【公民科×家庭科】「18歳成年」授業事例案 〜大人になるとは?〜
高校家庭

民法改正により18歳へ成年年齢が引き下げられ、公民科と家庭科で消費者教育などを担うことになりました。成年になるとアパートの貸借、クレジットカードの作成、進学や就職などの進路決定、さらに結婚についても自分の意思で決めることができるようになります。
消費者教育だけではなく、キャリア教育や、人生設計、経済教育なども含む必要があります。
公民科は私たちが生きる今の社会を見つめ、その枠組みや制度を知り、よりよい社会の構築を目指します。家庭科は自分の生活を見つめることから始まって、これからの人生を考え、自分らしいライフスタイルを目指します。
公民科と家庭科ではたくさんの内容が相互に関わっており、先生同士がコミュニケーションを図ることにより、「ここは公共で、ここは家庭科で」という棲み分けができます。棲み分けによってお互いの負担を軽くし、効率的に授業を進めることが可能となります。
この春発行した『高等学校公民科×家庭科コラボによる「18歳成年」教育教材の開発」』から公民科と家庭科が「コラボ」するためのヒントの授業事例案を5回に分けて紹介します。
「公民科、家庭科とコラボをしたい」「外部専門家を招きたい」と考えている先生は、ぜひお読みください。
第1回:大人になるとは?

公民科の学習指導要領では、「公共」の内容A「公共の扉」、「倫理」の内容A「現代に生きる自己の課題と人間としての在り方生き方」において、「人間としての在り方生き方」等の記載があり、「大人になるとはどのようなことか?」に関係する学習内容が取り上げられています。また、家庭科では、「家庭基礎」、「家庭総合」の内容A「人の一生と家族・家庭及び福祉」において、「生涯の生活設計」等の項目の中で、「大人になること」が取り上げられています。そして、「大人になること」を考える際、両教科とも「自立」することが求められており、「自立」が学習のキーワードの一つとなっています。
授業事例①
大人として他者とどのように向き合うべきか
「大人として生きる」ということを考える際、多くが様々な面で「自立」することである。しかし、家庭生活や仕事など様々な面で過度な「自立」が強調され、それが人々の生きづらさや将来に対する不安へとつながっていることもあります。実際、生徒たちが持つ「大人」のイメージも「自己責任」「自分でできるようになる」といった他者に依存しない・頼らない「自立」のイメージが多く、そのことから「大人になんかなりたくない」という思いを持つ生徒もいます。
そこで本実践では「大人として他者とどのように向き合うべきか」をテーマとして、過去の賢者の思想をヒントにしながら、「自立」という概念の本質とその限界について生徒たちと議論をしながら、多角的に考察する授業を考案します。
授業設計
1時間目

1時間目では、資料とワークシートを使い、資料の 3つの事例に登場する人物の「他者との向き合い方」を比較して、生徒がそれらの人物について大人であると考える順に順位をつけ、生徒同士で意見交換しあうことで、それぞれが考える大人像を明確化します。
Q1:大人って何だろうか?自分の考えを自由に述べてみよう。
Q2:大人として他者と向き合うにはどのようなことを大切にすればいいのだろうか?資料を参考に考えてみよう。
Q3:A〜Cの事例に登場する人物について「大人である」と思う順に順位をつけてみよう。
資料及びワークシート
資料(事例)

ワークシート1


2時間目

2時間目では、生徒と共に資料(事例)を読み解きながら、A〜Cの言動の背景にある価値観を解説していきます。
それぞれの人間観(過去の賢者の思想)を紹介し、それを参考にしながら改めて「大人として他者とどのように向き合うべきか」を考えさせ、1時間目の最初と最後で生徒自身の大人像が変わったか、あるいは変わらなかったか、また、その理由を自らで振り返りを行い、考察を深めます。
Q1:解説の内容を踏まえたうえで改めて、A~Cの事例に登場する人物を大人だと思う順に順位をつけてみよう。
Q2:授業の内容を踏まえて、改めて「大人」ってなんだろう?自分の意見を自由に書いてみよう。
Q3:1時間目の最初に書いた「大人と何か?」についての自分の意見とQ2の意見を比べてみて、自分の考える「大人」が変わった理由(あるいは変わらなかった理由)を、授業内容を踏まえてまとめてみよう。
ワークシート2

生徒の感想(ワークシート2の問3より)

成果とまとめ
自分自身が大人として他者とかかわりながら生きていく上で必要とされる見方や考え方にはさまざまなものがあり、最適解はあるかもしれないが唯一無二の正解はないという気付きを得た生徒もいました。
1時間目のジグソー法では、活発な対話が行われ、生徒たちは対話を通じて人によってどの価値観を重視するのかが異なること、そのような絶対的な差異を持つ他者とこれから大人として関わりあっていくことなどに気づいていく様子が見られ、2時間目の解説の中ではギリガンの思想にハッとさせられた生徒も多く、「なんか難しいけど、大人になるからといってそんなに緊張したり、固くならなくていいんだ」と声をかけてくれた生徒もいました。
その一方で、「自分自身がどう生きるか」という視点に偏りすぎたのではないかという印象もありました。実際に彼らが大人として子育てや介護、仕事や日常生活での困難に直面した際に「他者を頼ってよいという気持ちになること」と、「実際に他者を頼ることができる(あるいは頼る能力や環境、社会制度がある)か」は別問題であるからです。
「自分自身がどう生きるか」という視点だけでなく、「他者に頼りやすい環境や社会制度をどのように我々自身が市民として形成していくか」という視点を生徒が持てるような授業を実践していく必要もあります。





