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高校家庭科の資料集『LIFE おとなガイド』が令和6年より『LIFE おとなガイドデジタル+」となり、パワーアップします。このシリーズ記事では、資料集の魅力や、力を込めたポイントなどを担当編集者が解説していきます。
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目次
冒頭の4コママンガは、家庭科の旧来のイメージを逆手にとって、ジェンダーギャップについて考えるきっかけとして構成しました。
改めて言うまでもなく男女平等の実現、ジェンダーギャップの解消は日本社会が抱える喫緊の課題です。最近でも東京オリンピック・パラリンピックの森会長の女性蔑視とも受け取れる発言が大炎上し、辞任に追い込まれた一件は記憶に新しいところです。
「男女平等」は今の高校生にとっても関心が高いテーマではないでしょうか。そして、このテーマにおいて家庭科教育が果たす役割はとても大きいと思います。筆者(男性49歳)が高校生だった1980年代後半は高校における男子の家庭科は必修科目ではありませんでした。中学校でも「技術」の授業はよく覚えていますが、家庭科の記憶がほぼありません。そこから思えば教育における男女平等はかなりの程度で進んでいると言えるでしょう。「なんで家事や育児を男子が勉強しなきゃいけないの?」という疑問を持つ高校生は少ないと思われます。しかしこの問題は、下のジェンダーギャップ指数の資料からも見て取れるように教育の分野では解消されつつあるものの、学校を卒業し社会に出て、働き、結婚し、家庭を持つことでシビアな現実に直面する課題です。
高校で学ぶ家庭科は生徒にとって、公教育としては最後の「ジェンダー教育」となることもあると思います。誤った認識を持ったまま社会に出てしまわないようぜひ、しっかりと学んでほしいと思いページを作りました。
具体的な資料として、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数の最新版を掲載しました。これは日本は世界で120位、アンゴラの次順という衝撃的な数値になっています。なぜ先進国であるはずの日本がこんなに低い順位なのか?ぜひ高校生に考えてほしいと思います。
コラム内の下の表にあるように教育、健康の分野ではかなり高いレベルで男女平等を実現しているにもかかわらず、それを大幅に上書きし、120位にまで引き下げる政治分野の圧倒的な不平等が際立っています。政治家や企業の管理職などリーダー的なポジションに女性が少ないため、政策や企業ガバナンスにおいて女性の社会進出を阻む旧態依然とした社会風潮や慣習が残っており、一向に改善が進まないという現象が起こっています。
まずはこの事実を踏まえて、女性労働力のM字カーブや、男女共同参画社会、男女の賃金格差などのデータを見てもらうと理解が進むのではないかと思います。
もうひとつ、男女平等について今日的なテーマも掲載しています。選択的夫婦別姓制度についての是非です。これは今後の日本の家族のあり方を決める重要な制度です。まだ法案として公式に提出されてはおらず、法務省のホームページによると「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し,国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら,司法の判断も踏まえ,更なる検討を進めることとされています」と記載されています。まさに今の高校生が選挙権を持つとき、もしくは結婚するときに、判断を問われるテーマではないかと考えます。
この「ミライフ 未来×LIFE」という一風変わった囲みは、資料編の要所に設けており、今の高校生がおとなになる頃を想定し、今考えるべきテーマを設定しています。過去の常識や慣習が大きく変わりつつある時代にあって、将来の社会の担い手である高校生に、読んで考えてほしい資料を掲載しています。ぜひ授業で活用してみてください。
一編集者としての個人的な印象ですが、検定ありきでかなり前倒しで編集せざるをえない教科書よりも、資料集の方が最新のテーマやデータを多く掲載することができたと実感しています。またページ数も多く、編集者の裁量で作れる自由度も高いので、とても充実した内容になったと自負しています。
見本誌は全国の高校にすでに配送されています。ぜひお手に取ってご覧になっていただけますと幸いです。
(一般の方は弊社ホームページにて情報はご覧いただけますが、見本誌は原則購入できません。ご了承ください)
AB判、オールカラー
392ページ + 口絵8ページ + 巻末ワークシート8ページ
付録:デジタルコンテンツ・献立作成・栄養計算アプリ、動画コンテンツ、教師用DVD
定価990円(税込み)
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