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高校の家庭科授業のなかでも、とりわけ重視されているのが消費者教育です。周知のとおり2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられるため、高校教育でしっかりと消費者、契約者としての自覚と知識を教えていかなければなりません。
とはいえ高校生にとってはまだ馴染みが薄く、抽象的になりがちな消費者問題を、どうすれば生徒の関心を掻き立てることができるのか悩んでいる先生も多いのではないでしょうか。
本稿では教材『おとなドリル』を活用して楽しく、実用的な消費者教育を実践している栃木県烏山高等学校・國嶋昭子先生の授業レポートをお届けします。
目次
本校では、家庭基礎2単位を1年次に学習しています。11月と12月に消費生活の分野で、『おとなドリル』を主題材として扱い、活用した授業を行いました。
まず授業の導入で使ったのが図1の性格診断テストです。
図1
このテストを実施し、結果をグループで発表し合います。ご覧の通り、動物のタイプ別に診断される遊び心のあるシャート式なので生徒も面白がって、取り組んでくれました。
もちろんこれは単なる遊びではなくて、性格タイプ別に気を付けたい悪質商法が次のページで細かく紹介されています。たとえば「意識が高いモテモテ動物〈クジャク・タイプ〉のあなたは、エステなどの無料商法にご用心」というようにユーモラスに書かれており、これをグループで共有することで、楽しみながら悪質商法の危険性を教えることができました。
グループ学習で結果を共有
では悪質商法に引っかかったり、インターネットでトラブルに巻き込まれたときにどうするべきか?図2のページをみんなで確認しました。ここでも「スマホでアダルトサイトを見ていたら突然お金を請求された」「元カレに二人の写真をばらまかれてしまった」などリアリティのあるシチュエーションが盛り込まれており、実用的な学習ができました。
図2
2コマめは、1コマめで学習した内容をもとに、どうしたらより良い消費市民社会が築けるのか、自立した消費者になるために何が必要か、という課題に取り組む実践授業を行いました。
具体的にはグループワークで悪質商法に対する啓発グッズ案を考えてもらいました。
ポイントとして①高校生が対象であること、②注意をひくキャッチフレーズを考えること、➂魅力的なデザインをみんなで工夫する、などとしました。
生徒たちの力作を一部ご紹介します。
右)エシカルをテーマにしたうちわ。(左)消費者ホットライン「188」をプリントしたクリームなど。
各班で考案した啓発グッズを発表し、お互いに評価し合います。
最後に、評価表と感想などをワークノートに記入し提出してもらいました。
3コマめはクレジットカードに焦点を絞った授業を行いました。
2022年4月からは18歳になれば自分のクレジットカードを持つことが法的に可能になります。またスマホ決済や電子マネーなど、さまざまなキャッシュレス決済が普及した今、お金の使い方や仕組みを理解させることはとても重要だと考えています。
授業の導入として映像を使いました。
NHK DVD教材「アクティブに学ぼう」vol2
「暮らしと消費」
約5分くらいの動画を視聴しクレジットカードの支払い方法や、仕組みについて理解してもらいます。
次にDVDの内容を振り返りながら『おとなドリル』を活用し、補足説明をしていきます。
図3
クイズ形式で「リボ払い」、さまざまなカードの特長、クレジットカードの仕組みなど実用的な情報が学べます。
最後にクレジットカードのメリットとデメリット、使用時の注意点などをまとめ、ワークシートを提出してもらいました。
この授業では、収入と支出について理解し家計を管理するための基礎的な知識を身につけることを目的としました。
グループ学習で、図4の『おとなドリル』を使って、収入(給料)、支出(生活費)を簡単に計算してもらいます。図5の給与明細を見せながら、賃金と税金、保険、年金などについても分かりやすく解説することができました。
図4
図5
自分でお金を稼いだことのない高校生に、家計のやりくりを理解させるのは難しいものですが、イラストが豊富なので、イメージをつかめることができたと思います。また実際に1か月の家計を計算することで、将来就職したときのリアルな金銭感覚もイメージできたと思います。
消費者教育は一方通行の知識の伝達になりがちで、生徒の興味をかきたてるのが難しいのですが、『おとなドリル』はイラストやマンガが効果的で面白く授業を展開することができたと思います。実際に生徒の感想として「イラストが可愛くて分かりやすい」「カラフルで見やすい」「マンガが面白い」「イメージがつかめた」などの声を聴きました。グループ学習も盛り上がりました。
またドリルといってもクイズ形式のQ&Aで全体が構成されているので、楽しく学べて理解度も増したと感じています。
18歳成年はもうすぐ始まります。高校を卒業したら生徒たちは大人として扱われることになります。そうした観点からも、実生活に必要な知識を学ばせることができたと実感しています。