災害はいつでも起こる、家庭科で育てる「備える力」

最近、地震、豪雨、台風、土砂災害など、全国各地で自然災害が発生しています。7月に発生した熊本地震では、地震による被害だけでなく、断水や停電、道路の寸断、避難生活の長期化など、被災後の暮らしに関わるさまざまな課題が明らかになりました。
災害は、いつ、どこで起こるか分かりません。だからこそ、生徒たちが災害から身を守る知識を身につけるだけでなく、限られた物資や情報の中で、自分や家族の生活をどう守るかを考える学びが必要です。
衣食住や家族、消費生活について学ぶ家庭科は、災害時の生活を具体的に考えることができる教科です。ここでは、家庭科で防災教育に取り組む必要性を、ポイントごとにご紹介します。
災害は「特別な出来事」ではなく、日常の延長で起こる
これまで防災教育というと、避難経路の確認や避難訓練など、災害発生直後の行動を学ぶことが中心になりがちでした。
もちろん、身を守るための初動は重要です。しかし、実際の災害では、揺れや雨が収まった後も、停電、断水、通信障害、交通機関の停止などが続くことがあります。
生徒たちには、次のような問いを通じて、災害を自分の生活に結び付けて考える機会が求められます。
・家の中で安全な場所はどこか
・電気や水が使えないとき、どのように過ごすか
・家族と連絡が取れないとき、どう行動するか
・避難所に行くのか、自宅で避難生活を送るのか
・自分の家庭には、どのような備えが必要か
防災を「災害が起きたときだけの学習」にせず、日常の暮らしを見直す学習として扱うことが大切です。
命を守るだけでなく、被災後の暮らしを支える力が必要
災害時には、避難することだけが課題になるのではありません。被災後の生活をできるだけ安全・健康に継続することも重要です。
例えば、次のような生活上の課題が考えられます。
・水や食料をどのように確保するか
・非常食をどのように組み合わせるか
・乳幼児、高齢者、食物アレルギーのある人に何が必要か
・断水時の調理や衛生管理をどうするか
・着替えや洗濯ができないとき、衣類をどう工夫するか
・避難所や自宅で、健康を保つには何が必要か
これらは、家庭科で学ぶ食生活、衣生活、住生活、家族・家庭生活と深く関わっています。
防災教育を通して、生徒が「避難する力」だけでなく、「災害後も暮らしをつないでいく力」を身につけることが期待されます。
家庭ごとに必要な備えは異なる

災害への備えは、すべての家庭で同じとは限りません。
家族の人数や年齢、健康状態、住んでいる地域、ペットの有無、食物アレルギー、外国につながりのある家族の有無などによって、必要なものや対応は変わります。
例えば、高齢者がいる家庭では移動や服薬への配慮が必要になる場合があります。乳幼児がいる家庭では、ミルクやおむつなどの備蓄が欠かせません。障害のある人や、支援を必要とする人がいる家庭では、避難方法や情報の受け取り方を事前に考えておく必要があります。
こうした違いに目を向けることは、多様な家族のあり方を学ぶ家庭科の学習にもつながります。
「防災グッズをそろえましょう」と一律に伝えるのではなく、 「自分の家庭にとって必要な備えは何か」を考えさせることが、防災を自分ごとにする第一歩になります。
災害時には、自分で判断して行動する力が求められる
災害時には、常に大人から指示を受けられるとは限りません。自宅に一人でいるとき、登下校中、外出先、家族と離れているときなど、さまざまな状況で自分で判断しなければならない場面が想定されます。
そのためには、知識を覚えるだけでなく、状況を想像し、複数の選択肢からより安全な行動を考える学習が必要です。
例えば、次のような課題が考えられます。
・大雨で避難情報が出たとき、いつ、どこへ避難するか
・家具が倒れたり、ガラスが割れたりした場合、どう行動するか
・SNSで不確かな情報を見たとき、何を確認するか
・家族と連絡が取れないとき、どのような方法で安否を確認するか
・避難所で他者と生活するとき、どのような配慮が必要か
映像、ワークシート、グループワーク、製作実習などを取り入れることで、生徒が考え、話し合い、行動に結び付ける授業をつくることができます。
防災は「自助」だけでなく「共助」「公助」を学ぶ機会になる

災害時には、自分や家族の安全を守る「自助」に加えて、地域で助け合う「共助」、行政や公的機関が支援する「公助」も重要です。
避難所では、年齢や性別、障害の有無、文化的背景などが異なる人々がともに生活することになります。限られたスペースや物資を分け合いながら、誰もが安心して過ごせる環境を考えなければなりません。
家庭科では、次のようなテーマを扱うことができます。
・避難所で必要なルールや配慮
・要配慮者や乳幼児への支援
・食物アレルギーや宗教上の理由に配慮した食事
・プライバシーや衛生を守る工夫
・家族や地域でできる助け合い
防災教育は、命を守る学習であると同時に、他者と協力して生活をつくる力を育てる学習でもあります。
家庭科では、体験を通して防災を学ぶことができる
防災について学ぶ際には、資料を読んだり映像を見たりするだけでなく、実際に手を動かす活動が効果的です。
家庭科では、例えば次のような体験的な学習が可能です。
・非常食を活用した献立づくり
・限られた水や熱源を想定した調理
・防災ポーチや防災グッズの製作
・家庭内の危険箇所の確認
・防災用品の優先順位を考える活動
・災害時の暮らしを想定したロールプレイ
・家族向けの防災計画づくり
「何を知っているか」だけでなく、「何ができるか」「どのように工夫するか」を学べることは、家庭科における防災教育の大きな特長です。
教育図書の防災教材
防災教育副教材(無償提供)


万が一の災害から身を守るためには、平時からの備えが重要です。防災副教材は生徒たちとその家族、そして地域の安全・安心を守るための一助として作成したものです。
中学生向け、高校生向けの両方を用意しており、中学生向けは「日頃からどのような備えが必要か?」、高校生向けは「安全な住まい」と「社会との共生」を意識してワークシートを編集しました。
どちらも家庭科の一時限(約50分)で完結するプログラムになっており、授業で実践しやすいように教師用の手引き、ICT教育への対応を踏まえて、パワーポイント版教材も用意しております。
教材はいずれも一般社団法人日本損害保険協会から無償で提供しており、下記応募フォームから応募可能ですので是非ご活用ください。
刺し子の防災おまもりポーチ

日本の伝統技法「刺し子」で丁寧に仕立てた、あなたと家族を守るおまもりポーチです。
被服実習と防災教育を組み合わせられるため、家庭科ならではとして取り入れやすい点が特長です。
刺し子は、一針一針に「丈夫であるように」「災いから守られるように」という祈りを込めて布を刺し重ねる技術。かつて東北の人々が厳しい自然と向き合いながら、着物を長持ちさせるために生み出した知恵でもあります。その精神は、現代の防災意識にも通じるものがあります。
実習後には、いざという時に役立つ備えの絆創膏、携帯用の笛、常備薬などポーチに入れるものを考える活動を加えることで、生徒一人ひとりが自分に必要なものを考えることで、防災を自分の生活に関わる課題として、より実践的な学びになります。
シールで学べる防災

「災害が起こったときに備えて,どんな防災グッズをそろえたらいいの?」「災害が起こったら,どんなものを持って避難したらいいの?」命にかかわる防災教育の必要性は近年とくに増してきています。
この教材では,イラストを見ながら防災グッズをチェックしたり,シールを貼ったりしながら,災害への備えについて短時間で学ぶことができます。
使い方の動画はこちら
【セット内容】
●家族・防災グッズシール(B5判)1枚
●ワークシート(B5判カラー8ページ/蛇腹折り)1部
●備えチェックカード(B5判)1枚
NHK DVD教材
災害から命と暮らしを守る

教育映像祭優秀作品賞受賞
日本におけるさまざまな自然災害を 取り上げ、いつどこで被災するかわからないことを理解し、日頃の備えの大切さを学びます。また、起こっ てしまった際の対処法について、自助・共助・公助の観点から見ていきます。
・DVD約20分
・解説書、ワークシート付き
サンプル視聴はこちら
●主な内容
・地震の被害とその備え
・さまざまな災害とその備え① ~津波、火山災害から
・さまざまな災害とその備え② ~気象災害~
・災害への日頃の備え (自助・共助・公助/ハザードマップの活用/災害時の備蓄品・非常持ち出し品)
これからの防災教育は、命を守るための判断力、被災後の生活を維持する力、家族や地域と協力する力など、日々の暮らしに根ざした実践力が求められています。
家庭科は、食事、衣類、住まい、家族、消費生活など、生徒の生活に直結する内容を学ぶ教科です。だからこそ、防災を特別なテーマとして扱うのではなく、普段の学習と結び付けながら、具体的に考え、手を動かし、行動につなげることができます。
今回ご紹介した教材を活用しながら、生徒たちが「自分や家族の暮らしを守るために、今できること」を考える授業を始めてみませんか。




