コロナ禍で見えた家庭科の役割「ステイホームはまさに家庭科」

コロナ禍で4月9日から全国一斉休校になってしまった今年、学校では何がおこっていたのでしょうか。冬が近づき再び感染者が増加傾向にある今後、学校運営はどうなるのか不安を感じている教員や保護者の方は多いかと思います。

ベテラン家庭科教員としてコロナ禍に対処してきた栃木県立小山西高等学校の岸綾子先生に、家庭科ができること、お話しを聞いてきました。

新入生に会えたのは5月28日

小山西高校では新型コロナウイルス感染症予防対策のため4月7日に予定していた入学式、翌8日の始業式、離任式は通常通りに行うことはできませんでした。そして4月9日から栃木県では県立高校は臨時休校になってしまいました。その後、何度か休校期間は延長され、5月いっぱいまで休校が続きました。

この間、とくに新しく入学してきた1年生とはお互いに顔さえ見ることもできずとても不安な日々でした。なので小山西高校では5月28日から限られた時間で1クラス半分ずつの生徒を分散登校させて、授業の説明会をしました。下のパワーポイントはそのときに1年生を対象に「家庭基礎」の説明会を行ったときに使ったものです。

Stay Home=家庭科

ここで見出しとして使っていますが、「Stay Homeはまさに家庭科」だと私は痛感しました。今年の4月、5月、人々は自由に外出できず家に閉じ込められ、世界中で‟STAY HOME“が叫ばれていました。そして家の中で何ができるか、どのように生活を楽しむかについてみんなが考えていたと思います。お料理やお菓子を作ったり、手芸に凝ったり、普段できない片付けや掃除をしたり、家族とのコミュニケーションを充実させたり、実に多くの人たちがさまざまに生活を工夫し、それをネットやSNSで披露していました。家庭科教員の目からそれを見ながら、「みんなが家庭科をやっている」ようだと思いました。そして改めて家庭科という学問の大切さを噛み締めました。

『おとなドリル』と『自立の話』

さて、学校の話に戻すと分散登校が始まったとはいえ、不安と緊張の日々は続いていたので生徒たちも元気がなく、暗い表情の子どもたちが多かったのがとても心配でした。Stay Homeが続いたせいで、決まった時間に起床できず生活のリズムが乱れていた生徒が多かったと思います。私は教育相談の主任も担当していましたので、生徒たちへ話した内容をまとめたものが下のパワーポイントです。「まずは食事のリズムから取り戻しましょう」と呼びかけました。やはり生活の基本は食事ですから。

次に直面した問題は、1学期の課題と評価でした。ほとんど授業をやっていないので、本当に困ってしまいましたね。とくに家庭科は実習授業が評価のメインですから…。いろいろ考えた末、選んだのが『おとなドリル』『自立の話』という副読本テキストです。

『自立の話』は衣食住の基本がバランスよく学べる32ページのワーク式の小冊子ですが、1年生の自習教材としてはとても使い勝手が良かったんです。

『自立の話』※お問い合わせは教育図書まで

今年入学した1年生は2022年にちょうど18歳になるので、まさに最初の18歳成年になる子どもたちなんですね。だから消費者教育はとくに力を入れてやらなくてはと考えていたので『おとなドリル』も課題として最適でした。これは余談ですけどほかの教科の先生も教材や課題設定に苦労されていて、生徒よりも社会科の先生が『おとなドリル』に一番強く興味を持っていましたね(笑)。

『おとなドリル』

マスク作り

ほかに休校中の課題としてマスク作りをやってもらいました。ただあの時は紙マスクはもちろんですけど、布マスクを作る材料さえ手に入らない状況でした。何とか業者の方に頼み込んでガーゼ布とゴムを人数分手に入れて、自作の作り方プリントを作成して配布しました。とはいえ、やはりまだ何も授業を受けていない1年生ですから、出来ない子もいましたので、もっと詳しく解説したものを写真付きで作りClassiで配信しました。

 

ホームプロジェクト

家庭科にはそもそもホームプロジェクトという学習があります。自分の家庭生活のなかで課題を見つけ、目標と計画を定め実践し、振り返るというものです。こうして説明するのは簡単ですが、ちゃんと実践するのはなかなか難しい。「自分で課題を見つける」という点がポイントで、いわゆるアクティブ・ラーニングですね。幸か不幸か家に閉じ込められ時間はいっぱいあるので、ある意味でホームプロジェクトの絶好の機会でした。家族のために栄養のある料理を作る、家に余っていた布で小物を作るとか、成果は写真で提出してもらいました。それぞれ自分で考えて工夫して取り組んだものが多く嬉しかったですね。

これからの家庭科

今、学校はかなり平常時に戻ってきました。コロナ禍でできなかった授業を少しずつ取り戻しているところです。12月からは調理実習もクラスを半分に分けて実施する予定でいます。ただし最近、感染者数が急増しており、当分の間withコロナが続くことは間違いないとも考えています。

最初に述べましたが、withコロナにおいて家庭科で学ぶ事はこれまで以上に大切になってきました。衣食住に関わる家庭基礎はもちろんですが、介護や保育、福祉といった家庭科に関わる職業もエッセンシャルワーカーとしてその重要性が広く共有されたと思います。そうしたことも含めて、これからの家庭科の役割をしっかり考え、生徒のみなさんに伝えていきたいと考えています。

岸 綾子 栃木県立小山西高等学校教諭


渉外部長、教育相談主任、家庭クラブ主任。
専門分野/食育「知性を磨き、徳行を積み、体力を鍛える」ための基本として食生活の充実を生活指標として掲げている。
全国家庭科教育協会会員。冊子『家庭科』にて「最新の食育と段取りを考えた短時間・同時調理スタイルによる調理実習」を寄稿。