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こちらの記事はてくテク第2号より加筆、修正したものになります。
2014年に始まった 中学技術家庭科での生物育成授業。 生物育成と言っても現実的に学校教育の場で実施できるのは、植物育成が多いと考えられます。今回国内大手の種苗メーカー、サカタのタネの清水さんにお話を伺いします。
株式会社サカタのタネ
コーポレートコミュニケーションアドバイザー
清水俊英
私も中学校や小学校で先生方や生徒の皆さんに、 植物栽培についての講義を行うことが多くなりました。 その中で、 植物栽培にあまり関わったことがない先生方の苦労や夏休みや冬休みなど学校特有の事情が植物栽培をより難しくしていることを知りました。 そこで今回は実際に講義の際に出た質問とそれに対する答えを Q & A 方式で 概念的なものについて主に述べたいと思います。
目次
A1:皆さんは料理をしますか? 料理をするには何が必要でしょうか?料理の素材や 調味料はもちろん必要ですがそれ以前に鍋やフライパン、菜箸やお玉などが必要です。 さらに言えば ガスコンロ や 電子レンジなど加熱するための器具が必要です。 そしてそれらを実施する場所とガスや電気などのエネルギー源も。植物を栽培する時に意外とネックになるのが料理で言うところの調理器具、それを設置する場所、 そして調理道具など考えなくてはいけないことです。 これらが用意できたら料理の具材 (植物の種子・ 苗)と調味料( 肥料・ 土壌良材)などを揃えて料理(栽培)をするわけです。 私は講義でよく「植物栽培は料理と一緒。 何を作りたいかを決めて、 器具、道具を揃えて、または手元の器具道具でできる料理を決めて レシピを見て、 具材と調味料を買い、後はレシピ通りに料理をするだけ。 このように両立すれば 多少の失敗はあっても必ず食べることのできる料理ができるはず。」と話します。
そう考えると植物を育てたことがない方でも、栽培は可能なのが分かっていただけると思います。 植物栽培は「 料理や子育てに例える」と分かりやすくなります。
条件付きで可能です。 植物が最も利用しやすいのは、午前中から午後2時頃にかけての太陽光です。 この時間帯の太陽光には植物が光合成を行うのに都合の良い波長の光が多く含まれています。 これを考慮し光の条件から考えると植物が生育するのに最も適した場所は、東南から南にかけて 開けた場所です。午後2時以降は日陰になる場所でもそれまでに 日が当たれば、多くの植物が生育可能です。
また、植物の種類によって必要とする光の量が異なります。 一般的に実がなる 野菜が最も光を必要とします。次に根を食べる野菜で 葉を食べる野菜やハーブ類などはやや光日陰気味でも生育は悪くなるものの、栽培可能なものが多いと言えます。
また、 校舎の北側などで1日直射日光が当たらない場所でも周囲からの反射光で比較的明るければ、ミョウガや 三つ葉 などはそれなりに生育します。 日当たりの良い場所では、トマトやナスなどの果物や 大根などの根菜を、やや 日当たりが悪い場所では小松菜や ハーブなどであれば育てることが可能です。 コンテナ( プランター)栽培であれば容器を移動させることによって、日当たりの状態を加減することができます。
必要です。 畑として毎回使っている場所でも栽培前には堆肥や腐葉土 などを加えた方が望ましく、ましてや 畑として利用していなかった場所では土作りを十分に行うべきです 。 土は「植物の衣食住」です。 根を保護し、十分な養分を供給できるようにするために土作りは必須です。
ただし やみくもに堆肥 や 肥料を入れれば良いというものではなく、 土の状態に応じた土作りが大切です。
そこで活躍するのが土の状態を計測する pH メーター や EC メーターです。 これらの器具を利用して土の状態を計測することは 「土の味見」 なのです。 また、土作りを行ってすぐに作物の種をまいたり、 苗を植えたりするのはよくありません。土作り後、できれば 2、3週間程度の期間を置いてから種まきや 植え付けを行いましょう。コンテナ栽培では自分で用土を配合して作る方以外は野菜の土など肥料や土壌改良剤などが混合されている培養土を使うことが多く、この場合、土作りは必要ありません。
収穫された野菜と園芸用培養土(詳しくはこちら)
基本的には避けた方がいいでしょう。植物の種類によっては、同じ場所で連続して栽培すると連作障害という現象が起こって生育が悪くなります。これを防ぐには「科」の区分で同じものを続けて栽培 しないということが大切で、例えば 枝豆とそら豆は同じ「 マメ科」 なので 連作は避けるということです。一般的に特に 連作障害が起こりやすいのがマメ科で次にナス科です。アブラナ科や ネギ科 、セリ科などは 比較的 連作障害が起こりづらいため、 畑の状況次第では連作も可能です。コンテナ栽培の時は基本的に、一作ごとに土を変えるのが安心です。ただしある程度手間をかけて 土作りを行えば 再利用も可能です。
自治体によって処分の方法が異なります。ゴミとして廃棄する場合には、実際の処理区分を確認しましょう。もちろん 学校の敷地内であれば 花壇などにすき込んで利用することは可能です。
これは天候や植物、土の状態によって変化するので非常に難しい問題です。まず小さな畑の場合は、土が乾いている場合、可能であれば 植え付けや タネまきの前日に十分に水をまいておくと、失敗が少なくなります。十分とはどれくらいかというと、移植ごて(スコップ)で水やり 後の土を掘ってみて 20cm 下くらいまで湿っているくらいです。 実際に水やりをしてみると分かりますが皆さんが思っているよりもずいぶん多い量が必要だと思います。翌日に種をまいたり、苗を植えたりした後はさっと水やりする程度でOKです。畑の 場合はその後、可能であれば 水やりをするくらいです。
コンテナでのタネまきの場合は、タネをまく1日か2日前にコンテナに土を入れて、十分に土を湿らせておくと発芽が良いです。この場合はコンテナの底から水が流れるぐらいまでやった方が良いでしょう。タネをまいた後はせっかくまいたタネが流れないように如雨露などを利用して優しく水やりをします。その後は 1日1回 発芽した植物が流れたりせず、表面が湿る程度の水やりを行い、徐々に量を増やします。十分に鉢に根が張った時点で1回に鉢底から流れ出るくらいの量を与えるようにします。
実際に実験をしてみると土の湿り方にもよりますが、土の量の15%の水量で鉢底から水が流れ出るようです。なぜこのように多くの水が必要なのでしょうか?水やりには水分、養分、酸素の供給という3つの役目があります。水分については分かりますよね。養分については、植物は基本的には水に溶けた状態で養分を吸収します。また、根はたくさんの酸素を必要とし、新鮮な水には多くの酸素が含まれています。また鉢底から水が流れた後の土には、水の通り道が多くできており そこが酸素の通り道になるのです。
料理や子育てに例えると植物栽培は理解しやすいと思いませんか? そして大人でも作業の裏側にある理由を知ると作業の一つ一つに納得感が出ますし、 子どもたちも「HOW」と 同じくらい「WHY」を知りたがっているような気がします。 最後に学校で個性豊かな生徒たちを教えている皆さんにとっては大事なポイント さえつかめれば 、植物栽培は絶対に可能だとお伝えさせていただきます。
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