【公民科×家庭科】「18歳成年」授業事例案 〜消費者の責任〜

高校家庭

民法改正により18歳へ成年年齢が引き下げられ、公民科と家庭科で消費者教育などを担うことになりました。

公民科は私たちが生きる今の社会を見つめ、その枠組みや制度を知り、よりよい社会の構築を目指します。
家庭科は自分の生活を見つめることから始まって、これからの人生を考え、自分らしいライフスタイルを目指します。

公民科と家庭科ではたくさんの内容が相互に関わっており、教員がコミュニケーションを図ることにより、「ここは公共で、ここは家庭科で」という棲み分けができます。棲み分けによってお互いの負担を軽くし、効率的に授業を進めることが可能となります。

この春発行した『高等学校公民科×家庭科コラボによる「18歳成年」教育教材の開発」』では公民科と家庭科が「コラボ」するためのヒントの授業事例案を紹介しており、その中から再編集したものを5回に分けて紹介します。

「公民科、家庭科とコラボをしたい」「外部専門家を招きたい」と考えている先生は、ぜひお読みください。



第3回:消費者の責任  〜消費者すごろく〜

公民科、家庭科ともに、高校生が当事者として消費行動が社会に及ぼす影響を自覚して持続可能な社会の形成に参画する「消費者市民」の育成が求められています。

そこで、今回の授業は18歳成年を踏まえ、これから社会人として消費者だけでなく、労働者、投資家にもなりグローバルな社会で生きていく高校生にとって、消費者の責任を理解して「消費者市民」を育成することは欠かせない視点であると考え、「消費者すごろく」教材に改善を加えて高校の家庭科と公民科「公共」において授業をしました。「消費者すごろく」は、ロールプレイングで「A 生産者」「B 製造者」「C 販売者」「D 消費者」の役割になってすごろくを進め、実際に起こった社会問題やアクシデントを当事者の立場で影響を実感することができるゲームとなっています。

すごろくのルール

  • 1グループ4人で、座席で割り当てられた役割(A,B,C,D)になってプレイします。最初に割り当てられている初期ポイントを4人に配ります。
  • コマは自分の消しゴムなどを利用してください。
  • サイコロを振ってコマを進めていきます。止まったコマの指示に全員が従います。(例えば、C の人が「Dはフェアトレードのコーヒーを買った。AとB:+10、C:±0、D:-10」というコマに止まったとしたら、AとBはBANK から10ポイントもらい、DはBANKに10ポイント戻します。「止まった人」と明記されているマスについては、止まった人が指示に従います。 ただし、止まった人が引いた「?カード」に書かれている指示は、全員が従います。
  • 「?カード」は、引いた人が声に出して読み上げます。クイズ形式になっているものもあるので、うっかり答えまで読んでしまわないように気をつけましょう。
  • 「サイコロの目に関わらず全員STOP!」のマス目では、通った人が止まり、サイコロの目で、その人の「お給料」と「生活費」が決まります。
  • ポイントは、+のとき BANK からもらいます。-のときBANKに戻します。ポイントのやりとりはすべてBANKと行います。人と人とのやりとりはありません。
  • 手持ちのポイントが 0 やマイナスになったらそのプレイヤーは破産してゲームオーバーです。
    →ゲームオーバーになった人が出たら、全員が振り出しに戻り、最初からスタートします。


授業事例③ 〜家庭科編〜

家庭基礎の「衣生活」のまとめの位置に『消費者すごろく』を実施することを考案しました。「衣生活」では消費者にとって必要な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成を図りつつ、総括的に「消費生活・環境」の「持続可能なライフスタイルと環境」の要素を学習することが少なくないため、その終盤の教材として『消費者すごろく』を使用します。


授業設計

1時間目

1時間目は「『消費者すごろく』の実施とふり返りにより、消費者と生産者・製造者・販売者との立場の違い、利害の違いを擬似的に体験し、 4者間の関係をとらえ直すことを可能にしました。

ワークシート1

ワークシートはこちら

2時間目

2時間目はドキュメンタリー映画『The True Cost』(2015) を視聴し、プリントを参考に協議することで、ファストファッションの問題点などを知り、持続可能な消費を踏まえて消費者の責任を考えられるようにしました。

The True Cost

ワークシート2

ワークシートはこちら

3時間目(25分間)

3時間目(25分間)は各自の回答内容を反映したシートによって学びの変容をふり返りながら、あらためて消費者の責任について再考できるようにしました。
プリントは、本分科会で作成したプリントに授業者が若干のアレンジを加えた上、ひとり 1 台端末(スマートフォンでも可能)を活用し、生徒のフォームへの回答を授業者が集約し、次時に回答傾向を提示するという形にしています。


生徒の感想(抜粋)



成果とまとめ

「すごろく」というゲーム自体とその後の協議、『The True Cost』の視聴とその後の協議を経て、紋切り型の記述から現実を念頭に置いた記述へと変容してきている様子がうかがえます。一方、記述回答全件をテキストマイニングし、 1時間目冒頭と 2時間目最後との頻出語・KWIC コンコーダンスを比較してみると、「考える」( 例:「何も考えずに」「考えて行動する」)、「知る」( 例:「現状を知る」) といった動詞の使用頻度(使用者)が増加しました。
単なるゲーム理解に留まる回答は少なく、立場の違いによる利害対立、さらに、自らの消費が社会・環境に及ぼす影響にまで広範に考察しているものまで多岐にわたった。一連の授業を経ることで考えが深化したと想像されます。



授業事例④ 〜公共編〜

まず、『消費者すごろく』での 4者の立場を、利潤追求を目的とする生産者側の視点で説明します。

  • 衣料品が商品化され販売される流れは、左を上流として右側に流れるバリューチェーン(価値連鎖)で考える。
  • Xが最上位の支配構造で、立場が弱い(破産しやすい)順にABCDとなる。
  • Xの立場は「すごろく」に登場しないが、サプライチェーンの源流となる企画・デザインとは何かまで考えが及べばその存在に気付けるだろう。「つくる責任」の原点を考えさせたい。さらに、そこで他社のデザインを模倣し知的財産権を侵害しているようでは、そもそも公正とはいえない。
  • この衣料品の流れは代金との交換により成立するので、最終的に支払う消費者がその原動力となる。消費はその企業等への支持とする「買い物は投票」という意味で考えると「消費者の責任」は大きい。
  • 一方で、企業による衣料品の供給があるからこそ、需要が生まれるので「つくる側」の責任も大きい。
  • 商品代金の支払いはDからCで止まる。ABは生産量に応じて支払われ、最終売上とは無関係である。
  • AとBが直接取引ではなく現実には仲介者が入り、全体を見渡せる存在はXのみである。
  • 環境負荷の面では、衣料品は日本で約29億着が販売され約15億着が売れ残り廃棄される。
  • スマイルカーブとして示されるように、上流の企画デザインや、下流の販売では付加価値が大きい。  X:企画デザイン  A原料生産者や、B製造者は、付加価値が小さいので結果として給与も低くなる。


授業設計

1時間目

ワークシート1

2時間目


ワークシート2

ワークシートはこちら


生徒の感想(フィッシュボーンチャート記入事例)



成果とまとめ

「公共」で経済理論として学ぶ完全競争市場は、同一商品に対して需要と供給により市場価格と取引数量が決まる。ところが、衣料品は同一ではないし、一見同じような商品も製造工程が異なる。製造工程は現地の労働力に支えられるが、その労働力は公正な労働市場で取引されたものだろうか。
まず気付いてもらうという目標では、『消費者すごろく』で「つくる責任」「つかう責任」の双方から考え、生徒が特性要因図を活用することで達成できたと思われます。

「消費者市民社会」の実現に向けて何ができるかを、生徒に「家庭科」とリンクして考えさせ、「公共」の授業で、探究学習として「家庭科」とも深くつながることを周知する必要があります。図解して終わりではなく、何ができるかという SDGs12を再考させたいと願います。


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