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「学習評価」は、成績つけ以外にも、様々な機能をもっています。本シリーズでは、「観点別学習状況の評価」に絞り、Part1では「評価の3観点」の概要を述べました。Part2では、具体的な方法を述べていきます。
中村祐治
元横浜国立大学教授。公立中学校4校で技術分野の教鞭を執る。その後、東京都の教育委員会や教育研究所及び区や市の指導主事、公立中学校2校と横浜国立大学附属中学校の校長を歴任。授業の直接的な指導の場を離れた現在も、授業目線・生徒目線の現場主義を大切にし、現場主義に役立つ問題解決型の授業づくりや学習評価などの研究課題に取り組んでいる。
目次
先生方が作成するペーパーテストは、主に教科書の内容から出題された観点「知識・技能」の割合が多いと感じます。少し工夫すれば、観点「知識・技能」だけでなく、観点「思考・判断・表現」や「主体的に学習にとり組む態度」も、ペーパーテストで学習評価することが出来るようになります。
観点「思考・判断・表現」のペーパーテストは、「思考・判断・表現」に必要な「知識・技能」の問題を設けるようにします。また、観点「主体的に学習に取り組む態度」のペーパーテストは、「知識・技能」や「思考・判断・表現」の学習活動の間接的な影響を受けて徐々に育っていくので、単独で設問するのでなく、まず、出題する技術の内容に関する大問を設け、次に、それと関連する観点「知識・技能」や「思考・判断・表現」及び「主体的に学習に取り組む態度」の小問を設けるようにします。
観点「知識・技能」のペーパーテストは、観点「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」を出題してから、大問で出題しなかった「知識・技能」の内容を別項目の問いとして出題するようにします。
観点「思考・判断・表現」のペーパーテストは、下図に示す「学習課題」を、習得した「知識・技能」を「活用」し、示されたあるいは自分で決めた「制約条件や状況」を「判断」し、「解決結果」を導き出す、問題を解決する学習活動の過程を意識して作成することが大切です。
制約条件や使用状況は、問題に示したり、判断を問題に設定したりします。観点「知識・技能」と「思考・判断・表現」のペーパーテストの違いについては、深掘(フカボリ)!<「知識・技能」と「思考・判断・表現」のペーパーテストの違い>に示してありますので、参考にして下さい。
観点「主体的に学習に取り組む態度」は、上手く工夫すればペーパーテストで学習評価することができます。
工夫例の一つ目は、ポイント①で示したように、実践する生活の場や実践する内容などを限定して、それに関する「知識・技能」の問題や「思考・判断・表現」の問題の範疇で「主体的に学習に取り組む態度」に関した問題を出題する方法です。
工夫例の二つ目は、「主体的に学習に取り組む態度」を単独で出題する場合は、学習成果を実践する生活の場や内容などを限定して出題します。生徒個人の広がりのある実践への思いである観点「主体的に学習に取り組む態度」である「実践的な態度」の時・誰・場・何・目的・方法(5W1H)などを限定することで、採点し易くなります。
工夫例の三つ目は、自由記述式にすることです。生徒の実践に対する自由な思いが表出して、本来の実践の姿が浮き彫りになります。記載内容の読み取りに時間がかかりますので、定期考査にはどちらかと言うと不向きですが、慣れると、単時間で記載内容が評価できるようになってきますので、定期考査での利用も可能になります。
授業のまとめの時間を使って、授業単位で学習した内容を小テストで確認する方法もあります。小テストは、授業で必ず押さえておきたい観点「知識・技能」が中心になります。必要があれば、「思考・判断・表現」する時の判断や、大切な条件などの観点「思考・判断・表現」を押さえるようにします。また、観点「主体的に学習に取り組む態度」も必要があれば、実際の生活の場で実践する場合の気持ちや思いなどを押さえるようにします。小テストは、授業で使うワークシートの最後の欄に設けるとよいでしょう。
ペーパーテストの問題例が参考資料4に、ペーパーテストの作成のポイントが参考資料5に、自由記述式のペーパーテストの問題例が参考資料6に示してありますので、自作する時の参考にして下さい。
「知識・技能」のペーパーテストの問題
「思考・判断・表現」のペーパーテストの問題
「思考・判断・表現」は、学習し習得した「知識・技能」を活用し、問題に示された状況判断や条件判断を考慮しながら、学習課題に相当する「問題」の最適解を回答する。
*1:『習得し記憶している「知識・技能」』は、ペーパーテストで出題する場合と、問題上に示す場合とがある。
*2:『出題で示す状況や制約条件など』は、問題の一部で「思考・判断・表現」させる場合がある。
技術分野は、実習での実践的・体験的活動を理論化させることが大切で、その役割を担うのがワークシートになります。
学習活動で見えない学力
観点「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」は、実践的・体験的活動な学習活動での段階では、「見えない」学力です。「思考・判断・表現」している学習活動の段階では、「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に取り組む態度」は、見えていません。
「ふり返り」で「見える化」
そこで、ワークシートに「ふり返り」の機能を組み込むことで、学習活動では見えない学力である観点「思考・判断・表現」や、観点「主体的に学習に取り組む態度」が「見える化」できるようなります。
具体的には、下の図のように、機能①や②の「ふり返り」をワークシートに組み込むことで、身に付いた見えない学力である機能②の観点「思考力・判断力・表現力」や機能③の観点「主体的に学習に取り組む態度」を「見える化」することができ、「ふり返り」機能を組み込んだワークシートの記載内容から身に付いた学力が読み取れるようになります。
機能①の学習活動での毎時間の発散的内容を記憶に留めるためには、毎時間の学習内容やふり返りするワークシート(参考資料2)が必要です。学習活動での何気ない学習や作業で感じたことや思ったことを記録に留め、機能②や③のふり返りの段階で毎時間の記載内容を串刺しにすることで、毎授業ごとでは、気づかなかった大切な学びが見えてきます。
身に付いた学力を「見える化」するワークシート
また、ふり返りの機能で「見える化」するには、ワークシートの機能①に、設計・育成計画と出来上がった作品とが比較できるワークシートを工夫すると良いでしょう。ワークシートは、『必読!「作品」は、いつ学習評価するか?』で示した参考資料1のワークシート例を参照して下さい。
また、題材のまとめ段階で機能①~③を入れたワークシートは、「おさえよう! ペーパーテスト4つのポイント」で述べたように、「知識・技能」→「思考・判断・表現」→「主体的に学習に取り組む態度(「実践的な態度」)」の流れで作成するようにします。
ワークシートの記載内容を読み取り「学習評価」
ワークシートや自由記述式のペーパーテストなどの記載内容から、観点「思考・判断・表現」の到達状況を読み取り、A・B・Cで判定する基準の例を次の表に示してみます。この表を参考にして授業での記載内容からの読み取り基準を作成してみて下さい。
<参考図書:授業づくりKARUわざ P48-51、授業づくりSUGOわざ P48-49>
なお、ワークシートや自由記述式のペーパーテストなどの記載内容から、観点「主体的に学習に取り組む態度」の到達状況を読み取り、A・B・Cで判定する基準の例は、この後の『観点「主体的に学習にとり組む態度」を、上手に学習評価するには?』に示してあります。
ワークシートと言っても、いろいろな種類があり、Part1の『必読!「作品」は、いつ学習評価するか?』でワークシート例を示してありますので、ここでは、題材のまとめ段階で、題材の学習全体で学び取った学力を確かめるため、使用するワークシート(参考資料7)について、示してみます。
ワークシートの記載内容からの観点「思考・判断・表現」の読み取り基準の少し詳しい例を下に示してみます。この例を参考にして、あなたの学校のあなたの授業での読み取り基準を作成してはいかがでしょうか?
何回か試行錯誤して読み取ることで、記載内容から客観的に読み取ることが出来るようになってきます。
★の数は、技術分野の全学年を視野にした場合の読み取り基準で、これを目安に各学年の観点別評価のA・B・Cを決めれば良いと思います。
観点「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価を、授業態度や忘れ物の有無で学習評価していませんか? 観点「主体的に学習に取り組む態度」は、学習活動で見えない学力ゆえ、どう学習評価するか、苦労されていると思います。そこで、どう学習評価していくかを示していきます。
観点「主体的に学習に取り組む態度」とは?
観点「主体的に学習に取り組む態度」を上手に学習評価するには、その観点に対応する技術分野の目標(3)の「よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて,生活を工夫し創造しようとする実践的な態度を養う。」が、学習活動でどう育っていくかを知る必要があります。
「実践的な態度」は、下の図で示すように、技術への関心の喚起→「知識・技能」の習得の学習活動→「思考・判断・表現」の問題解決する学習活動→「学習した技術を生活や社会でどう活用していくか」の学習活動からの、一連の間接的影響を受けて生徒の内面で風船が膨らむように徐々に育っていきます。
観点「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価は?
上手に学習評価するには、題材学習の終末時点で、学習指導で育っていく上図の順序性を踏まえて作成した、ワークシート(参考資料1)などで「今まで学んだことを生活でどう生かしていこうと思いますか。」などの発問で生徒が取るであろう「実践的な態度」を「見える化」して、その記載内容から読み取ることを基本とします。
「実践的な態度」は、技術分野の教育目標の学習内容(1)→(2)→(3)の順序に対応した一連の学習指導で育っていくことを踏まえた、ペーパーテストで、学習評価することができます。ペーパーテストの例は、参考資料4の最後の設問例を参照して下さい。
ワークシートの記載内容を読み取り「学習評価」
ワークシートや自由記述式のペーパーテストなどの記載内容から、観点「主体的に学習に取り組む態度」の達成度を読み取り、A・B・Cで判定する例を次の表に示してみます。この表を参考にしてあなたの授業での読み取りの例を作成してみてはいかがでしょうか。
ワークシートなどの記載内容から、学校独自の観点別評価の読み取る目安を作成する際に、考慮する諸条件を示した上の表を参考にして、あなたの授業での、ワークシートの記載内容からの読み取り基準を使ってみてはいかがでしょうか。
<参考図書:授業づくりKIMEわざP48-49、授業づくりKARUわざP52-55>
「実践的な態度」以外の「学習評価」
観点「主体的に学習に取り組む態度」は、「実践的な態度」の学習指導の成果だけでなく、「粘り強さ(知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面)」及び「自らの学習の調整(粘り強い取り組みの中で自らの学習を調整しようとする側面)」にも目を向けて学習評価するよう、『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料-中学校 技術・家庭』のP30に示されています。この学習評価方法は、以前の評価の観点である「関心・意欲・態度」と同じ考え方で学習評価できます。詳しくは、『これならできる 授業が変わる評価の実際 「関心・意欲・態度」を育てる授業』(開隆堂 2006.10.16)を参照して下さい。
観点「主体的に学習に取り組む態度」を学習評価する時期は?
更に、観点「主体的に学習に取り組む態度」は、長期スパンの題材単位で育つ学力であるため、各学校で学期単位するいわゆる通知表での学習評価の区切りがうまく一致できない時があります。その時は、学習指導要領の内容(1)、(2)、(3)毎の評価規準を定めておく必要があります。『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料-中学校 技術・家庭』(令和2年3月 文部科学省 国立教育政策研究所)を参考にして、自校の評価規準を作成してみて下さい。
ワークシートの記載内容からの、観点「主体的に学習に取り組む態度」の読み取り基準の少し詳しい例を下に示してみます。この例を参考にして、あなたの学校のあなたの授業での読み取り基準を作成してはいかがでしょうか?
何回か試行錯誤して読み取ることで、記載内容から客観的に読み取ることが出来るようになってきます。
★の数は、技術分野の全学年を視野にした場合の読み取り基準で、これを目安に各学年の観点別評価のA・B・Cを決めれば良いと思います。
Part1.はこちら
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