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家庭科 NEWS

先生!家庭科でデジタルコンテンツをどう使ってますか?〈第3回〉

毎年、世界経済フォーラムが発表している「ジェンダーギャップ指数」のランキングはご存知の家庭科の先生も多いと思います。
日本の順位は、146か国中125位となっています。

男女共同参画に関する国際的な指数 | 内閣府男女共同参画局

日本におけるジェンダーの格差に関する身近な話題のひとつといえば「家事分担」です。
日本でも「家事はパートナーと分担するもの」という考え方が一般的になってきましたが、それでも夫婦間の不平等な家事分担はいまだに指摘され続けています。
実際のところ、総務省統計局が公表している「社会生活基本調査」では、6歳未満の子どもがいる世帯の家事関連時間は、夫が1時間54分であるのに対し、妻は7時間28分となっています。

統計局ホームページ/令和3年社会生活基本調査

今回は、高校生のみなさんに、家事について自分ごととして考えてもらうためのデジタルコンテンツの活用事例をご紹介します。

本連載第3回(最終回)は、東京都東大和市の東京都立東大和高等学校の時安利香先生に教えていただきました。

↓第1回
先生!家庭科でデジタルコンテンツをどう使ってますか?〈第1回〉 – 教育図書

↓第2回
先生!家庭科でデジタルコンテンツをどう使ってますか?〈第2回〉 – 教育図書

 


 

学校紹介

東大和高等学校は部活動がとても盛んで、明るく活気あふれるクラスが多い学校です。
授業は落ち着いた雰囲気で、多くの生徒が前向きに授業に取り組む姿勢をもっており、グループワークなどの学習活動はとくに楽しんで取り組みます。

本校では1年生で家庭基礎を学習します。
全生徒がタブレット端末を活用しています。

 

使用したページとデジタルコンテンツ

今回紹介する授業では、『家庭科55デジタル+』のP14〜15「6 家事や育児は誰がする!?」を使用しました。

このページは、保育園に通う子どもがいる共働きの夫婦の家事・育児をどのように分担するか考えるワークと、夫の家事時間やアンペイドワーク(無償労働)に関する調査の結果から、家事分担などについて考えを深めるページです。
(編集部)

 

デジタルコンテンツは、本ページに掲載のデジタルWORK「家事にお金を払うとするといくら?」を体験しました。


15種類のアンペイドワーク(家事・育児・ボランティア)について、1週間にどれくらい時間をかけているかを回答すると、1か月の家事の合計時間と、月給に換算した金額が表示されるコンテンツです。

金額は「機会費用法」という方法で算出しています。
機会費用法は「家計が無償労働を行うことによる逸失利益(市場に労働を提供することを見合わせたことによって失う賃金)で評価する方法」と説明されます。
ごく簡単に言い換えると、「家事・育児・ボランティアをしていた時間を、仕事に充てていればいくらもらえたか」といったところでしょうか。
このコンテンツでは、内閣府経済社会総合研究所が公表している報告書に基づいた年代別・性別の一人当たり時間給と、家事にかけた時間をかけて金額を計算しています。

各年代・性別の時間給

女性 男性
15~19歳 933円 1,017円
20歳代 1,223円 1,315円
30歳代 1,474円 1,790円
40歳代 1,552円 2,333円
50歳代 1,498円 2,421円
60歳代 1,226円 1,609円

(編集部)

 

指導計画と評価基準

 

自分らしい生き方と家族(総時間数6時間)
①ライフコースの多様化と選択(4時間)
1・2時 日本社会の変化とライフコースの多様化
3・4時 ワークライフバランスと男女共同参画社会…本時
②家族・家庭生活(2時間)

 

知識・技能 ・青年期の課題である自立や男女の平等と相互の協力などについて理解できる。
・生活にかかわる労働の意義、また、現在の労働環境などについて理解できる。
・現在の生活時間の状況をふまえ、生活時間と労働との関係について理解できる。
思考・判断・表現 ・家族・家庭に関する課題・問題点について、社会的な制度、労働環境や雇用情勢などの背景も考慮しながら原因を推測し、解決へ導くための考えをまとめ、討論やレポートを通して発表することができる。
学びに向かう力・人間性など ・労働の意義や役割、労働時間と生活時間とのかかわりについて関心をもち、現代の家族・家庭が抱える課題を見出そうとする。
・男女共同参画社会など、現在の社会的状況について、興味をもって知ろうとする態度がある。

 

授業の展開例

 

まず5分間の導入として、生徒にトランプを引かせ、自分に割り当てられた仕事①〜⑤を確認してもらいます。
①フードデリバリーのアルバイトをしている売れない芸人。月収15万円。労働時間や通勤時間帯は不規則。
②パートタイマー。時給1,050円。労働時間は5時間。通勤時間は15分。
③国家公務員。年収700万円。9〜17時勤務だが残業は毎月70時間超。通勤時間は片道1時間。
④看護師。手取り月額28万円。日勤と夜勤あり。通勤時間は片道40分。
⑤会社員。年収400万円。9〜17時勤務、残業は平日1時間。通勤時間は片道75分。
そのあとに、パートナー役も割り当てます。

次に55分かけて展開を行います。
1 割り当てられた仕事を想定し、通勤・仕事時間のほかに、身支度、家事、食事・入浴、自由時間、睡眠などの一日のスケジュールを考えてもらいます。
2 1をベースに『家庭科55デジタル+』P14「家事や育児を見える化してみると…?」を使って、パートナー役と家事をどう分担するか考えるワークを実施します。
3 2をベースに、デジタルWORK「家事にお金を払うとするといくら?」を体験します。
4 「2人の年収で暮らしていけるか?」「子どもをもって仕事と家事の両立は可能か?」「ゆとりをもって生活を送るために、社会にどんな変化が必要か?」など、感じたことや考えたことをまとめてもらいます。

そのあと、20分間の展開として、日本人の生活の現状と男女共同参画社会について理解させます。

続いて、15分間の発展で、これまでの学習を踏まえて、自分が望むライフコースを生徒に考えてもらいます。

最後に、10分間のまとめとして、「Microsoft Teams」というアプリケーション上でデジタルWORKの結果を提出させます。

実際の生徒の感想をいくつかご紹介します。

 

生徒の感想

 

生徒Aさんの感想

あなたの1か月の家事の合計時間:44時間
月給換算:41,052円

①換算した月給は安いと思う?高いと思う?

高いと思う。
そもそも家事をしてお金をもらうという考えがなかった。
本当にお金がもらえたらいいなぁ。

②設問のもの以外で自分にできる家事はなんだと思う?

窓ふき、宅配便のチェック、近所付き合いなど。

 

生徒Bさんの感想

あなたの1か月の家事の合計時間:74時間
月給換算:69,042円

①換算した月給は安いと思う?高いと思う?

高いと思う。
ここまで高くなると思わなかった。
立派な仕事だと思う。

②設問のもの以外で自分にできる家事はなんだと思う?

トイレ掃除、買い出し。

 

生徒Cさんの感想

あなたの1か月の家事の合計時間:156時間
月給換算:242,112円

①換算した月給は安いと思う?高いと思う?

とても安いと思う。
家事は毎日やらないといけないので、休みがほとんどない。
私は世の中にある仕事のなかで一番大変だと思う。

②設問のもの以外で自分にできる家事はなんだと思う?

靴磨き、玄関の拭き掃除、冷蔵庫内の整頓、本棚の整頓。

 

先生の感想

デジタルコンテンツの結果をPDF形式ファイルでダウンロードできる機能は、生徒の授業への参加や課題提出のハードルを下げてくれますし、教員としては少ない負担で評価項目(PDFの感想の内容や提出/未提出など)を増やせるメリットがあります。
私の場合は、提出されたPDFをMicrosoft Teamsというツールで管理しているので、紙の提出物より取り扱いがずっとラクで助かっています。
デジタルコンテンツは10分程度で手軽に授業に取り入れられるますし、生徒も飽きずに興味をもって取り組んでくれます。
興味があることは主体的な学びにつながりますし、主体的に学んだことは記憶に残りますよね。

 


時安先生、ありがとうございました!

 

『LIFEおとなガイドデジタル+』
定価:990円(本体900円)
コード番号:1047190
判型:AB判
ページ数:392ページ+口絵

 

『家庭科55デジタル+』
定価:721円(本体655円)
コード番号:1047170-01
判型:AB判
ページ数:208ページ

 

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