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家庭科 NEWS

コロナ禍の被服実習授業「エコバッグを手縫いで制作」

 

昨年より続くコロナ禍で、さまざまな実習授業が実施できず生徒の学びに不安を覚えている家庭科の先生は多いのではないでしょうか。
本記事では、茨城県の岩瀬日本大学高等学校の佐藤先生が実践した被服実習についてレポートします。

教材は「シンプルエコバッグ」という、あらかじめ半縫製されている被服用教材になります。

教室での密を避けるため「ミシン」ではなく「手縫い」で実習

岩瀬日本大学高等学校では,早くからSDGsに取り組み、さまざまな教科や学習で取り込んでいます。とくに家庭科は環境問題、福祉や介護、消費者教育、ジェンダー平等などさまざまな分野がSDGsの掲げる目標と関係しています。そこで今年度の被服実習では、今や買い物の必須アイテムとなったエコバッグ(マイバッグ)を制作することになりました。
ただしコロナ禍であることから、台数に限りがあるミシン縫いは密になりやすいためできません。そこでミシン縫製済み以外の箇所を手縫いで製作してもらいました。あえて手縫いで作ることで、基礎縫いの学習ができることはもちろんですが、手作りの楽しさ、物への愛着などさまざまな学びが生まれました。生徒の感想も掲載していますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

製作の手順

1.ポケットを作る(布地色:ストライプ赤白)

端から1㎝を本返し縫い

 

2.ボタン、スナップを付ける(布地色:ストライプ赤白)

 

3.ポケットを本体に付ける

 

4.本体の両端を縫う(布地色:チェック紺緑)

裏に返し、1.5㎝のところを本返し縫い。

 

5.   ワッペンや刺しゅうを付けて完成(布地色:チェック紺緑)

以上の手順で7時間を要しました。

 

学習内容としては
A.しつけ B.本返し縫い C.半返し縫い D.まつり縫い E.スナップ付け F.ボタン付け G.かんぬき止め(かぎ止め) H.アイロン掛け、などです。
ミシンで制作した方が簡単で時間もかかりませんが、手縫いで作ることで、基礎的な縫製技術を改めて、しっかり学ぶことができました。

指導のポイント

・綿の生地は薄手のため、アイロンをしっかりかけ、しつけをすることが重要です。とくにまつり縫いをするときは、ずれないようにしつけが不可欠です。

 

・ポケットの取り付けで、補強のためのかんぬき止めを行いました。長く使うために必要な処理であることを説明しました。

 

・手縫いの場合、ミシンの「返し縫い」ができません。ほつれやすい箇所は二度縫いを施しました。

 

・バッグに愛着を持たせるためにワッペンや刺しゅうを施すことにしました。ワッペンは教材に付属していません。生徒に100円ショップなどで好きなものを購入してもらいました。

 

作品提出時に自己評価シートに記入してもらいました。生徒はどこが評価の対象となるか自分で理解できるため、とても意義があったと思います。

生徒の感想

以下、実習を終えた生徒の感想を抜粋してご紹介します。

今回、エコバッグを作ってみて、何cmか間をあけてぬいつけることや、場所によってぬい方を変えることにびっくりしました。今まで何かぬいつけるときは、全て同じぬい方でやっていたので学ぶことができて良かったです。

ボタンやスナップの特殊な付け方も学ぶことができたのでこれから活かしていきたい。自分で作ったエコバッグを使用していきたいと思った。

”エコバッグ作りで、採寸や縫うのを一つ一つ丁寧にやる大切さを改めて理解しました。細かく、丁寧に仕上げたので、きちんと完成できて、達成感があり、楽しかったです。”

”中学校の頃にやったボタン・スナップの付け方、まつり縫い、本返し・半返し縫いを使ってやりましたが、覚えているものと、覚えてないものがあり、特にスナップの付け方が何回説明を聞いてもよく分からず、習得するのがとても大変でした。ポケットを本体に付ける工程では、糸が途中で切れて、途中からやり直しになったり、糸がゆるんでしまっているところを直しながらやったりと、とても時間がかかってしまいました。最後のポケットにワッペンを付ける部分では、私が持ってきたのはアイロンで付けるタイプではなかったので、ポケットに直接縫いましたが、それが良いアクセントとなり、とても可愛い花になったので良かったです。最後に、とても大変でしたが、無事完成することができ良かったです。これから日常でたくさん使いエコになるようにしたいと思います。”

学習の成果と反省点

本校では,「家庭基礎,2単位2時間連続の授業」です。「手縫いエコバック」は2単位7時間の製作時間で計画を立てスタートしました。
ボタン付けは3回に分けて実演を行い、順番を待つ間には密をさけるためにボタン付けの動画を配信し,机上で一人一人がスマホで確認ができる体制をつくりました。ここまでは順調でしたが、いざバッグの制作に入ってからポケットの形をつくる工程などで、かなり時間がかかってしまいました。個人差はありますが完成品のイメージが湧かない生徒が多かったように思います。しかし徐々に手縫いでの縫製にも慣れ,後半はスムーズに実習が行うことができました。生徒たちも,手作りの喜びや手縫いでの物づくりに感動していました。

反省点は,生徒の多くが,小中学校で手縫い実習を行っていないため,基本的技術も指導する時間が必要であり,それを含めた実技時間・内容にするべきであると思いました。(7時間では仕上がらない生徒がいたため、夏期休業中補習を行いました。)

最後に,手縫いの場合,布に対して同様の番手糸を使用しましたが,進度が遅く,なかなか美しく仕上がりません。そのことから,途中から刺し子用の糸を使用しました。刺し子用の針も必要ですが,今回は学校で針を用意し使用させました。半返し縫いでも見た目は「ステッチ」を施したように見えるため,アクセントにもなり美しくし仕上がっています。

日頃,生徒たちは,既製のバッグや洋服を使用している生活の中で,ボタンやスナップの他に「手縫い」でも使用物は作れるという体験ができたことは大きな成果だったと感じています。ミシンとは一味違った作品作りができるので、ぜひ「手縫いエコバッグ」を実践してみてください。

〈了〉


シンプルエコバッグ

・綿100%
・半縫製バッグ、ポケット布(ロック加工済)、ボタン(2つ穴)、作り方レシピ付き
・チェック(赤白)、チェック(黒白)、チェック(紺緑)、ストライプ(赤白)、ストライプ(青白)、ストライプ(黒白)の6色展開。
・1040円(税込み)

オンラインショップにて発売中

 


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佐藤 真奈美

茨城県私立岩瀬日本大学高等学校教諭

東京家政大学出身。ICT活用授業や総合学習でSDGsの取り組みやゼミ形態授業に積極的に取り組む。2019年には「LGBT」ゼミを担当し、多様な性を考える会、にじいろ神栖の代表「河野陽介」氏を招き,講演,対談を行うなど精力的に活動している。