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家庭科 NEWS

「18歳成人」がいよいよ施行!映画『18歳』を使った家庭科・消費者教育の授業レポート

今春から始まる18歳成人。現在高校2年生や3年生は、まさに第1期生となります。当事者となる高校生はどのように捉えているのでしょうか?実際のところは、成人になるということを知らない、もしくはまだ実感がわかない、といったところでしょう。

今回、神奈川県川崎市立高津高等学校の黒木先生の、映画「18歳」(©教育図書)を活用した2年生の授業を参観させていただきました。ねらいは「18歳成人になるにあたり、若者の弱点に気づかせ、消費者トラブルを防ぐ知識や判断力を育てる」ことです。こちらの授業の内容をご紹介します。

▼映画『18歳』予告編

キーワードはおとな

「おとなになってどんなことをやりたい?」
黒木先生の問いかけに対し「お酒を飲みたい」、「たばこを吸ってみたい」、「いろんなところに自由に旅行したい」等など、生徒たちから声があがります。

いよいよ迫ってきている18歳成人。先生より18歳になってできるようになることの一部が説明されました。

「親の同意がなくても契約できる、例えば、 携帯電話の契約、部屋を借りる、クレジットカードをつくる、ローンを組む、また国家資格をとる・・・ など。 残念ながらお酒、たばこはまだ出来ません。」
続けて、「今日の授業では、18歳成人について考えていきたい、と思います。」
教室の前にある大型テレビで映画の前半部分が流されました。

映画前半を視聴―意見交換―

主人公ユミが、友人のアカネから言われる。
「バイトより良い話、あるけど」
スマホでかんたんに出来る投資について誘われた。

このシーンの次の展開について考えます。数分間、生徒各自で考えたあと、班の中で意見交換です。

質問①そのあとユミはどうなると思う?ユミの性格を考えたうえで書いてみよう。
質問②あなたなら、どうしますか?

班の中では、活発な意見が出ています。その意見をまとめて班ごとで発表です。

ある班では、質問①に対し、「流されやすい性格っぽいので、そのまま投資の話を受け入れてしまうだろう。」
質問②に対して、「10万円払うのはこわいので、慎重になる。」

別の班でも質問①に対し、「流されやすいから、やっちゃうと思う。」
質問②に対して、「班のみんなは、やらないと言っている。誘ってくる友達の考えは否定しないけど、でも、自分たちはやらない。」

また、同じ予想はしていても、流されやすい性格が原因とは考えず、「おとなになりたいという憧れから、投資をはじめると思う。」という別の視点を持った生徒もいます。

さあ、どうなるのでしょう。

映画後半を視聴―意見交換―


友達グループからアカネがいなくなった・・・。ユミの表情が象徴的です。生徒みんなの表情も、前半を見終えたときと比べて変わっているように感じました。

そこで先生からの問いかけです。

質問③ 最後のユミは、何を考えていたでしょう。
ここでも活発な意見交換がされていました。

「なぜ自分は誘われた時に、しっかり断れなかったのだろう」
「あの時断っていれば、アカネは罪を犯さずに済んだかもしれない」
「自分は共犯ではないかという気持ちで、モヤモヤした気分」という意見です。

「18歳の映画を見て、みんなが感じたことは何かな?」黒木先生の問いかけが続きます。

「おとなになると、自由の幅が広がるけど、守ってくれる人がいない、だから責任感が増すと思う。」
「自由にはなりたいけど、責任がでてくる。」
「おとなになることへの不安がおこる。」

12分間の映画を見て、生徒のみなさんも様々な思いをもったようです。「映画の中で出てきたわからない言葉を書き出してみよう。」と先生が話し、3つのキーワードが挙がりました。
「投資」「キャッシング」「マルチ商法」です。
これについては、次の時間から勉強していきます。

主体的に学ぼうとする力と正しい知識


では、どのように自分を守っていけばいいのでしょう。次の2つの質問について班で話し合い発表されました。

質問-1 このような若者のトラブルが生じる原因は?
質問-2 トラブルを防ぐためにどうしたらいいでしょう?

発表された意見

質問-1
・知識・経験がない。
・安全なものか違法なのか確かめない。
・意識が低い、デメリットを知らない。
・大人への憧れ、信用している人からのすすめ。
・悪い大人の言葉に騙される。

質問-2
・何に注意するべきか、安全なのか調べて話を受ける。
・同意する前に利用規約や契約書をしっかり読む。
・おとなに頼る。
・会社側の配慮も必要。

まとめと生徒の感想

高齢者に対して、オレオレ詐欺の騙す人は、高齢者の判断力の低下やさみしさにつけこんでいく。
同じように、若者に対しては、物欲・無知等に対して、つけこんでいく。若者の弱点は、知識や経験不足です。必要なことは、「相談する力」、「信頼できる人(機関)に頼る力」です。
「18歳成人で、責任も生じてくることをもう一度噛み締めてほしい」と締めくくられました。

次に挙げるのは生徒たちの感想です。

・成人になるのが不思議な感覚で、授業を受ける前は実感が湧いていなかったが、授業を通して、成人の重みや責任を知ることができました。身近な所や自分自身にも起こる可能性があるので、常に意識を持って行動しようと思いました。
・18歳成人でおとなになったからといい、その分責任をしっかり自分で負わないといけないことを実感しました。マルチ商法のことについて触れることが出来たので自分自身がひっかからないように気を付けようと思いました。

黒木先生はこのように話されます。
「令和4年4月から施行される18歳成人。消費行動の範囲が広がり、自由が認められる部分も広がります。だからこそ、主体的に学ぼうとする力・正しい知識・判断行動力が必要です。」

(了)

授業の風景は、令和4年1月14日放送NHK総合「首都圏情報ネタドリ!」内にて紹介されました。
https://www.nhk.jp/p/netadori/ts/QL8GZ2L5VX/list/

 


【『18歳』ストーリー】

▼ストーリー 18歳のユミは、法律が変わって”成人”となった。だが、控えめでどこか子どもっぽいユミは、いつも友人たちの後ろをついて歩いてばかりで、そんな自分に悩んでいた。ある日ユミは友人グループの中でもひときわ大人っぽいアカネから『大人だけの特別な誘い』を受けて…。

▼CAST ユミ/武野汐那、アカネ/涼凪、ナツキ/としお理歩、ホノカ/笠本ユキ、ソウヘイ/岡田翔大郎、ユミの母親/江藤あや

▼STAFF 監督/犬童一利、脚本/守口悠介、法律監修/平澤慎一(弁護士)、プロデューサー/中村圭佑(DIAWOKE)、撮影/倉本光佑、照明/大久保礼司、録音・整音/篠崎有矢、助監督・編集/伊藤拓也(+A+Q)、ヘアメイク・衣装/平林純子(P3Garage)、キャスティングプロデューサー/浅沼直也(+A+Q)、音楽/茂野雅道、デザイン・タイトル/ジャスティス森本、予告編/山口ヒロキ、制作プロダクション/+A+Q、製作/教育図書株式会社

▼2か月間の視聴価格3850円(税込み)収録時間12分
動画配信システム「Kオンデマンド」にて発売中。※DVDの販売はございません。

Kオンデマンドとは
教育図書㈱が運営・管理する教育用動画配信サービスです。家庭科を中心に授業で使えるさまざまな教育用動画をお求めやすい価格で配信しています。
無料登録いただければ、すべての映像のフルバージョンのサンプル版がご覧いただけます。


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「これから18歳になる高校生へ」映画『18歳』犬童監督、守口脚本家インタビュー

 

 

黒木 真理子

小学校、中学校勤務後、川崎市立川崎高等学校生活科学科において専門学科の担当を経て、 現在、川崎市立高津高等学校にて勤務。校務分掌は教務主任。
川崎高等学校では、川崎区食育推進会議の委員として地域食育活動に取り組み、 現任校では、保育園実習や地域連携事業など、家庭科におけるキャリア教育推進に取り組んでいる。

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