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中学校 技術・家庭科 NEWS

持続可能な生物育成:古土を再生利用する栽培学習


こちらの記事はてくテク第9号より加筆、修正したものになります。

近年、コロナ禍の影響で家庭菜園が人気を博しています。2021年以降に家庭菜園を始めた人は30%以上、その90%が継続したいと回答しており、空前のブームと言えるでしょう。しかし、このブームの裏側では、有限な資源である用土の枯渇問題が深刻化しています。

家庭菜園ブームの背景と課題

多くの人が家庭菜園を始めるきっかけとなったのは、小学校での朝顔栽培や中学校での技術・家庭科での生物育成(花や野菜の栽培)です。これらの経験を通して、土作り、種まき、育苗などの知識や技術を身につけ、家庭菜園への興味を持った人が増えたと考えられます。
しかし、家庭菜園ブームによって大量の培養土が消費され、土壌改良材の使用状況も不明な状態です。培養土の主要な材料である赤玉土は採掘量が減少しており、関東の業者が関西から仕入れるなど、資材の争奪戦も起こっています。

循環型農業への転換

このような状況を打開するために、江戸時代から続く埼玉県川越市・所沢市周辺の「三富地域」の循環型農業に注目する必要があります。三富地域では、農地5割、林地2割、その他3割の構成で、広葉落葉樹の落ち葉を堆肥として還元する循環型農業が現在でも営まれています。
家庭菜園でも、以下の方法を取り入れることで、循環型農業を実現することができます。

ダイコン袋栽培

東京の中学校で約1万人が取り組む、1年目は培養土の袋をコンテナとして利用し、2年目は完全な無農薬・有機栽培で循環型農業を実践します。

古土再生

雨水で洗い流し、根や害虫を取り除く。堆肥や土壌改良材でふかふかにし、肥料分とミネラル補充、土のう袋で2週間以上保管することにより古土を再生させます。

 

生物育成学習の重要性

家庭菜園は、単に野菜を育てるだけでなく、食への理解を深め、環境への配慮を学ぶ貴重な機会となります。生物育成学習を通して、子どもたちは以下のようなことを学ぶことができます。
・植物の成長過程
・自然の恵みへの感謝
・環境保全の重要性
・循環型農業の仕組み
これらの学びは、将来の食料問題解決や持続可能な社会の実現に貢献する人材育成に繋がると考えられます

家庭菜園ブームは喜ばしいことですが、同時に用土問題への意識も高める必要があります。循環型農業を参考に、土の再利用に取り組み、生物育成学習を通して、食の大切さと環境への配慮を学ぶことが重要です。

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生物育成サポート
松本誠之

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