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今年の8月「金融教育」を国家戦略として推進するよう金融庁より提言されました。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の「資産所得倍増計画」を実現することが目的です。
この方針により教育業界で直接的に影響を受けたのは家庭科です。すでに2022年4月より実施された新しい高等学校の学習指導要領では金融教育が義務化され、高等学校では投資や資産形成についての授業が始まっていますが「国家戦略」と位置付けられたことでより重要度が増してきたのではないでしょうか。
これまで家庭科で伝統的に行われてきたお金についての教育は「家計管理」と「貯蓄」が主であり、お金をしっかり管理して貯めることを教えてきました。日本人の堅実な金銭感覚を育んできた一方で、弊害として「貯蓄が好き、投資が苦手」という国民性を醸成してきたという面もあります。今回の金融庁の提言は「お金を貯める」から「お金を増やす」へ、一歩踏み込んだ教育を促しています。
家庭科教育のなかでどのように「金融」「投資」「資産形成」を位置づけ、分かりやすく生徒が興味を持てるような教材を作るか?「家庭科55デジタル+」でも苦心したところです。本稿ではページを担当した担当編集者が工夫を凝らしたポイントなどを解説していきます。
目次
家庭科55デジタル+では「お金」について「消費・環境」の分野で8ページにわたり取り上げています。
p.96-97 「人生にかかるお金っていくら?」
まず導入の扉ページでは月々の家計の収支を「高校生のおこづかい」から「社会人1年目」「4人家族」「定年後の老夫婦」を比較できるよう掲載しています。ライフステージによってどのくらいお金がかかるのか、視覚的に理解できるよう工夫しています。
p.98-99 「どうしたらお金は貯まる?増やせる?」
続くページではお金の貯め方、増やし方をさまざまな切り口で取り上げました。
とくに収支、支出、貯蓄の関係については従来の家庭科の教科書や資料集で掲載されているフローとストックの図版をアレンジし、支出する前に貯蓄する「先取り貯蓄」という考え方を紹介しています(下図)。
また「積み立て投資」や「分散投資」など投資方法の基本的知識も紹介しています。
p.100-101 「お金を借りる、投資するとどうなるの?」
このページでは株式、債券、投資信託、NISAなど具体的な金融商品について図解しています。
また進学を目指す高校生にとってリアルなお金、奨学金については日本学生支援機構の奨学金を例に、給付金と利子について掲載しました(下図)。
p.102-103 「見えないお金との付き合い方を知ろう」
ここではクレジットカードやデビットカード、電子マネー、スマホ決済などキャッシュレス社会に必要な知識をまとめました。「見えないお金」の利便性と危険性について説明しています。
家庭科55デジタル+の特長は、多彩なデジタルコンテンツの付録にあります。上記の8ページと関連したコンテンツをご紹介しましょう。
p.96-97 「人生にかかるお金っていくら?」に掲載されているQRコードからは「お金のやりくりシミュレーション」が活用できます。
これは社会人1年目の一人暮らしの家計がどのようなものか体験できるコンテンツです。最初に1か月の収入を選び、ヒントを読みながら家賃や食費、通信費、被服代などを選択し、最終的に家計が赤字にならないか、どの程度貯蓄できたかが判定されます。生徒が名前や感想などを書き込みダウンロードボタンを押すと定型のPDF書類となり出力されますので提出し先生が評価することもできます。
p.100-101「お金を借りる、投資するとどうなる?」のページから体験できるデジタルコンテンツは「チャットボットで学ぶ投資のイロハ」です。
画像をクリックするとコンテンツを体験できます
これはスマホのチャットアプリを模し、選択肢を選びながら会話を進めていくコンテンツです。生徒は卒業旅行のためにお金を貯めようとしている高校生の立場にたち、投資家のおじさんとのやりとりをしていくことで自然と金融の知識が身に付くように作られています。(こちらも同様にPDF出力機能が付いています)
p.102-103の「見えないお金との付き合い方を知ろう」のページから体験できるコンテンツは「クレジットカードの使える豆知識」です。紙面ではカードのしくみについて詳しく解説していますが、デジタルコンテンツではクイズ形式で「カードを紛失したらどうする?」「暗証番号ってどうすればいい?」などより実用的な知識を学べるように工夫されています。
また現在開発中のp.98-99に付属する「あなたの人生,いくら費やされている?」というコンテンツは、自分が生まれてからこれまでにかかったお金の概算を導き出すシミュレーションです(近日公開予定)。
資料集を作成するにあたり高校生500名を対象にした「家庭科で関心のある領域はどれか」というアンケート調査では「お金」は「食」「衣服」に次いで3位という結果で、生徒の関心は高いようです。
とはいえ経済的に自立する前の高校生にとって投資や資産形成について自分事として実感することはなかなか難しい、それをさまざまなデジタル教材で疑似体験できるよう「家庭科55デジタル+」では工夫を凝らしました。教科書や資料集で必要な知識を習得した後に、授業のまとめとしてコンテンツを体験することで学習した内容にさらに厚みがでるのではないかと考えています。
価格 721円(本体655円)
AB版、オールカラー、208頁
商品コード番号:1047170
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