いはクレジットカードの強みであると同時に、一度に高額なものを買いすぎると手数料などが高くなりすぎるので注意しなければならない。
・クレジットカードを紛失してしまった場合に、今タッチ決済などで簡単に使われてしまう可能性があるから、便利だけれど怖いと思ってる。
・現金払いと違ってお金が減っていく感覚が少ないため、カードの使い過ぎには注意したい。
・現金はどこでも使えるが、クレジットカードは使えないところもあるから両方できるようにしておかないといけないと思います。
・カードはほぼ無限に使えてしまうので、自分だったらめっちゃ散財してしまいそう。ちゃんと考えて使える人はいいけど、私は自分が信用できないから、使い方をイメージしてから作ろうと思う。
・カードは使った金額がわかりにくいことから、使いすぎてしまう気がする。アプリとかいれて管理する方法もいっぱい知っておくと、失敗なくいけると思いました。
成年年齢の引き下げに伴い、自由の幅が広くなることを楽しみにしている生徒はたくさんいます。
一方で、負わなければならない責任や主張できる権利についての知識は、まだまだ浸透しきれていないと感じることがあり、授業を工夫していかなければならないな~と日々試行錯誤しています。
教育図書のデジタルコンテンツは、実生活で起こりうる状況が再現されたものが多く、生徒も想像しやすいため、今後も積極的に使っていきたいです!
長岡先生、ありがとうございました!
資料集+食品図鑑+デジタルコンテンツ
『家庭科55デジタル+』
定価721円(本体655円)
コード番号:1047170-01
仕様:AB判、208ページ