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新任の先生方の中には、
「残業で仕事が終わらない、指導案を作るのは自宅で。」
「何か効率的に授業準備などができないか?」
という方もいるのではないでしょうか。
公立中では、タブレットが今年から配られたばかりで、使い方やよりよい授業の方法を模索する動きも。今回は、千葉県市川市の私立中高一貫校で技術・家庭科(家庭分野)を15年以上担当されている山下梢先生へ、「生徒に楽しみながら作ってもらえる製作キット」「タブレットのおすすめ活用法」などのお話を伺いました。
山下梢(やました・こずえ)先生 大学卒業後、千葉県市川市にある国府台女子学院にて、15年間家庭科の指導にあたる。高等学校を担当したのち、現在は中学部を担当。小学校2年生と年中の男の子の母。情報免許も取得。
目次
編集部:学校の玄関に、素敵な製作物がたくさん飾られていますね。生徒の「製作物の好み」など傾向はあるのですか?
山下:生徒には毎年何が作りたいのかを聞いています。そうすると、クッションを作りたいとかバッグを作りたいとかいろいろ出てきます。作ったあとも、お母さんや妹にプレゼントしたりするみたいですよ。
この「エコバッグホルダー」は、今年からの新商品です。小学校で学んできたことがすぐに生かせるので選びました。今、このエコバッグホルダーへ入れるエコバックも製作中です。
エコバッグホルダー/優良教材家庭科 (kateika.com)
編集部:先生の授業は、生徒が生き生きと参加している印象を受けます。何かコツはあるのですか?
山下:やはり一方的にこちらが話している授業よりは、生徒が参加する授業の方がいいですよね。教師になったばかりの頃は、本当に反省ばかりであまりできていなかったです。でも、ある時生徒から
「先生の授業っていろいろ考えたりする時間が多いよね。」
と言われたことがあって。家庭科の特性なんでしょうけど。だから、自分で考えて行動することが大事です。最初の頃は、2時間の授業の中で、1回はグループで話し合いをさせるなど、何かちょっとしたアクションから入れてみようと毎回少しずつ考えていきました。
最近の授業では、食習慣のところに取り組んだ時、教育図書さんの「食習慣すごろく」が大盛り上がりでした。
教育図書『New 技術・家庭 家庭分野 くらしを創造する』より
山下:それと、文科省の「早寝早起き朝ごはん」の教材を使っています。
「朝ごはんを食べるとテストの点数が上がるよ」
「勉強だけではなく、体力面も上がるよ」など、身近なところを紹介しています。
書き込みするものも、やなせたかしさんが描かれたキャラクターが載っていて、楽しく学んでくれています。
編集部:新任の頃、家庭科の授業で、どんなことが面白かったですか?
山下:生徒と一緒に実習するのが楽しかったです。初めは、高校の所属だったので、年齢も近く、距離の近い会話ができることもよかったです。
ただ、全員とうまくコミュニケーションを取るのは難しいと感じていました。
積極的に私のところに質問してくる生徒もいれば、やることがわからなくて固まっている子もいます。基本的には、まず、いいところを見つけて、声をかけるようにしています。
縫い方など、やり直した方がよい時、一方的に「やり直そう」と伝えると、子どもたちはやり直しを嫌う傾向があります。だから、「ここは、直した方がいいかもね、どう思う?」と聞くようにしています。質問には、何度同じことを聞かれても嫌な顔はしないことを心掛けています。
実習の時に褒めたり、話したことがきっかけで、そのあと話しかけてくれる子もいます。
他教科の先生にお話を聞くこともあります。例えば、ふだんあまり発表していない子が、他の教科で発表したことを聞いた時は、
「どんなことを発表したんですか?」
「どうやって、授業を進めていったのですか?」
と他教科の先生にその時の様子を聞いて、その子のことをもっと知ることができ、生徒が発言しやすくする方法なども取り入れることができます。
編集部:そういった意味では、タブレット教材は、ふだん表に立って発表することが苦手な生徒も、タブレットの中で意見を書いて共有することができますよね。
山下:今は「ロイロノート(※)」というアプリがとても便利です。
タブレットから質問を送ることができたり、作り方を写真で示したり。発表の時も、使えますし、先ほどお話した「食習慣すごろく」では、誰の作ったすごろくがよかったか、アンケートをリアルタイムで集計することができて便利でした。
編集部:各個人のタブレット上で、みんなの作ったすごろくを見て、投票や感想を送れるのですね。
※ロイロノート…ロイロノート(「ロイロノート・スクール」)とは、教室内でインターネットを使って学習支援を行うためのプログラム・システム・アプリ。
【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド (loilo.tv)
カードをつなげるだけでプレゼンテーション資料が作成できる
(山下先生が実際の授業で使用したもの)
実際の授業で使用したアンケートと回収イメージ(作成:山下先生)
編集部:先生が家庭科の先生になられたきっかけを教えてください。
山下:家庭科の先生になることは小学生の頃からの夢でした。母が洋裁を習っていまして。旅行に行く時などに、新しい子供服を作ってくれて。あとは、新しい料理を作ってくれたり。それを一緒に作ったり。身近なところに家庭科があって、楽しいなと思っていました。
編集部:先生になられたばかりの最初に頃、家庭科以外のお仕事にはどんなものがありましたか?
山下:学校のホームページの案を考えたり、成績のデータ処理の仕事がありました。情報の免許を持っているので、コンピューター関係の仕事が割と多かったです。
成績処理は今でも学校全体の処理を受け持っています。
新しいものが好きなので、いろいろやってみようというのが好きなタイプです。新しい情報機器が入ったら使ってみようとか、新しいメニューを考えたりとか。
編集部:お子さんもいらっしゃるとのことですが、ご結婚されてからお仕事のスタイルは変わりましたか?
山下:はい。子どもの病気で休まなければならないなど、突発的なことがすごく増えたので、準備を早めにやるようにしています。試験問題は結構前から作るようにしたりですとか、急な休みの時の課題を前もって準備しておいたりとか。
今はタブレットがあるので、家から課題を作って、配信もできます。授業中に課題を提出してもらって、タブレットで確認ができます。
課題画面イメージ:先生からタブレットで課題を発信。(作成:山下先生)
編集部:お仕事の中で、やりがいや楽しい所はどんなところですか?
山下:やはり中学生なので、成長したな!と感じる場面が多いことです。高校生までいるので、中学1年の頃から知っていると、すごくお姉さんになったなと、感じます。会話も大人びてきたり。最初は、本当に「先生、先生―!」と聞きに来ていた子が、ちゃんとこちらの様子を見て、「忙しいからあとで来ます」と気遣ってくれるようになりました。
他には、卒業生で教員になって戻ってきてくれる子が何人もいます。そういった教え子たちが活躍する姿を近くで見ることができ、とても頼もしいです。
あとは、生徒から「家に帰って、家庭科で学んだことがすごく役に立ったよ!」と言ってもらえるのがとても嬉しいですね。家に帰って、調理実習と同じものを作ってみたよ、製作した作品を使っているよと声をかけてもらえることもあります。
編集部:最後に、家庭科の先生になられたばかりの先生へ向けて、メッセージをお願いします。
山下:先生になったばかりの頃は、私も反省ばかりで、果たしてうまく授業ができたのかと思うこともありました。でも今は当時に比べると、教科書や指導書がとても充実しています。だから、最初はその通りでも構わないと思います。1回やってみて、反応のよかったところを見つけたり、「こうしたほうがいいのでは?」と改善点が見えてきたりしますので。いろいろな新しいことに目を向けて挑戦してみる姿勢が大切です。
取材・文/教育図書編集部 武石暁子
住所:千葉県市川市菅野3丁目24−1
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