効率や正解を求める時代だからこそ、「心の余裕」を育むコミュニケーショやマナーを

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〜タイパ主義・生成AIの普及・多様化する社会で、他者と良好な関係を築くための視点〜

効率やタイパ(タイムパフォーマンス)が強調され、生成AIをはじめとするデジタルの台頭によって、人と人との直接的な関わり方が大きく変化している現代。多様な価値観が交錯する中で、「どのように他者と向き合えばよいのか」「コミュニケーションやマナーの正解とは何か」と不安を抱える若者が増えています。

そこで今回は、NPO法人 日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお尋ねし、2023年に立ち上げられた「コミュニケーションマナー検定」誕生の背景や、現代の教育現場が抱える課題、そして変化の激しい時代だからこそ必要な「心の余裕」と「自分らしいコミュニケーションのあり方」などについて、お話を伺いました。

コミュニケーションやマナーとは?改めて本質を捉え直す

コミュニケーションもマナーも人によって受け止め方は様々でしょう。そこで当協会では、「コミュニケーションとは社会生活を営む上で、意思や感情、情報などを互いに理解し、共有すること」とし、さらに「マナーとは、社会生活をスムーズに営むための互いの思いやりや配慮のこと」と定義しています。
他者とより良い関係性を築くという目的においては、マナーもコミュニケーションも同じですが、そのアプローチには少し違いがあるでしょう。

  • コミュニケーション: 内面的な気持ちや感情を互いに伝え、理解することにウエイトを置くこと。
  • マナー: 社会の中で脈々と培われてきた習慣やしきたりを通じて、相手への敬意や自分を律する気持ちを、言動で表すこと。

このように整理してみると、「コミュニケーション」や「マナー」の本質を理解することができるのではないでしょうか。

ステレオタイプからの脱却と「目の前の相手」に向き合う姿勢

かつての日本は、島国であることで同質の文化や価値観が共有されていた社会でした。しかし現代は、グローバル化の影響のみならず、日本人であっても世代や環境により多様な価値観が存在するようになりました。

こうした多様化が進むなかで陥りがちなのが、「日本人だから」「外国人だから」「男性・女性だから」といった、国籍や性別、年齢といったステレオタイプ(属性や集団)による決めつけではないでしょうか。歴史的経緯からも、日本人はややもすると集団の属性で人を判断しやすい傾向があるように感じています。

しかしこれからの時代に必要なのは、属性というフィルターを外し、「目の前にいる相手にフォーカスした関係性を築くことが」です。相手を一人の人として捉え、個別の背景や感情を理解しようとする姿勢こそ、真の人間関係を築く第一歩となるはずだからです。

また、コミュニケーションにもマナーにも「正解」はありませんが、多様な価値観が存在する時代には、相手や状況による判断力が、より一層求められます。私も、非常勤講師として学生の指導に携わっていますが、若者の間では早く答えを知りたがる傾向があるようです。しかし、人との関わり方には決まった答えはありません。だからこそ、相手とどのように関係性を築いていくかを模索することが大切なのです。
さらに、相手の考え方や行動を変えることは容易ではありませんが、自分自身を変えることはできます。まずは自分のコミュニケーションスタイルを見直してみることから始めてみましょう。

変化の早い世の中、タイパの今こそ欠かせない「心の余裕」

現代社会は変化が早く、あらゆる場面で「効率」が求められ、「タイパ」を気にする人が増えています。こうしたせわしない時代の中では「早く処理すること」が重視される傾向が広がっているようで、この風潮を個人的に危惧しています。

なぜなら人間関係において信頼を築くポイントは、「しっかり相手に向き合い、落ち着いて人と接する姿勢」にあると思うからです。「この人は自分を理解しようとしてくれている」「良い関係を築こうとしてくれている」という安心感は、時間をかけて培われるもので、タイパを重視する姿勢からは生まれません。

相槌を打つ、共感の言葉をかける、表情を合わせるといった傾聴スキルも相手への理解を示す上では有効です。しかし、そうしたテクニカルなこと以上に、相手の話をしっかり聴くことができる「心の余裕」こそが大切ではないでしょうか。心に余裕がなければ、相手の言葉をきちんと受け止めることもできないからです。 「心の余裕」こそ、信頼関係を築く上で不可欠な要素でしょう。

否定されたり、認められないと、相手に対して攻撃的な言動をとったり、自らの正当性ばかりを主張する人がいますが、その背景には過剰な自己防衛本能が働いているようです。そこに心の余裕はありません。少しでも相手に配慮する余裕があれば、なぜこうなったのだろうかと客観的・ポジティブに捉え直すことができますが、余裕がないと相手の言葉をダイレクトに「攻撃」として受け止めてしまい、結果として過剰防衛的な自己主張をします。そしてその結果、実は自分自身も傷ついてしまうのです。

生成AI時代における「リアルな人間関係」の意味

教育現場ではSNSなどメディアリテラシーの指導が進められていますが、現在新たに直面している課題が生成AIの普及による対人コミュニケーションへの影響ではないかと思っています。

生成AIは非常に便利で、問いかければいつでも心地よいメッセージや肯定的な答えを返してくれます。その結果、若者がリアルな人間関係の煩わしさを避け、バーチャルな対話空間へ没入してしまうのではないかと懸念しています。

「面倒な関わり」を通じて心が鍛えられる

実社会の人間関係には、意見の食い違いや批判に直面することも多く、厄介なことばかりです。心地よい答えしか返さないバーチャルな世界に逃げ込みたくなる気持ちはわからないではありませんが、リアルな現実の中で、時には否定されたり、あるは褒められたりといった経験を積むことこそ、人の心を強く鍛えます。

自分に対するポジティブではない評価や経験も、心の“余裕と強さ”をもつことで、人生の糧へと変えていくことができるのではないでしょうか。

コミュニケーションマナー検定の役割

コロナ禍以降、若者の「コミュニケーション能力」が低下していると言われ、また、多様な社会では、正しいマナーがわからない、というような声も聞こえます。

しかし、そうした時代だからこそ、コミュニケーションを見直し、日本社会で受け継がれてきた慣習や礼儀作法について知ることは、何よりの自信になるのではないかと思っています。そこで開発されたのが「コミュニケーションマナー検定」で、若い方にも興味をもってもらいやすいようにイラストや動画も入れています。これらを通じて、自分自身のコミュニケーションスタイルやマナーを見直す機会になれば幸いです。

また教育現場でも「こうした内容は大切だから教えたいけれど、授業計画にどう組み込めばいいか」と模索していらっしゃることでしょう。「コミュニケーションマナー検定」はテキストに加えて、実際の演習に活用できる「WORK BOOK」、さらに「指導の手引き」や「確認テスト」も用意していて、授業で活用していただきやすくなっています。検定に合格することで、学習の成果が履歴書にも書け、それによって自己肯定感も高くなるのではないでしょうか。

コミュニケーションマナー検定

最後のメッセージ:自分を信じ、人間関係を恐れないで欲しい

現代の高校生や大学生の多くが「自信がない」「将来が不安」「失敗をしたくない」という思いを強く抱えているようです。失敗を恐れるあまり、主体的に挑戦することや、親しい人以外の人との関わりを避けてしまう傾向も見られのではないでしょうか。

しかし実は、失敗こそが最大の学びの機会です。「失敗した後にどう対処するか」を考えるプロセスこそが成長に繋がります。

やりたいことや目標を明確に持っている生徒や学生は、それに向かって頑張ればよいでしょう。しかし大半は、まだやりたいことや自分の将来がイメージできていないように思います。私はそのような学生には、「まずは目の前のことをしっかりきちんとやってみましょう」と伝えています。「その姿勢があれば、日々の蓄積によって自ずと自分の道が拓け、目標も見えくるからです。

社会に出たら、人と関わらずに暮らすことはできません。そしてどんな場合も力になってくれるのは、周囲の人です。「コミュニケーション」や「マナー」を学ぶことは、少なくとも人との関わり方に自信がもてるきっかけになるのではないでしょうか。

コミュニケーションマナー検定概要説明会のご案内

よりよい人間関係の構築、主体性や対人スキルの育成、キャリア教育の一環としてご活用いただける「コミュニケーションマナー検定」についてのオンライン説明会を開催いたします。

日時: 8月27日(木曜日)13:00~13:30

概要だけでなく、事例や教材の紹介など、現場に即した内容をお伝えいたします。是非お気軽にご参加ください。

特定非営利活動法人 日本マナー・プロトコール協会 理事長

明石伸子

青山学院大学経済学部卒。日本航空で客室乗務員として勤務し、退職後、大手派遣会社にて役員秘書 を務める。 その後、女性向けマーケティングやCS研修、エグゼクティブ向けイメージトレーニング等を展開する。2003年にはNPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、2012年に理事長に就任。文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」の運営のほか、教材開発、講演、著作等を通じ、マナー・プロトコールの普及・啓発に精力的に取り組んでいる。

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