私たち教育図書株式会社は、中学校・高校の教科書や教材を出版している会社です。 教育図書NEWSは主に学校の先生や教職関係者のみなさまに向けて、教育に関する独自の記事を発信しています。すべて無料でご利用いただけます。

応援コラム NEWS

【応援コラム・技術分野】プラスチックは地球環境の破壊者か、救世主となるか!?

プラスチックは、私たちの生活に欠かせない便利な存在ですが、世界中で大量生産・廃棄され続けた結果、地球規模の環境問題を引き起こしています。
それは、マイクロプラスチックによる海洋汚染です。

世界におけるプラスチックの生産量は年間3億トン以上、そのうち、約800万トンが海に流失していると考えられています。
2016年のダボス会議では、「2050年にはプラスチックごみの量が海洋生物数を上回る」という試算が報告されました。

海に流出するプラスチックの大半が、街で捨てられたビニール袋、ペットボトルをはじめとする生活ごみです。
プラスチックは、紫外線や波の力、摩擦などによって劣化して砕け、直径5ミリ以下の小さな破片「マイクロプラスチック」になりますが、自然中の微生物などによって完全に分解されることはなく、海洋中の小さな生物の体内に蓄積されます。
食物連鎖の結果、マイクロプラスチックの蓄積した魚を人間が食べることで、人間自身の健康を害する可能性が指摘されています。

こうしたプラスチックごみ問題などに対応するために、政府は2022年4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」を施行しました。
この法律では、事業者や自治体、消費者の協力によってプラスチックのライフサイクル全体で「3R(Reduce・Reuse・Recycle)+Renewable」に取り組み、プラスチックの資源循環を加速化させることを目的としています。

 

そのポイントは以下の5点です。
①プラスチック使用製品設計指針と認定制度
②特定プラスチック使用製品の使用の合理化(コンビニの使い捨てプラスチック削減など)
③製造・販売事業者等による自主回収・リサイクル(店頭へのペットボトル自動回収機の設置など)
④排出事業者による排出量の削減・リサイクル等
⑤市区町村によるプラスチックの分別収集・リサイクル

参考:「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の普及啓発ページ(環境省)
https://plastic-circulation.env.go.jp/about

 

上記の①使用製品設計指針に関連して、近年注目されているのが「生分解性プラスチック」です。
生分解性プラスチックは、微生物によって最終的に二酸化炭素と水に分解されるという特徴があります。
国内で展開されている生分解性プラスチックには、下のようにさまざまな原料・特徴のものがあります。

 

一例として、バイオ由来の生分解性プラスチック「PLA(ポリ乳酸)」の製法と用途を紹介します。

<製法>
まず、サトウキビやとうもろこしなどの植物から抽出されたでんぷんや糖を発酵するなどして乳酸をつくります。
この乳酸を精製し、不純物を取り除いた後に、化学的な手法を用いて乳酸をつなげることで「ポリ乳酸」がつくり出されます。

<用途>
ストロー、野菜包装フィルム、食品トレー、ティーパック、農業用マルチフィルム、燻蒸シートなど

参考:生分解性プラスチック入門(日本バイオプラスチック協会)
http://www.jbpaweb.net/gp/

参考:バイオプラスチックとバイオマスプラスチック。その違いはナニ?わかりやすく解説します!(一般社団法人プラスチック循環利用協会)
https://www.pwmi.jp/library/library-1508/

参考:環境にやさしい 生分解性バイオマスプラスチック ポリ乳酸ってなんだろう?(神戸精化株式会社)
https://kobeseika.co.jp/special.html

 

このような、環境に配慮した、持続可能性の高いプラスチックへの転換を目指し、政府は令和3年に「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、政策を推進しています。

中学校・技術分野の「材料と加工の技術」では、木材や金属とともにプラスチックの特性や加工技術について学びます。
プラスチックは安価で加工しやすい一方で、海洋汚染など環境に悪影響を及ぼしていることにふれ、そうした問題を解決する新しいプラスチックの開発などについて学ぶことで、生徒たちの関心を高めるのもよいですね。
また、家庭分野の消費生活における、持続可能な消費と環境と関連づけて、より深い学びにつなげることもできそうですね。