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中学校 技術・家庭科 NEWS

中学校技術の情報教育 双方向性のあるコンテンツについて考える

双方向性のあるコンテンツのプログラムは、現代社会でますます重要性を増しています。中学校の技術科では、ネットワークを介したプログラムの実装方法や相互作用の原理を学ぶことで、デジタル時代に必要なスキルを身につけることができます。このようなプログラムは最新の技術と教育の進化を反映しているため、教材や指導方法の工夫が求められます。長らく技術教育に携わり、研究活動を続けてこられた髙橋章次先生にお聞きしました。

 

髙橋章次
全日本中学校技術・家庭科研究会役員
東京都青梅市立第三中学校学校長


技術702・703技術分野教科書


双方向性のあるコンテンツのプログラムについて

プログラムについては、小学校で学習しています。中学校技術・家庭科 技術分野では、双方向性のあるコンテンツのプログラムについて学習しなければなりません。確かに世の中のプログラムは、それ単体で実行するのではなく、ネットワークを介し実行されるプログラムが当たり前になってきています。
一般的にはとても高度な技術で、私も実のところ、どのように対応したらよいか、難しいと思っています。しかし、その仕組みを理解することは、今を生きる中学生たちにとって容易にできるのではないかと考えています。

双方向性のあるスマートスピーカ

スマートスピーカを購入しました。「○○、おはよう」と問いかけると、「おはようございます。今日は○月○日○○の日です。」と答えてきます。エアコン、テレビ、照明など様々な機器の赤外線ディバイスを使って、スマートスピーカを連携させれば、音声で家電を制御できるようになってきています。スマート家電(IoT家電)だとネット環境にWi-Fiで家電が接続されているので、もっと簡単に制御できるようになってきました。このスマートスピーカの進歩は、高速通信が可能になっているからできることなのです。

また、スマートスピーカの登場で、音声の認識率は格段に上がったといえます。スマートスピーカにあるマイクが音声を拾うと、次はそれをネットワークを通してクラウドサービスに送ります。ネットワークでクラウドサービスに送られた音声は、ここで音声認識ロジックというシステムで解析されます。そして、その音声を識別し、的確な答えを判断し、ネットワークを通しスマートスピーカに送り出し、音声としてスピーカから答えるのです。

この音声認識のすばらしさは、音声の音程の違いや強さ、イントネーションまで聞き分けて解析することです。たとえば、日本語ではイントネーションの違いで「飴」と「雨」の違いを聞き分けますが、イントネーションがあやふやでも、「飴」が「降る」ことは、一般的にありえないので、音声認識ロジックでは「雨が降る」と判断します。まさに、これこそネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツです。

双方向性のあるコンテンツを取り入れた教材

東京、多摩西部のある市では、地元地域の財団が支援してラズベリーパイ(注1)を利用したプログラミング学習が行われています。ハードの基本的な仕組みから入り、簡単なプログラムを作り、最後は音声を使って家電を動かすプログラムを作成するなど、ハイレベルな講習会を行っています。定員20名に2名の大学教授、業界の有名なゲームプログラマー1名、そして8名の大学院生が細かく指導してくれる10回の講座に参加する子供たちは、まさに双方向性のあるコンテンツを利用したプログラムに取り組んでいます。また、この講習会に参加して巣立った子供たちが、講習会のお手伝いをしてくれています。

しかし、双方向性のあるコンテンツのプログラムは、中学生であってもなかなかハードルが高いように思います。今後仕組みを理解し、さらに簡単なプログラムを学習するためには、そのことに特化した優れた教材が必要だと考えます。


(注1)英国で教育用に開発された、超小型シングルボードコンピュータ。最低限のインタフェースを備えるほか、USB・LAN・HDMI端子とマイクロS Dメモリカードのスロットを搭載。小型で安価なコンピュータ。

AI技術の進歩

最近、AIを使った人間の様に会話できるチャットサービスが話題になっています。このAIは、多くの情報を取集し今も進化し続けています。一方で、このチャットサービスを利用して、大学の学生がレポートをAIに作らせるなど、技術の活用の仕方が問題になっています。またこのAI技術は、人間から得た膨大な情報を利用するものであり、その回答が必ずしも正しいものとは限りません。AIが十分学習しきれないまま、回答してしまうこともあるからです。このままAI技術が進歩していくとどのような世の中が待っているのか、楽しみでもあり、恐ろしさも感じます。

さらに今後、教育にもAIが導入される可能性があります。子供の弱点をデータから割り出して最適な指導の提案をしたり、スマートスピーカの延長で、子供が答えたことから的確な指導を発言するなど、教師の代わりに指導を実際に行ったりすることが現実になってくるでしょう。

情報と技術は、まさに日進月歩です。この情報と技術では、教師が常に新しい知識を得ていくことがとても大切であると考えています。


ラズベリーパイを使ってロボットをコントロールし、動かす小学生・中学生

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技術702・703技術分野教科書

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